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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

再利用できるワールドカップ会場、カタールが計画

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解体したパーツはスポーツ施設のみならず、さまざまな用途の施設に利用可能だ© Fenwick Iribarren Architects

2022年にFIFAワールドカップを開くカタールで、世界で初めて解体、移動、リユースが可能なサッカースタジアムの計画が明らかになった。輸送用コンテナを標準化した部品を使って組み立てるという方式を取るため、従来ほど資材の必要がなく、廃棄物も減らすことができる。ワールドカップ終了後は建物を分解し、国内外で他施設の建設に再利用する。(クローディア―真理)

競技場は、ドーハ市民憩いの海岸通り、コルニーシュやダウンタウンのウェストベイ地区を対岸に見わたせる絶好のロケーションに建設される© Fenwick Iribarren Architects

首都ドーハ市内に新築されるラス・アブー・アブード競技場は「社会的責任あるスタジアム」を目指し、スペインのフェンウィック・イリバレン・アーキテクツ(FIA)がデザインを担当した。サステナビリティ、モジュール性、可動性、レガシー、機能性、象徴性をコンセプトとしている。

ワールドカップのための競技場は、使用期間が短い。そんな建物の特徴を考慮し、同競技場にはモジュラーデザインを取り入れており、従来型のスタジアム建設より資材が少なくて済むだけでなく、廃棄物の減量も可能だ。このことは、コスト減や建設期間の短縮に通じる。開催期間中、スタジアムを構成する輸送用コンテナ内には、取り外し可能な席、売店、トイレなどが設置される。

大型スポーツスタジアムの建設をサステナブルにするためには、造りのみならず、会期終了後のしっかりした計画も必要だ。モジュラーデザインの同競技場はワールドカップ終了後、区画やパーツごとに容易に解体することができる。そして必要とされる都市や国に移送し、長期にわたって再利用する。将来ワールドカップサッカーを主催する予定の国に運んで使用することも考えられ、そうした場合、予算を削減できるのはもちろん、よりサステナブルなスタジアムを用意することが可能になる。

ワールドカップサッカーのような世界的なイベントが行われた土地の価格は上昇する傾向がある。競技場を解体・移動した跡地を主催者側は売り、初期投資を回収できる。跡地は、人々のニーズに合わせ、新しく開発される。

組み立て・解体が容易な建物ながら、サッカーファンがゲームを十二分に楽しめる造り© Fenwick Iribarren Architects

規模の大きなスポーツ大会開催をきっかけに、後世に何らかの形で財産を残すことを「レガシー」という。ホスト国としてカタール国内でインフラ整備を進める組織、シュープリーム・コミティー・フォー・デリバリー・アンド・レガシー(SC)は、試合終了後、ラス・アブー・アブード競技場を解体し、建物の各部分を再利用してもらうことを、カタール大会のレガシーととらえている。SCのハッサン・アル・タワディ事務局長は、「FIFAワールドカップカタール大会が、国内そして世界にレガシーとして何を残すかを検討した際、常に『イノベーション』が挙がっていた。ラス・アブー・アブード競技場のデザインは正にイノベーションそのものといえる」と同競技場建設に意欲を見せる。

FIAのマーク・フェンウィック共同経営者は、「革新的でサステナブルなこの競技場は、世界中の建築家にインスピレーションを与えるはず」と、将来のスタジアム建設に変革をもたらすきっかけになることを期待する。

2020年の完成時には、ラス・アブー・アブード競技場は、湾岸協力理事会によるグリーンビルディング認証であるグローバル・サステナビリティ・アセスメント・システムの4つ星を与えられる予定だ。観客席数は4万、建物の表面積は12万500平方メートル。ドーハ市内のウォーターフロントを臨む45万平方メートルの敷地に建てられる。

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