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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

トヨタ、次世代事業を探しオープンイノベーション開始

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トヨタ自動車は7日、少子高齢化や過疎化など国内の社会課題に対応する次世代に向けたオープンイノベーションプログラム「TOYOTA NEXT」を発表した。人を中心にしたモビリティーサービスの共同開発を目的に、事業規模に関わらず広く企業や研究機関、個人などからアイデアやテクノロジーを募集する。記者発表で同社の村上秀一・常務役員は、「創業以来の変動期を迎えている。今チャレンジしなければ明るい未来はない」と話し、イノベーションなくしては生き残れない時代だと強調した。

村上秀一常務役員(中央)、レイ・イナモト氏(右)、 佐々木智也・執行役員SVP(左)

TOYOTA NEXTで募集するテーマは、「すべての人の移動の不安を払拭する安全・安心サービス」「快適で楽しい移動を提供する車の利用促進」「トヨタの保有するデータを活用したONE to ONEサービス」など5つだ。募集期間は2016年12月7日から2017年2月20日までで、選考を重ねて選定企業などが決まるのは7月下旬を予定している。

同社は、創業から80年間で蓄積してきた製品やサービス、ビッグデータ、ディーラーネットワークなどのアセットを提供するという。高齢者などのモビリティー弱者が増え、シェアリングエコノミーが広がるなか、車の所有を前提とせず、車で移動する喜びや車による社会課題の解決を行うプログラムを目指す。

選考とサービス開発のパートナーには、アウディやグーグル、ナイキの広告を手掛け世界的に名の知られるクリエイティブ・ディレクターのレイ・イナモト(稲本零)氏。そして、Twitterなど海外サービスのローカライズ化や投資事業、ジョイントベンチャー事業で実績のあるデジタルガレージ(東京・渋谷)の佐々木智也・執行役員SVPが選ばれた。

なぜオープンイノベーションなのか

イナモト氏は、トヨタ自動車のイノベーションコンサルティングも務めている。オープンイノベーションについて、「20世紀は企業のなかだけでイノベーションが行われてきた。しかし21世紀に入り、イノベーションという言葉は民主化された。企業がなくても、インターネットやモバイルがあれば、アイデアがある個人がイノベーションを起こせる時代だ。小さい会社や個人など色々な所からアイデアを発掘し、手を組むことで新しいことを開発していくことがオープンイノベーションだ。スピード感が早くなっている時代に、企業や経営者がスピート感に遅れず、新たな世代をつくり出す対応策がオープンイノベーションだ」と説明した。

村上常務役員は、「SNSやスマホの登場により、生活が変わってきている。そういう大きな時代の変化のなかでもトヨタが選ばれるブランドになるには、イノベーションが必要だ。2016年1月にデジタルマーケティング部を創設した。未来志向で世の中の変化に対応していかないといけない。スピード感とイノベーションをキーワードに事業を進めていく」と語る。

トヨタ自動車デジタルマーケディング部の浦出高史・部長は、「販売実績という商売の観点ではなく、車で移動する喜びや、車を使った課題解決策などを追求したアイデアを募集している。トヨタは持続的成長を目指している会社だ。モノではなく、人を中心に考える思想が根底になければ、持続的成長の原動力になりえない。自動車業界の常識を打ち破る気概を持った方々と未来をつくる仕事を一緒にしたい」と話した。

TOYOTA NEXT にかける自社の未来

グローバル企業でありながら、TOYOTA NEXTがターゲットにしているのは日本市場だ。記者発表では、「オープンイノベーションなのになぜグローバルじゃないのか。なぜ日本語での資料提出が求められるのか」という質問も飛んだ。

村上常務役員は、「グローバルでの実施も将来的には視野に入れているが、日本が抱える構造的社会問題は他の先進国にもいずれ起こることだ。まず日本からだ」と説明した。

日本市場へのこだわりは、2015年に立ち上げた「J-リボーン計画」から始まっている。日本のモノづくりを持続的に発展させるために、国内生産台数300万台のうち150万台を国内販売すると宣言している。

同役員は、「自動車産業が長く日本経済を支えてきたという自負を持ち、今後もグローバルであるために、ローカルに目を向け、日本オリジナルの視点を持って取り組む」とTOYOT NEXTにかける自社の未来について慎重に語った。

国内市場が縮小するなかで、トヨタが日本経済を引っ張り続けるブランドであるためには、オープンイノベーションが避けられない。

イナモト氏は、「機械やAIは人間のように『アイデアと情熱』を持つことができない。アイデアを基盤に、情熱で引っ張っていくのが『TOYOTA NEXT』だ。企業が短期利益を追うのは当然のことだが、オープンイノベーションには長期的視点が必要だ。長い目で見続けられるかが重要になる」とオープンイノベーションの課題について言及した。

小松 遥香

オルタナ編集部。アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。趣味は、大相撲観戦と美味しいものを食べること。