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  • 公開日:2019.01.30
  • 最終更新日: 2025.03.16
世界同時「脱プラ」衝撃⑦回収進むコンタクトレンズ
  • クローディアー真理

こうした使用済みレンズや包装容器がリサイクルの対象
© Johnson & Johnson

ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)はこのほど、英国でソフトコンタクトレンズの無料回収やリサイクルを開始すると発表した。1000軒の眼鏡店に専用の回収箱を置いた。米アリゾナ大学が、使用済みコンタクトレンズが海洋汚染の一因になっている可能性を指摘するなど、海洋プラスチックごみとコンタクトレンズの関係性が注目されている。米ボシュロムも米国、カナダ、オーストラリアなどで同様の回収を進めている。(クローディアー真理)

「アキュビュー・コンタクトレンズ・リサイクル・プログラム」は、J&Jが英国で開始したリサイクル・プログラムだ。これを通せば、レンズ使用者は従来方法より簡単に、無料でリサイクルを行うことができる。

英国国内に約650店舗あるブーツ・オプティシャンズが、J&Jのアキュビュー・コンタクトレンズ・リサイクル・プログラムに協力
© Johnson & Johnson

専用回収箱を配置した、大手ドラッグストアチェーン、ブーツ(本社・英ノッティンガム)傘下のブーツ・オプティシャンズを含む、計1000の眼鏡店に使用済みレンズと包装容器を持ち込むだけ。ほかに無料宅配サービスで回収を依頼することもできる。コンタクトレンズのメーカーは問わない。

リサイクルを請け負っているのは、テラサイクル(本社・米ニュージャージー州トレントン)だ。リサイクルが難しいとされるもののリサイクルを実現する企業として知られている。

レンズなどはリサイクル後、新たなプラスチック素材や屋外用家具になる。テラサイクルでは独自に「ゼロ・ウェイスト・ボックス」を販売しており、さまざまな製品の回収を行ってきた。コンタクトレンズメーカーと協働することで、さらに回収率が上がることが見込まれる。

テラサイクルと組み、米ボシュロムも2016年から米国とカナダで、2017年からオーストラリアでJ&J同様の取り組みを行っている。2年間で米国では3万1000ポンド(約14トン)、カナダでは1万4000ポンド(約6トン)のレンズを回収した。

昨年には、コンタクトレンズが海洋汚染の一因になっている可能性があることをアリゾナ大学の研究チームが発表。消費者の使用済みレンズの処理の仕方が問題であることが指摘された。

使用済みコンタクトレンズをトイレや洗面台で水に流して廃棄すると、下水道などを通過した際にこのように粉砕される
© Arizona State University

アリゾナ大によれば、米国では4500万人のコンタクトレンズ使用者がいるといわれ、そのうちの15~20%が、英国では370万人のコンタクトレンズ使用者がいるといわれる中、J&Jの調査(2018年)では対象者1000人の約20%が、使用済みレンズをトイレや洗面台で流し、廃棄しているという。レンズは下水処理施設などを通過する際に粉砕され、マイクロビーズとなり海洋に放出されてしまう。

J&Jの調査では、77%のコンタクトレンズ使用者が可能ならレンズのリサイクルをしたいと考えていることがわかっている。

サンドラ・ラシェ J&Jメディカル社ビジョンケア ヨーロッパ・中東・アフリカ地区部長は、「消費者のごみ削減への意欲は当社の方針と共通するもの。アキュビュー・コンタクトレンズ・リサイクル・プログラムはサステナビリティへの取り組みのステップの1つだ」と述べ、J&Jが環境保護のために行う企業努力の一環であることを強調した。

コンタクトレンズメーカーはレンズと包装容器のリサイクル・プログラムだけでなく、各社とも環境負荷抑制努力を行っている。
J&Jはポリプロピレンの使用を減らすために、レンズの包装デザインを一新した。ボシュロムは発送用の包装に生分解可能な素材を取り入れたり、よりリサイクルしやすい透明なPETを保存液の容器に採用したりしている。

クーパービジョン(本社・米カリフォルニア州プレザントン)は2016年にエネルギー効率の優れた生産工場をコスタリカに設立。工場で使用する電力の90%を自然エネルギーで賄う。製造過程で出る廃棄物の90%、プラスチック部品の100%をリサイクルしている。

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written by

クローディアー真理

ニュージーランド在住ジャーナリスト。環境、ソーシャル・ビジネス/イノベーションや起業を含めたビジネス、教育、テクノロジー、ボランティア、先住民マオリ、LGBTなどが得意かつ主な執筆分野。日本では約8年間にわたり、編集者として多くの海外取材をこなす。1998年にニュージーランドに移住。以後、地元日本語誌2誌の編集・制作などの職務を経て、現在に至る。Global Press所属。

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