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コンゴのNPOが日本視察、鉱物から農業へ転換目指す

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コンゴ民主共和国で活動するNPOのCONSOL(コンソル)は、同国での深刻な食糧不足や貧困問題を解決する一助として、このほど1カ月間にわたり有機農業の現場や日本のリサイクルシステムを視察した。コンゴは「紛争鉱物」の産出国として知られているが、鉱物資源依存から脱するために農業ビジネスの可能性を模索中。コンソルは日本での視察を、同国での農業活性化とビジネスモデル構築に活かしていきたいという。(オルタナ副編集長=吉田広子)

中部アフリカに位置するコンゴは、人口約7000万人、国土はアフリカで2番目に広く、日本の約6倍の面積がある。

コンゴは銅、コバルト、タンタル、タングステン、金といった鉱物資源が豊富で、輸出品の約9割を鉱物資源が占めている。だが、こうした資源採掘は紛争や人権侵害、汚職の温床とされ、コンゴから産出される鉱物は「紛争鉱物」として、欧州や米国で規制化が進められている。

資源が豊富な一方で、コンゴは世界で最も貧しい国の一つだ。国連食糧農業機関(FAO)と国連世界食糧計画(国連WFP)の報告書「総合的食料安全保障レベル分類」(IPC)によると、コンゴでは770万人が飢餓に直面している。さらに5歳未満の子どもの43%が慢性的な栄養不良状態にあるという。

有機農業の可能性探る

あらかじめ耕運機でニンジンを掘り起こし、後に続いて収穫していく

「コンゴは鉱物資源に依存し、食糧の多くを輸入に頼っている。だが、貧しい人にまで食べ物が行き届いていない。各国政府からの援助もあるが、適切に分配されておらず、根本的に解決していく必要がある」(コンソルのアリ代表)

コンソルはまず、食糧の確保が最優先という考えのもと、農業に取り組んでいる。50ヘクタール(東京ドーム約10個分)の畑でピーナツや野菜、果物などを栽培。アリ代表は「適地適作を行うために、種をまく時期や間隔、種類などを変えながら、効率的な栽培方法を探っている」と説明する。

コンソルは慶応大学と地域づくりの共同研究プロジェクトを行っており、今回はその一環で来日した。視察先の一つが「ワタミファーム」(千葉県山武市)だ。有限会社ワタミファームは全国12カ所で有機農業を展開。ワタミグループの外食店舗では、使用される野菜の約4割が有機野菜か特別栽培農産物(化学合成農薬および化学肥料の窒素成分を慣行レベルの5割以上削減して生産した農産物)だ。

コンソルが有機農業に期待するのは、「コンゴの農家はほとんどが小規模な家族農家で、貧しく、農薬を買う余裕がないから」(アリ代表)。まだ有機栽培は一部にとどまるが、ワタミファームで雑草や害虫の駆除方法などを学んだ。

さらにキンシャサでは、ソバも栽培している。コンゴでは、キャッサバイモ(タピオカの原料)が主食だが、食材の選択肢が少なく、栄養が炭水化物に偏っているという。そこで、乾燥地域での栽培に適し、タンパク質が豊富で栄養価が高いソバを育て、ソバ粉とキャッサバを混ぜる食べ方を提案している。

貧困層の雇用を創出

ワタミファームを訪れたコンソルのアリ代表(左)とセリーヌさん

ワタミファームの土づくりセンターでは、ワタミグループの食品製造工場から毎日3トン排出される食品廃棄物をたい肥化している。

コンソルのセリーヌさんは「生産した農産物をどのように流通させるか。どう加工品にするのか。食品ロスの資源循環など、ワタミグループのフードシステム全体が参考になった」と語る。

コンゴでは長く続く紛争などが原因で、夫を失った女性も多い。セリーヌさんは「彼女たちを農場で雇い、農業を軸とした持続可能なビジネスをつくっていきたい。そこで出た利益を使って、教育の問題も解決していけたら」と意気込む。

コンゴではゴミの問題も深刻だ。キンシャサでは1日7000トンのゴミが発生するが、そのうち15%がペットボトルだという。川周辺にペットボトルが集積し、うまく排水されず、2016年12月には洪水が発生し、大きな被害を与えた。ゴミの問題は衛生問題にも直結する。

アリ代表は「日本は、せまい国土のなかで、資源を最大限有効活用し、無駄なものを発生させない工夫がたくさんある。日本の技術やノウハウをコンゴの発展に生かしていきたい。日本企業とも協力関係を築いていければ」と意欲的だ。

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吉田 広子 (よしだ・ひろこ)

株式会社オルタナ オルタナ編集部 副編集長。大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月株式会社オルタナ入社。2011年副編集長に就任。