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ネスレ、高齢化など課題解決型サービス強化で成長狙う

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事業戦略発表会に登壇した、ネスレ日本の高岡浩三CEO


ネスレ日本は9月5日、下半期の事業戦略として、顧客の健康課題や高齢化などの課題解決サービスを強化し、さらなる成長を目指していくと発表した。今秋から、ビタミンなどの栄養素を含む抹茶商品を増やすほか、コーヒーマシーンに高齢者の見守り機能を備えたIoTサービス「ネスカフェ コネクト」の販売も開始する。同方針について、高岡浩三CEOは「21世紀を生き残るには、IoTを使った課題解決の提供が欠かせない」と語った。(オルタナ編集部=小松 遥香)

上半期のネスレグループの売上高は、430憶スイスフラン(約4兆8559億円)だった。ネスレ日本の売上高の対前年同期比伸び率は、他の先進国市場の平均が0.8%の中で2.2%と高く、営業利益額は前年同期比の7.4%増だった。この背景には、家庭用コーヒーマシーンが普及していることやキットカット事業のプレミアム戦略が好調なこと、自社のEコマースの売上高が伸びていることなどがある。

高岡CEOは、顧客が気付いていない課題を見つけ、解決策を提供する「イノベーション」が成長につながっていると説明した。

ネスレ日本はこの日、3つの下半期事業戦略を発表した。

健康食品としての「抹茶」を事業の柱に

同社は今後、ポリフェノールを豊富に含む抹茶を一つの健康食品と捉え、抹茶味の菓子や抹茶飲料の種類を増やすなどして、栄養・健康課題の解決策として抹茶事業を拡大させる方針だ。

抹茶オレなどを除く本格的な抹茶飲料の市場において、ネスレのシェアは、同社がカプセル式コーヒーマシーン「ネスカフェ ドルチェ グスト」のカプセルに抹茶味を投入した2016年以降、順調に伸びてきている。当初のシェアは35%だったが、2017年上半期には50%になり、今年度末には70%になるだろうと予測している。またネスレの参入により、国内の本格的な抹茶飲料の市場自体が2012年比で2.5倍に拡大している。

高岡CEOは、小規模な抹茶市場に参入したことに関して、「小さいからこそ参入するのだ。大きい市場にブルーオーシャンはない。抹茶を飲みたいと思っている人は多くても、自分で抹茶を点てるかお店に行って飲むかしかなかった。顧客の課題を解決することでマーケットは拡大する。来年には、シェアを80-90%まで伸ばしていく自信がある」と力強く語った。

今年3月に発売された、ビタミンやミネラルが含まれる「ネスレ ウェルネス抹茶」

この自信の背景にあるのは、今年3月に始まった新サービス「ネスレ ウェルネス アンバサダー」の存在だ。同サービスは、ネット上で前日の食事内容などを選択式で答えていくと、不足しているだろう栄養素の含まれた抹茶カプセルを教えてくれ、それをカプセル式コーヒーマシーンを使って飲むことで栄養補給できるというものだ。4種類あるカプセルには、それぞれ10種類のビタミンと5種類のミネラルが含まれている。毎月30個のカプセルが定期的に届く仕組みになっている。

さらに今秋から、コーヒーマシーンが使えない外出先などでも手軽に栄養を補えるように、カプセルと同量の栄養素を含んだ4種類の抹茶味のキットカット「ウェルネスキットカット」も発売する。

高齢者の見守り機能を備えたIoTサービス「ネスカフェ コネクト」を発売

戦略発表会の当日に発表された、IoTを活用した新サービス「ネスカフェ コネクト」は、コーヒーマシーン「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ i」と専用タブレットがセットになったサービスだ。高齢者の孤立問題を解消しようと開発された。

タブレット画面に表示されている「バリスタさん」はコーヒーマシーンの操作のほか、会話もできる

例えば、コーヒーマシーンを手動で操作せずとも、タブレットに表示される女性「バリスタさん」に話しかけると、音声を認識し、ブラックコーヒーやカフェラテなど飲みたいコーヒーを淹れてくれる。さらに、人工知能(AI)が搭載されているので、バリスタさんと会話することや、話しかけるだけでネット上の情報を検索することもできるのだ。

何より、コミュニケーションアプリ「LINE」と接続しており、コーヒーを飲むと、離れて暮らす家族のLINEにスタンプが通知される。また家族がLINEにメッセージを送ると、バリスタさんがメッセージを読み上げてくれ、タブレットに話しかけることで返事ができる。

ネスレ日本は、実証実験を長野県小谷村で行ったところ、ヘルパーにとっても同サービスを見守り機能として活用できることが分かった。いずれは1台のコーヒーマシーンに全ての機能を搭載したい考えだ。

高岡CEOは、「少子高齢化の縮小する日本で、地域の課題を解決しながら利益を上げて成長を果たしていきたい」と話した。

日本発の高級キットカットをアジアで展開

同社は、日本製の高級キットカットを海外にも展開していく。高級キットカットやご当地限定キットカットは近年、外国人旅行者から人気を博している。こうした状況を受けて、ネスレ日本は日本発のキットカット自体がブランドであると捉え、アジア諸国に市場を拡大するに至ったという。

10月26日には、韓国・ソウルに海外で初めてとなる専門店「キットカット ショコラトリー」を出店し、今後は中国や台湾、ASEAN諸国での出店も検討している。

21世紀型イノベーションとはーーネスレはなぜサービスに力をいれるのか

高岡CEOはこの日の会見で、「顧客の課題解決」、「サービス」、「イノベーション」という言葉を繰り返し、ネスレは顧客の課題を解決するサービスを売っていく「ソリューションブランド」であるという強い姿勢を示した。

同CEOは会見の最後、「21世紀は、商品の質を上げても顧客の問題解決をすることがほとんどできない。これ以上おいしいコーヒーやチョコレートをつくって顧客の問題を解決できるだろうか」と問いかけた。

そして、「産業革命がイノベーションにおいて一番大きな役割を果たしてきたように、この21世紀は、インターネットで課題を解決しないといけない。ウーバーやエアビーアンドビーもやっているように、インターネットを使って、これまで解決できなかった顧客の問題をどうやってサービスとして解決するかが成長の鍵になる。ネスレ日本はそれをやっていくのだ」と締めくくった。

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小松 遥香

オルタナ編集部 。アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。趣味は、大相撲観戦と美味しいものを食べること。