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人気カフェにも脱プラスチックの動き 合同勉強会を開催

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サステナブル・ブランド ジャパン編集局

東京で人気を集めるカフェや焙煎所の経営者、バリスタなど80人が参加する勉強会「コーヒーとプラスチックのこれから」が9月5日、東京・渋谷で開催された。「コーヒーを焙煎・抽出する者として、環境問題に無関係ではいられない。美味しいコーヒーをこれから先も長く飲めるようにするために、社会に対して責任ある行動をとれるロースター、バリスタを増やしたい」と語る、主催者の小島賢治・ジャパンロースターコンペティション(JRC)代表に話を聞いた。(サステナブル・ブランド ジャパン=橘 亜咲)

地球温暖化がコーヒー業界に与える危機感

小島さんはノルウェー・オスロ発のカフェ「Fuglen Tokyo(フグレン・トウキョウ)」の代表を務める。代々木公園近くの同店は、若者や外国人が集う人気店だ。

勉強会の開催について、「あまりにも多くのお客さまがテイクアウト用カップに入ったコーヒーを店内で飲みきってしまうのを見て、購買習慣の見直しが必要だと思うようになった。プラスチック問題は最近メディアで取り上げられるようになったが、一般の消費者の認識は高くない。供給者でもある私たちがまず知識をつけ、変わっていかなければ」と話す。

「最初から環境問題への関心が高かったわけじゃない」という小島さん。今回の勉強会を開催するきっかけになったのは、毎年参加する北欧で開催されるロースター向けの競技会兼勉強会「ノルディックロースターコンペティション(NRC)」だ。専門家や学者なども集まり、さまざまなテーマでコーヒーについて学ぶという同イベントでは、社会的な問題についても話が及ぶという。

「昨年は地球温暖化について話し合われた。生産地でどのような問題が起きているのかが明かされ、『このままではコーヒーが飲めなくなるのではないか』という問いが投げかけられた」と小島さんは振り返る。実際、アフリカ大陸や南米などのコーヒー豆の生産地では地球温暖化の影響によって異常気象や干ばつが深刻化しており、今後、コーヒーの質や価格に大きな影響を及ぼすことが懸念されている。

「これはとても深刻な問題。日本でも環境問題について考える機会をつくらなければならないと考えた。今回がその第1回目だ」と説明する。

プラスチックの使用量を減らすことが解決の近道に

5日夕方、渋谷・100BANCH(ヒャクバンチ)で開催された無料の勉強会には定員を超える80人が集まった。京都など首都圏以外からも参加があった。近年のコーヒーブームを牽引する有名店が一堂に会した様子に、プラスチック問題への関心の高さがうかがえた。参加者の中には、すでに数か月前からプラスチック製ストローの提供を極力控えている、代替のスチール製ストローを使用しているという店もあった。

勉強会には、プラスチックごみ問題の専門家として国際環境NGOグリーンピースの石原謙治さんらが登壇。1950年代から生産されたプラスチックの量が58億トンに上り、毎分トラック1台分のプラスチックごみが海洋に流出している現状や、微小なマイクロプラスチックがどのように生まれ、海洋環境に影響を及ぼすのかなどが説明された。東京農工大学の調査によると、東京湾で検体として獲ったカタクチイワシの約8割にマイクロプラスチックが検出されたという。

石原さんは、「世界でこれまで生産されたプラスチックのうちリサイクルされたのはわずか9%といわれる。3R(リデュース・リユース・リサイクル)のうちリデュースとリユースに目を向けなければならない。蛇口を閉めてゴミを出さないようにすることが大事。使い捨ての文化を見直す時だ」と語った。

コーヒー店がプラスチック問題のチェンジメーカーに

東京・西麻布のフランス料理の名店「レフェルヴェソンス」の生江史伸シェフは6月、六本木ヒルズにベーカリー「ブリコラージュ ブレッド アンド カンパニー」をオープンした。同ベーカリーでは、冷たいドリンク用のプラスチック容器に植物由来のものを採用し、プラスチック製の調理器具も使用しない方針を掲げる。しかし植物由来のストローを国内で見つけるのは簡単ではないという。現在、パンづくりに使う麦を利用してストローをつくる試験を行うなど解決策を探っているところだ。

日本を代表する料理人の一人として知られる生江シェフは、「消費者よりもコーヒーを提供する私たちの方がこの問題に対する影響力は大きい。一日に20人、100人、300人と接する私たちがこの問題に関して消費者の同意をとれていけたら、社会を変えるチェンジメーカーになれるのではないか」と語りかけた。

参加者らは、「『プラスチックはダメだから』と否定するコミュニケーションではなく、ポジティブな方法で消費者に納得してもらいプラスチックの利用を減らしていくにはどうすればいいのか」「コストの問題をどうクリアすればいいのか」「体の不自由な人や子どもなどストローが必要な人もいる」など積極的に意見を交わした。

日本からアジアへ活動の拡大を目指す

小島さんは、「本当に問題を解決したいのなら、時間やお金とかではなく、誰かが動かないといけない。日本のロースターの動きはアジアのロースターにも影響力を及ぼす。私たちが動くことで、アジアのロースターも動き、いずれはアジアの消費者の認識を少し変えることにもつながっていくことを期待している。その大きな目標を実現するために、今後も活動していく」と語った。

イベントを共同開催し、原宿・キャットストリートの掃除や表参道の落ち葉をつかってコンポストをつくる活動などをする中村元気さんは、「代替案はなにか、どうすればいいのかを考えることはクリエイティブで大事な作業だ。美味しさを追求する、味にこだわるということの中に、どんな容器で飲むのかということも含まれるのではないだろうか」と話した。

質の高いコーヒーを提供し、小規模でありながら、時代や若者に影響力を持つブランド力のあるカフェやロースターが集まった実績は大きく、今後の動きが期待される。小島さんは「これから実際に行動が生まれて初めて、今回の会が意味をもつ」と話す。

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