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ラッシュ、動物実験代替法開発の日本人研究者を表彰

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若手研究者部門アジア賞を受賞した大阪市立大学大学院医学研究科の辰巳久美子氏

英化粧品ブランドのラッシュは、動物実験の廃止を促進するためにラッシュプライズを開催している。同コンテストは、動物実験代替法の研究などを行う個人や団体に賞金総額35万ポンド(約5000万円)を授与しており、同分野では世界でも最大規模のコンテストだ。新設された若手研究者部門アジア賞に11月18日、大阪市立大学大学院医学研究科の辰巳久美子氏が選ばれた。

化粧品のための動物実験の廃止は、ラッシュの創設時からの経営理念だ。ラッシュプライズは2012年、同社と英消費者団体エシカルコンシューマー(マンチェスター)が共同で設立。エシカルコンシューマーは、1989年にマンチェスター大学の学生3人が同名の雑誌を創刊して以来、消費者倫理の確立をけん引してきた組織として知られている。

アジアで広がる動物実験の代替法研究

今年のラッシュプライズには世界55カ国から応募があり、11カ国から20の研究や活動に賞が贈られた。若手研究者部門アジアには、日本の辰巳氏のほかに中国、韓国の研究者が選ばれ、それぞれに1万ポンド(約140万円)が授与された。

ラッシュによると、アジアでも動物を使わない研究技術への関心が近年高まっているという。その背景には、動物実験の非人道性に加え、動物では人への安全性を十分に評価できないという科学的根拠の不足が認識され始めていることがある。

辰巳氏は、人間の幹細胞と組織を使った化学物質の安全性評価を測定する方法を研究している。今回、動物実験の代替法になる「薬物代謝および毒性評価におけるヒト肝細胞スフェロイド培養法の有用性」についての研究功績が認められて同部門賞を受賞した。

受賞に際し、「今後も研究課題を解決しながら、ヒトにおける肝毒性をより予測性高く評価できるような評価方法の構築を目指す」と同氏は話した。

代替法開発に立ちはだかる日本の規制

辰巳氏によると、肝臓は化学物質に高い濃度で曝露され代謝を行うために化学物質のリスク評価に適しているという。しかし、幹細胞を用いた研究を日本で行うのは容易ではない。

臓器移植法第6条により、臓器移植に使われなかった臓器を使用することはできない。日本の研究者は、欧米で移植不適合となった肝臓の正常幹細胞を使い研究を行っているが、新鮮な細胞や組織を使えないなどの問題がある。

2013年にEUで化粧品の動物実験が禁止されて以来、世界でも同様の動きは広がっている。日本の化粧品会社も2013年を境に動物実験を廃止しはじめた。しかし日本の規制では、特定の化粧品を新しくつくる場合や新規成分を使う場合は動物実験が必要とされるため、動物実験の禁止にはいたっていない。

ラッシュジャパンの小山大作・広報担当は、「ラッシュプライズの受賞で、研究者は代替法の開発をさらに進めることができる。日本ではまだラッシュプライズの認知度が高くないが、ひとりでも多くの研究者に知っていただき、研究者の方々の今後の可能性を少しでも広げたい」と語った。

小松 遥香

オルタナ編集部。アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。趣味は、大相撲観戦と美味しいものを食べること。