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マリエが語るミレニアル世代の「かっこよさ」

モデルからデザイナーへ転身したマリエ(31)は、持続可能性をコンセプトに持った自身のファッションブランドを立ち上げた。留学先のニューヨークでは、アナ・スイ、トミー・ヒルフィガー、ダナ・キャランらそうそうたる世界的デザイナーから、「時代の流れの読み方」を教わった。デザイナーのマリエに、今の時代の傾向を聞くと、「かつてのパンクはタバコや酒、ドラッグだったが、いまでは社会性を持った行為がパンクであり、オシャレでかっこよく見られる」と言い切る。(オルタナS編集長=池田 真隆 写真=高橋 慎一)

サステナビリティは「当然」

「かっこよさを追求したら、自然と持続可能性になる」と話すマリエ=9月6日、アッシュ・ペー・フランスが五反田で開いた「rooms experience」内で

筆者は9月6日、アッシュ・ペー・フランスが開いた日本最大規模のファッションとデザインの合同展示会「rooms experience」を取材で訪れた。バイヤーとメディア関係者向けのイベントであるため、各ブースでは出展ブランドの最新作が並んでおり、観る者を飽きさせない。

マリエのブースは、エシカルエリアの入口付近にあった。アンティーク調のソファが中心に置かれており、その周囲には廃材をアップサイクルしたラグが飾られていた。彼女がデザインしたものだ。

マリエといえば、モデルという印象が強いが、いまの彼女の肩書はデザイナー兼社長だ。かつては、レギュラー番組9本を抱える売れっ子だったが、2011年に芸能活動を中断した。子どもの頃から憧れていたファッションデザイナーになるために進路を変えたのだ。

「いまの時代は好きなことに努力を重ねることでお金になる時代」と見る

デザインを学ぶため、日本を飛び出し、ニューヨークにあるファッションの名門校パーソンズ・スクール・オブ・デザインに留学した。ニューヨークでは、アナ・スイ、トミー・ヒルフィガー、ダナ・キャランらそうそうたる世界的デザイナーから直々にデザイナーとしてのあり方やマーケティングの考え方などを教わった。

彼らから指導された「時代の流れを読む力」が、デザイナーとして生きる道を選んだマリエにとって、方位磁針のように行く先を照らしているという。

インタビュー中、何度もマリエはこの言葉を口にした。「エシカルやサステナビリティを大義としていないところが、私のブランドの特徴」。

マリエが立ち上げたブランド「パスカルマリエデマレ(PASCAL MARIE DESMARAIS、以下PMD)」は、販売場所は人を集めるために地方が中心、廃材を使用して商品化など、サステナビリティをコンセプトに持つ。

だが、もともとサステナブルなファッションを作りたかった訳ではないと断言した。「いまの世の中のオシャレをひも解くと、自然とサステナブルなものになっただけ」。その様子からは、サステナビリティを強調する気は微塵も感じられず、当然のこととしてとらえていた。

ファッションを通して時代の流行の先を予測する

1987年生まれのミレニアル世代であるマリエにとって、「かっこ良い」とは何か聞いてみた。「かつての若者にとっては、タバコやお酒、ドラッグがパンクの象徴で、反社会的であり、かっこよく、ファッショナブルであったよね」と言い、しばらく考え込むと、こう結論づけた。

「いまの時代の反社会的な行為は、タバコでも、お酒でも、ドラッグでもない。自分が信じた世の中に良いことを貫く姿勢こそが、パンクであり、反社会的であり、オシャレになっている」

マリエが手掛ける商品の一つに廃棄予定の端材を使ったラグ「THE LEFT OVER RAG」(小16800円、中27800円、大36800円)がある。廃材に目を付けた経緯も、独特だ。「工場で廃棄予定の端材を見たときに、お金を出して捨てていることを知った。彼らにとってはゴミかもしれないが、私にはとってはゴミではなかった」。

8月末には三越銀座店で1週間限定のポップアップストアを出した。ラグは32枚限定で販売したが、28枚も売れた。この価格帯でも「安い」という声が聞かれたという。マリエは、「ファストファッションに慣れている人はどうせ捨てると頭の隅に考えながら買っている。でも、これは捨てたくない。だから、その人にとっては、この価格でも安い商品になった」と分析する。

ニューヨークは世界一の醜さと美しさが同居している

ラグに使う端材。大量に届く端材のなかから、使える素材を選び、色分けして、デザインする

一体マリエはニューヨークでどのようなことを学んできたのか。「教えてもらったことは数えきれないほどある」と前置きしながら、筆者に一つのエピソードを話してくれた。それは、アナ・スイからの教えだ。

ニューヨークに来たばかりのマリエに向かって、アナ・スイは「いま、あなたがニューヨークにいることがどういう意味か分かる?」と問いかけた。マリエが考え込むと、アナ・スイは、「ここには世界一の醜さと美しさが揃っている。時間の許す限り全部自分の目で見て回りなさい。そして、自分にとって大切なものを取捨選択できるようになりなさい」と伝えた。

この教えを守り、2013年に日本に帰国してからも興味を持った職人のもとへ必ず足を運ぶようにした。これまでに話を聞いた職人の数は300人を超すという。全国の工場を自身の足で回り、共感した職人と取引する。

仙台の工場にも足を運び、取引しているというから驚いた。実は、東日本大震災のときに、マリエはツイッターで「世の中はチャリティ産業か」と投稿し、炎上したことがあった。「あの時は、混乱しているなかで、言葉が悪かった」と反省の色を見せ、いまでは重要なパートナーとして関係を築いているという。

マリエが手にしているのがラグ「THE LEFT OVER RAG」(小16800円、中27800円、大36800円)

取材中、マリエが語る言葉からは、「好きなことをして生きていきたい」というメッセージが痛いほど伝わってきた。モデルからデザイナーへ転身したときには、多くの人から反対に遭った。「好きなことで食べてはいけるはずがない」と決めつけられた。

それらの批判も受け止めながら、「好きなことで生きていけると証明したい」と芯は硬い。もちろん、好きなことは「楽なこと」ではない。いまでも、悩みや不安で、朝4時前に起きてしまう日も少なくないという。「私がダメだったら、好きなことで生きていきたいと思っている若い人の道を閉ざしてしまうことになる。彼ら彼女らのためにも私は失敗する訳にはいかない」と力を込めた。

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