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スイス・リーメイ社の有機綿プロジェクトがSDGsに成果

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インドにあるオーガニックの綿花畑で収穫作業に携わる女性。収穫時には2〜3カ月もの間、毎日綿を手で摘む作業が続く。(COPY RIGHT to REMEI AG/PANOCO TRADING)

スイスに本拠を置くリーメイ社のオーガニックコットン事業が、国連が定めた「持続可能な開発目標」(SDGs)達成を意識したオペレーションを展開し、大きな成果をあげている。農家が栽培した有機綿を市場価格より高く買い取るだけでなく、有機農法の指導や子供の教育・医療の支援・自然エネルギー開発から、女性の就業支援まで7項目ものSDGsについて効果をあげ、農民が自立するための仕組みを構築している。この取り組みは、国連の「持続可能な開発パートナーシップ賞」をはじめ数々の国際的な賞を受賞。このたび同社のヘルムート・ヘルカーCEOが来日し、事業の成果や現状を語った。(箕輪 弥生)

ビオリ・プロジェクトの成果を説明するREMEI社のヘルムート・ヘルカーCEO(COPY RIGHT to PANOCO TRADING)
ビオリ・プロジェクトの成果を説明するREMEI社のヘルムート・ヘルカーCEO(COPY RIGHT to PANOCO TRADING)

1991年からインドでスタートしたREMEI(リーメイ)社の有機綿プロジェクト「bioRe(ビオリ)プロジェクト」は、拠点となる有機農法のトレーニングセンターをインドとタンザニアに開設するなど、25年以上にわたり栽培指導だけでなく、生産者の暮らしを包括的に支援している。現在、6000軒以上の農家が参加する大規模なプロジェクトであり、SDGsの多くの項目に成果を挙げつつある。

今回、リーメイ社と20年以上の取引のあるオーガニックコットンを企画製造・販売するパノコトレーディング(東京・千代田)の招きにより、同社のヘルムート・ヘルカーCEOが来日し同プロジェクトの持続可能な目標について説明した。

1991年からインドでスタートしたREMEI(リーメイ)社の有機綿プロジェクト「bioRe(ビオリ)プロジェクト」は、拠点となる有機農法のトレーニングセンターをインドとタンザニアに開設するなど、25年以上にわたり栽培指導だけでなく、生産者の暮らしを包括的に支援している。現在、6000軒以上の農家が参加する大規模なプロジェクトであり、SDGsの多くの項目に成果を挙げつつある。

今回、リーメイ社と20年以上の取引のあるオーガニックコットンを企画製造・販売するパノコトレーディング(東京・千代田)の招きにより、同社のヘルムート・ヘルカーCEOが来日し同プロジェクトの持続可能な目標について説明した。

まず、SDGs第3目標の「健康的な生活を確保する」に対しては、100以上のトイレの設置と移動可能な医療バスの配置を行い、農家の人々の健康を守る仕組みを構築している。すでにインドでは年間7万人を超える農民やその家族がこの移動医院を利用し、検査や薬の提供を受けている。

乾季に水不足が深刻なタンザニアでは77の井戸を掘り、26の雨水タンクを学校に設け「すべての人々へ水と衛生へのアクセス」(第6目標)を容易にしている。この場合、リーメイ社は建設費用とノウハウを提供し、建設自体は地域の人々の手によって行われるため「持続可能な管理を確保」(第6目標)している。

「質の高い教育」(第4目標)にも力を入れる。インドでは、初等教育学校を18校建設した。もちろん、農家への有機農業の指導や女性の自立に向けた手織りの技術指導など、就業や技術所得の教育も20年以上続けている。

「持続可能で近代的なエネルギーの確保」(第7目標)に関しては、2840台の高効率なガスコンロとバイオガスプラント3000個以上をインドとタンザニアで提供した。バイオガスプラントは家畜の廃棄物を燃料に利用した自然エネのひとつで、燃料となっていた木材の伐採を減らし、残渣は再び肥料として使える優れたシステムである。ここでの二酸化炭素の削減は、農場や工場、輸送の際に排出されたCO2とオフセットされている。

「持続可能な経済成長」(第8目標)と「貧困の撲滅」(第1目標)は特に同プロジェクトが長年追求している課題であり、その方策は非常に手厚い。具体的には有機農業への転換のために契約農家に対して3年間無利子の資金貸付をし、有機綿の買取り保証をすると共に、15%市場価格より上回る価格で買い取る。また、女性が労働の機会や社会参加を増やしていくために、手紡ぎや手織り、手刺繍などの手工芸で収入を得られるように支援している。

工場に運ぶまでの間も何度もGMO検査をする(COPY RIGHT to REMEI AG/PANOCO TRADING)
  • 事業の中でSDGsに成果を出す「ビオリ・プロジェクト」

同プロジェクトの根幹となる「持続可能な消費と生産サイクルを作る」(第12目標)では、独自の厳しい基準がある。これは①オーガニックであること②フェアトレード③環境負荷の低減と人体への悪影響の排除④カーボンニュートラル⑤ 透明性をもつ-の5点だ。

ヘルカーCEOは「私たちは殺虫剤や化学肥料を使わないことはもちろん、GMO(遺伝子組み換え作物)の種も使わない。市場で購入しにくい非GMOの綿花の種を作るところまでやっている」と説明する。

さらに、商品にはラベルについている番号をウェブに入力すると、製品になるまでに、誰が種を植えて育て、どの工場で作られたのかが全部わかる「トレーサビリティシステム」を構築するなど透明性も徹底している。

同プロジェクトがユニークなのは、生産者とユーザー双方のニーズを満たし、経済的、社会的なバランスをとりながら四半世紀続く事業の中で多くのSDGsを実現している点である。「サスティナビリティはただのラベルではなく企業のあり方そのものである」と話すヘルカーCEOの言葉には重みが感じられた。

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箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。

http://gogreen.hippy.jp/