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企業と行政が共に課題に取り組む時代――阿部守一長野県知事 :「未来まちづくりフォーラム」開催直前インタビュー

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「未来まちづくりフォーラム」が3月7日、サステナブル・ブランド国際会議2019東京が行われるヒルトン東京お台場で同時開催される。同フォーラムは、「協創力」で日本創生モデルをつくることをテーマに、自治体や企業、NPOなどが出会う場を設け、持続可能なまちづくりのためのイノベーション創出を目指すもの。基調講演に登壇するSDGs未来都市・長野県の阿部守一知事に、笹谷秀光実行委員長が話を聞いた。

笹谷:今回、未来まちづくりフォーラムにご登壇いただけることになりまして、ありがとうございます。

阿倍:お声がけいただき、ありがとうございます。

笹谷:未来まちづくりフォーラムは「未来のまちをどうつくるか」という思いを持つ自治体や企業、関係者が連携し、「協創力」で新たな価値をつくる力を磨く実践の場です。

今回、どのような思いで知事として登壇されるかお聞かせください。

阿倍:私は長らく行政の立場で、公務員として仕事をしてきました。まさにSDGsで挙げられている課題がそうですが、日本のいたるところに社会的課題があり、その多くは行政だけの力では解決できないということを強く感じています。

長野県では「県民参加と協働」を県政推進の基本的な考え方にしています。

私は色々なところで県民のみなさんとお話をするときに、「あちら側、こちら側と分けるのはやめましょう」と必ず呼びかけています。私たちは要求する人。私たちは要求される人。そういった一方通行で片務的な関係性は、これからの社会を良くしていかないと思います。

知事としてできることもあれば、私だけではできないこともあります。むしろ、できないことの方が多いかもしれません。例えば、孤立しているお年寄りをサポートするためにこんな政策をやろうと私がいくらいっても、近所や地域の支えが機能しなければ絵に描いた餅です。「私にできることがあれば、みなさんにもできることがありますよね。ぜひ一緒にやりましょう」と常に話しています。

企業と行政の関係も同じだと思います。行政側も「企業を支援します」といいがちです。しかし、これからは協働やコラボレーションという形で、それぞれの得意な力を出し合いながら解決していく――。一方通行の支援ではなく、お互いの強みを生かした協働、これは、あらゆる場面で求められていると思っています。

私はこのフォーラムで、行政の視点で問題意識をお伝えすることになると思いますが、企業のみなさまにもぜひ一緒に考えていただきたいです。

今、世界中がつながる時代です。世界規模の最先端の知見で、長野県のローカルな課題に対処していくというコラボレーションが生まれる機会になればと、大いに期待しています。

笹谷:まさに、知事がおっしゃったキーワードを実践する場として、未来まちづくりフォーラムを設計していきたいと思っています。

長野県では、2013年度に策定された総合5カ年計画「しあわせ信州創造プラン」が着実に浸透し、2018年度から「しあわせ信州創造プラン2.0」を展開しています。「しあわせ信州」という分かりやすい言葉を使い、双方向のやり取りを行うことを大事にされていると感じます。

長野県は昨年6月、SDGs達成に向けて優れた取り組みを掲げる「SDGs未来都市」の一つに選ばれました。SDGsという世界の共通言語が生まれる以前から、長野県ではSDGsが掲げる課題と共通する課題の解決に取り組んでこられていたと思います。SDGs未来都市に選ばれたのはそういう過程があるからこそだと思いますが、選ばれたことにどういう思いをお持ちでしょうか。

阿倍:率直に嬉しいです。同時に、未来都市として取り組みをリードしていかなければという思いがあります。「しあわせ信州創造プラン2.0」では、それぞれの重点政策とSDGsの17目標を関連付けて策定しました。自治体の計画としては、先進的な取り組みではないかと思います。

知事の仕事をしていて常に感じているのは、今やあらゆる分野が世界とのつながりを抜きにしては語れないということです。

例えば、長野県は製造業が盛んな地です。航空宇宙産業や医療機器産業は、常に世界の企業と競争しています。一方で、農業や林業という産業は今まで海外を意識してきませんでした。しかし人口減少社会の中で、国内需要が確実に減少することを考えれば、やはり海外市場もしっかり念頭に置いていかなければなりません。インバウンド観光の振興も同じです。

また、今年6月15―16日には、軽井沢でG20 の「持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合」が開催されます。長野県はこれまで自然と共生し、自然を守りながら、産業を発展させてきました。地球温暖化防止に向けた取り組みも、全国に誇れる取り組みをしてきました。まさに、こうした取り組みは世界の国や地域と連帯しながら進めていくことで大きな効果が表れるもので、長野県だけが頑張っても効果は限定的です。

そう考えれば、世界規模の視野で課題を考えるSDGsをしっかり念頭に置きながら、政策を進めていくことが重要です。総合計画はそうしたことを形にしたものです。

SDGsに対する県内全体の意識や取り組みは、まだまだこれからという部分もあります。今後、長野県としては、SDGsというキーワードをさまざまな関係者と広く共有し、協力しあって、地域課題の解決を図ると同時に国際社会における責任も果たしていきたいと考えています。

笹谷:おっしゃる通りです。今回のフォーラムの3つのキーワードは、「日本の良いものを『クールジャパン』として掘り起こす」「『インバウンド』なども含めて国際的な視点をもって対処する」「『レガシー』として未来に残るような遺産づくり、承継できるようなものをつくっていく」です。

日本は2019年にG20、2020年にSDGs五輪、2025年にSDGs万博を控えています。日本の良さを発揮する絶好のチャンスだと思います。

当日は、持続可能なブランドをつくろうという意識の方が沢山集まります。知事には、オープニングトークとシンポジウムの両方にご登壇いただきます。今日お話しいただいたことも含め、シンポジウムではさらに内容を深めたお話をいただくことになっておりますので、心よりお待ちしております。ありがとうございました。

未来まちづくりフォーラムは3月7日10時からヒルトン東京お台場で開催いたします。
https://www.sustainablebrands.jp/event/sbt2019/miramachi_02.html

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