SUSTAINABLE BRANDS JAPAN のサイトです。ページの先頭です。

SUSTAINABLE BRANDS JAPAN のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

第2次九電ショック「出力抑制」は自然エネ普及に逆行

世界では風力、太陽光など変動型自然エネルギーが最も安価なエネルギーになりつつある
(写真:Solar power generation by minoru karamatsu)

九州電力は10月13、14日、太陽光発電の事業者から電気の受け入れを一時的に止める無保証の「出力抑制」を離島以外で初めて行った。週末で需要が減るにもかかわらず、太陽光発電が増えて電力の需給バランスが崩れ、停電が起きるのを防ぐためと九電は説明している。しかし、電力事情に詳しい専門家は原子力などの大規模発電所を優先するルールは北海道地震の例のように逆に停電を引き起こす要因になり、事業的にも自然エネルギー拡大の障壁になると警告を発する。(箕輪弥生)

出力抑制は太陽光発電への融資に影響も

九州は日射量が豊富で遊休地も多いことから従来から太陽光発電の接続申し込みが多く、九電は2014年に管内の需要を上回るとして新規接続の契約保留を発表した。それが立て続けに北海道、東北、四国電力にも広がったことで「九電ショック」と呼ばれている。

今回は、すでに電力系統に接続されている太陽光発電が、離島を除いて初めて一時的に稼働停止されたことで、2014年のショックに次ぐ大きな問題を電力業界に投げかけている。

九電は13日に43万キロワット分、14日に54万キロワット分を抑制し、天候にもよるが10月下旬の週末にも出力抑制の可能性があるとしている。

問題は、自然エネ由来の電力が無駄になったことだけでなく、2017年4月に「再生可能エネルギー特別措置法」の一部が改正され、出力抑制を受けた発電会社は補償が受けられないことだ。

「送電網の仕組みを変えないと自然エネの主力電源化は難しい」と話すイージーパワー竹村英明代表

市民電力連絡会の会長を務めるかたわら、発電事業も行っているイージーパワー(東京・新宿)の竹村英明代表は、「発電分の収益損もあるが、今後も春秋の週末のたびに実施されることになると、金融機関が太陽光発電への融資を控える要因になりうる」と憂慮する。

もちろん、九電は真っ先に太陽光発電の出力を抑制しているわけではなく、国が定めた「優先給電ルール」に基づいて行っている。これは、余剰電力が発生した場合は、まず余った電気で水をくみ上げ、電力需要の多い時間帯に山から落として電気を作る揚水発電などを使って吸収する。次に火力発電を絞り、電力会社間をつなぐ連系線を使って他地域に電力を送る。それでも余ってしまう場合に、太陽光や風力の自然エネを抑制するというものだ。しかし、この国の「優先給電ルール」にも多くの問題点が隠されていると専門家は指摘する。

課題山積の「優先給電ルール」

国の「優先給電ルール」では、原子力発電の抑制については言及がなく、実質的に原発優先の給電ルールとなっている。竹村代表は「9月の北海道電力管内でブラックアウトが起きたように、原発などの大規模発電所が地震などで止まると送電網に負荷がかかり大規模停電を引き起こすリスクにつながる」と警告する。

「日本はエネルギー政策のパラダイムシフトが必要」と話すisep飯田哲也所長

NPO法人環境エネルギー政策研究所(isep)(東京・新宿)の飯田哲也所長も同様にそのリスクを指摘する。「原発はゆるやかに出力調整をすることも可能であり、純国産で燃料代がかからない太陽光を先に抑制するのは環境、経済的な視点からも大きく矛盾する」と話す。

さらに両者は連系線を使った電力融通もすべてを使っていないと指摘する。その背景のひとつとして飯田所長は「278万KWの連系線の余力のうち100万KWは電源開発(東京・中央)という1企業の枠として使われていて公共性に欠ける」ことを指摘する。

九州地域で電力小売りを行う、みやまスマートエネルギー(福岡・みやま市)の白岩紀人執行役員も、「連系線については、九州は関西電力と中部電力までも消費地として活用できるはずなので、それらの電力会社の発電所の調整まで試みるなど、これ以上打つ手がないところまで検討してほしい」と訴える。

本気で自然エネの主力電源化を

今年の5月3日、九電管内では太陽光による発電量が8割を超えた時があったが、その際は稼働する原発が2基で、さまざまな施策を組み合わせて出力抑制には至らなかった。しかし、現在は4基が稼働している。今後も原発が動き自然エネが拡大すると他の地域でも電力供給が需要を上回るケースが起こることが予想される。

飯田哲也所長は「デンマークなどは余った風力の電力をドイツやノルウェーなど他国に売るだけでなく、熱に変えて地域暖房に使ったり、水素やメタンガスに変えてバスなど交通に使ったりと、無駄にせず統合的な使い方をしている」と説明する。デンマークには原発はなく、風力とバイオマスを中心とした分散型の発電所が網の目のようなネットワークとして張り巡らされている。それに対して日本はいまだ大規模発電所をベースにした送電網に頼り、自然エネの普及に制限をかけている。

政府が今年改定した「エネルギー基本計画」では自然エネの主力電源化をめざす方針を打ち出した。しかし、現在の「優先給電ルール」に見られるような矛盾の多い計画は、自然エネの主力電源化に逆行すると言わざるをえない。

「世界は電力の中にどれだけ自然エネを入れられるかを競う時代になっている。日本は根本的にエネルギー政策を変えないと経済面、安全保障面でも大きく立ち遅れ、問題が拡大する」と飯田所長は釘を刺した。

  • Twitter
  • Facebook
箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・マーケティングプランナー・NPO法人『そらべあ基金』理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に『エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123』『環境生活のススメ』(飛鳥新社)『LOHASで行こう!』(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。

http://gogreen.petit.cc/