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「真の豊かさ」を見据え復興支援活動:アクタス

アクタスの休山 昭・代表(C.E.O.)

輸入・オリジナル家具を主力商品に、インテリアや生活雑貨などを販売するアクタス(本社東京・新宿)は、1995年の阪神淡路大震災で大きな被害を受けた企業の一つ。被災経験を生かし、東北復興支援に積極的に取り組む。その原動力は従業員の「WILL」だ。同社が目指す「豊かな社会」の姿と、その思いを休山 昭・代表が語った。NPO「東北の造形作家を支援する会(以下、SOAT)」の藤原久美子・理事長との対談を付録する。(沖本 啓一)

被災地に「輪」をつくる取り組み

――アクタス社は1995年の阪神淡路大震災で、大きな被害を受けています。当時はどのような状況でしたか。

休山:
当時は私自身も神戸に住んでおり、被災しました。六甲店があるエリアは特に被害がひどく、文化財指定の建造物を利用した店舗が木の柱を残して完全に倒壊しました。会社全体の売上げの約1/3を担う旗艦店だったので、会社がどうなるかという状況でした。

被災した地域には多くのボランティアが集まりましたが、その対応を被災者が行っていました。善意で来られているのに返って大変という経験を、私自身がしました。

――当時は新聞などでも、ボランティアが安易に被災地入りすることが問題になっていました。東日本大震災後の復興支援はどのような活動を行っていますか。

休山:
その体験があり、東日本大震災時には一時的なボランティアより根本的な取り組みが必要だと考えました。第一歩として、震災の直後に、寄付付きの T シャツを販売したのです。マーケティング部の、広告宣伝物を制作するデザインチームががすぐに行動に移しました。その次に、カーテンなどの残布で作ったぬいぐるみを販売し、その売上げを寄付する取り組みを行いました。

当社には「DNA of ACTUS」という、有志による組織横断型のチームがあります。チームから2人が被災地へ赴き、被災者の方々が何を必要としているかを聴くと、仮設住宅で暮らす上でコミュニティが閉じてしまい、外に出られないという話がありました。そこで、私たちが「輪」を作る活動をできないかと考えたのです。

例えば店頭で顧客がカーテンを購入した場合、布を裁断し残布が出ます。被災地の奥様たちに集まってもらい、残布でクッションカバーを作ってもらう取り組みを始め、出来上がったクッションカバーは応募者にプレゼントしました。約2000人からの応募と、想定以上に大きな反響がありました。

端材の機織り機で、裂いた残布を織る。「裂き織り」は東北地方北部の伝統工芸

――寄付付き商品、残布の利用、被災者が活動し「輪」をつくる取り組みと進化していますね。

休山:
現在は伝統工芸の「裂き織り」体験の取り組みに参加しています。当社オリジナルの「ファブリシア」という布のカーテンの残布と、従来は燃料にしていたウォールナットなどの端材を使った機織り機を現地のNPO法人「SOAT」に送り、ワークショップなどで利用してもらいます。
(記事下部に休山氏とSOATの藤原代表の対談を掲載しています)

従業員の「WILL」がエンジン

――特別に「CSR」を意識しなくても、社会に貢献しようという社風があるように伺えます。

休山:
当社の信条が綴られている「ACUTUS WILL」という小冊子があります。その行動規範は「自分自身、お客様、共に働く仲間、家族、社会に、どう貢献していくか」です。従業員の取り組みは各部署で共有し、感動や共感をした取り組みに投票を行い、年間のベストWILLを選んでいます。裂き織り体験は共感がすごく多かったです。

「WILL」はマニュアルではなくエンジンです。従業員がどういう行動を取るかは、自分の個性と意思とセンスで決めようという内容です。これを体感することが、当社が社会貢献の取り組みをする意味のひとつです。従業員のマインドを高め、社風から文化にし、それが自然と社外にも伝われば良いと考えています。

当社が掲げるミッションのひとつは「真に豊かな人生を創造する」です。プロダクト面では、人や環境に優しい家具を販売しています。家具やインテリアは建築基準法の範囲外なので義務はありませんが、当社の製品の85%は同法の厳しい基準をクリアしています。残りの15%は欧州のより厳しい基準に則った製品です。空気中への拡散によって気管支炎や子どもの疾患の原因となる成分が少なく、新品の家具を置いたときの目に染みるような感覚もありません。素材のエコループやゼロエミッションを目指す取り組みも行っています。

――そういった大きな取り組みの源泉は、従業員のマインドということですね。

休山:
私たちが世の中に、何を提供するべきかを考えると、「人生」に辿り着きます。良いソファに座ってもらうことは単なる手段で、延長線上にある購入者やその家族の人生が豊かになるということを、従業員が能動的に考えています。

コミュニティを大切に「夢は豊かな街を開発すること」

――サステナブル・ブランド ジャパンは「Good Life」というテーマを持っています。「真に豊かな人生の創造」に通じるものがあります。単に個人にとって良い生活というだけでなく、地球や社会に思いを馳せた「良い生活」とは何でしょうか。

休山:
私たちの答えの一つが、当社が立ち上げたブランド「SLOW HOUSE」です。購入して、傷んで、捨てるという商品は一切やめようというコンセプトがあります。「SLOW HOUSE」の商品には無垢なままの木材が多く使われています。使うほど、一つひとつの傷に愛おしさを感じる家具を提案したいのです。布や食べ物もオーガニックやフェアトレードにこだわりました。Lifeという言葉の意味は生活であり、人生です。人々の人生に、一過性ではなく長らく寄り添って豊かにしたいという思いがあります。

本当の豊かさとは何かを、私も含めて社内でよく話し合っています。今は健康や素朴な幸せを守り、コミュニティの中で歩んでいく豊かさに社会が気付いていると思います。私も被災の経験から気付いたのです。

人の命は何事にも代えられないですが、家や車は代えられてしまいます。モノよりも、コミュニティをつくることが大切なのではないでしょうか。人と人との絆で出来上がっていく、小さくても豊かな町を開発したいというのがアクタスの夢です。

対談:地元の人と協働し復興支援をサステナブルに

アクタスの休山 昭代表(左)とNPO法人「東北の造形作家を支援する会(SOAT)」の藤原 久美子理事長

仙台を拠点に活動するNPO法人「東北の造形作家を支援する会(SOAT)」は、東北のアーティストの活動支援とともに、アートを通じた復興支援活動も行う。被災者のコミュニティ形成のための「場」の提供を目的に開催する伝統工芸「裂き織り」ワークショップでは、アクタスから端材や残布が提供されている。藤原 久美子理事長とアクタスの休山代表に共同の復興支援について聞いた。

――SOATの「場を提供する活動」とアクタスの「人の輪をつくる活動」の考え方には共通点が多い気がします。

休山:
素晴らしい出会いでした。私たちだけでは復興支援を長期間続けることはできません。地元で活動されている人たちの中に参加させて頂くことで、それが可能になりました。

「裂き織り」作品は地域ごとにテーマを決めてパッチワークし、展示発表する

藤原:SOATも私たちにできることは何かないのかと考えていました。休山さんのお話と同じで、震災直後にボランティアの人数を揃えることはせず、まずは避難所をめぐり、今何が必要なのかを聞いて歩きました。

避難所では、子供たちが萎縮している光景を見ました。本当は遊びたいのに、大人たちの顔色を窺っているような状況です。まずは子どもを外に出して、縄跳びやサッカーなどをするという活動をしました。

休山:僕も阪神淡路大震災時に、小学校の体育館で生活したので、すごく分かります。大人の被災者は子どもを気遣う余裕がなくなっていました。

藤原:震災当時は取り組みの主体は子どもたちでしたが、29年度は未就学児から高齢者まで世代を超えた支援に取り掛かり、裂き織り体験の活動を始めました。アクタスに木の端材と残布があると聞き、それを利用したワークショップの開催を提案したのです。

――それぞれのリソースを利用して、無理なく被災地にコミュニティ形成の場を提供していますね。

休山:
地元にいらっしゃるから継続してこまめにサポートされていると思います。私たちも、地元の人と一緒に活動することが「サステナビリティ」なんだと感じました。

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沖本 啓一(おきもと・けいいち)

フリーランスライター。
主にエンタメ記事・食レポなどを執筆していたが、サステナビリティ関連に興味を持ち、サステナブル・ブランド ジャパン編集局に関わる。CSR検定3級を満点で合格。
好きな食べ物は鯖の味噌煮。