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世界で広がるダイベストメント 国際NGO創設者に聞く

気候変動について精力的な活動を続けるビル・マッキベン氏

化石燃料関連の企業から投融資や預金を引き揚げる「ダイベストメント」が米国や欧州を中心に急速に広がっている。保険や金融企業のみならず、ニューヨークなどの大都市も実行するなど拡大しており、その総額は640兆円を超えたとの試算もある。日本でも第一生命保険が海外での石炭火力発電の建設に融資しないことを明らかにしたが、その動きは限定的だ。ダイベストメントが世界的な潮流となっている状況や理由について国際NGO「350.org」のビル・マッキベン創設者に聞いた。(箕輪 弥生)

ダイベストメントが世界的潮流に

今年の1月、ニューヨーク市は化石燃料への新規投資の停止、化石燃料関連企業からのダイベストメントなどを決定し、管理している年金基金(約20兆円)から化石燃料にまつわる株式の売却を5年以内に実施する予定だ。これに加えて2018年1月、デブラシオNY市長はエクソン・モービル、シェブロン、BP、ロイヤル・ダッチ・シェルなどの5大石油会社に対して気候変動による被害の訴訟を起こすことを決定した。

同様の決定はニューヨーク市だけではない。米国の大都市サンフランシスコ、シアトルそし、パリ、ベルリンといった大都市や、ノルウェーの政府系年金基金もダイベストメントを決定し、実行しつつある。もちろん大手保険会社、金融機関の石炭投資からの撤退の流れも明らかだ。その数は世界で800を超える。投資引き揚げを決定された金融機関や企業には、日本の電力会社やメガバンクなども含まれている。

金融機関は将来を見越して動きを急ぐ

このような決定についてダイベストメントを進める活動を行う国際NGO「350.org」のビル・マッキベン創設者はいくつかの理由をあげる。「まず最初に化石燃料を扱っている企業の業績がよくないということ、2つめは、気候変動の被害についての訴訟を受けるリスクを抱えていること。そして3つめに、太陽光発電や風力発電など自然エネルギーによる発電コストが大幅に下がっていて、化石燃料よりずっと魅力的な市場であることだ」。

マッキベン創設者は「金融業界というのは将来を見越し、それによってどれだけの利益を得るかという業種なので、あまりにも大きな額の投資引き揚げが実施されている化石燃料の市場の捉え方を変えざるを得ない」と金融業界がこれほど早く動いている現状を説明する。

アップルやグーグルなどの技術系企業も化石燃料の代わりに、自然エネで企業運営をするようになり、大規模な自然エネの事業も展開している。「環境に配慮していていないと、若い優秀な人材確保に影響がある」(マッキベン創始者)ことも重要な理由としてつけ加えた。

日本は過去に留まっている

マッキベン創始者ら350.orgは2012年からダイベストメント運動を始め、2014年にはニューヨーク市で40万人の気候変動にアクションを起こすデモを行った。それが影響してロックフェラー財団が、化石燃料企業の株の売却を開始したことも大きなニュースとなった。

2014年ニューヨークでは40万人が気候変動対策を求めるデモに参加した

ダイベストメントを進めることについて、マッキベン創始者は「気候変動はお金の流れに依存しているところが大きい。そこで化石燃料を扱う企業に流れる資金を断つことで、政治的な力を弱め、気候変動に対する変革を起こす基盤をつくっていく」とその戦略について説明した。

ダイベストメントが世界的流れになっているのに対して、日本の動きは世界と大きく隔たる。国際NGOの「グリーンピース・ジャパン」が4月に発表したレポートでは、日本の3大メガバンクが世界の石炭火力発電企業に2015年から2017年に投資した額は80億米ドル(8,800億円)以上となり、上位を占めていると報告している。政府は高効率で低コストの石炭火力を基幹電源と位置づけ、今後も40基以上の新規開発を目論む。

しかし、その中でも5月になり立て続けに第一生命保険は海外の大型事業融資に関しては石炭火力発電の建設に融資しないことを明らかにし、三井住友ファイナンシャルグループも石炭火力発電事業への融資方針に関して見直しの検討を明らかにするなど、わずかではあるが進展が見えてきている。

このような日本の状況について、マッキベン創始者は「世界の先進国は脱炭素という傾向が明確になっているのに対して、日本は過去の形に留まっている」と警鐘を鳴らす。現在、350.orgやグリーンピース・ジャパンら国際環境NGO6団体は共同で、邦銀メガバンク向けに石炭火力発電事業への新規融資の中止を要請している。

マッキベン創始者は「自分たちの預貯金が何に使われているのかを把握し、適切ではない使われ方をしている所から投資を引きあげるという行動が気候変動への重要なアクションになる」と締めくくった。


ビル・マッキベン:気候変動防止の行動を訴える国際NGO「350.org」共同創設者であり、 世界的ベストセラー「ディープ・エコノミー」「人間の終焉」の著者であるアメリカの環境活動家。2010年には米タイム紙で「世界最高の環境ジャーナリスト」として選ばれた。2012 年より、新たな気候変動対策として化石燃料からのダイベストメントキャンペーンを世界各地で展開。NGOの名前の「350」という数字には、温暖化を阻止するために大気中のCO2濃度を350ppm以下にする必要があるという意味を込める。

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箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・マーケティングプランナー・NPO法人『そらべあ基金』理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に『エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123』『環境生活のススメ』(飛鳥新社)『LOHASで行こう!』(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。

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