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ゼロ・エネルギー実現へ、店舗の省エネ化進む流通業界

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大和ハウスグループの「ロイヤルホームセンター津島店」は、店舗屋根面にメガソーラーを設けZEB化を推進

エネルギーコストや環境負荷の削減のため、商業店舗がゼロ・エネルギー化に向かっている。大和ハウスグループのロイヤルホームセンター(大阪市)は、太陽光発電の設置や、自然光や通風の活用で空調を抑制し、大型店舗では初めてZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)を実現した。ローソンやイオンでも自然エネの利用や高断熱化、高効率化によりZEBを目指す店舗が増えている。国のZEB化ビジョンもこれらの動きを後押しする。(箕輪 弥生)

資源エネルギー庁は、ZEBを「高断熱化・日射遮へいなど建築計画的な手法を最大限に活用してエネルギー消費量を半分以上減らし、その上で太陽光発電などによりエネルギーを創ることで年間での一次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロ又はおおむねゼロとなる建築物」と定義している。

しかし、実際は立地や建築物の構造などより実現はなかなか難しいのが現状だ。その中で、ZEBを実現した店舗がある。

大和ハウスグループのロイヤルホームセンターは、2013年4月から大和ハウス工業の技術を導入したZEB店舗の開発や既存店舗の建物改修を進め、エネルギーゼロに挑戦している。

「ロイヤルホームセンター津島店」(愛知県2016年4月オープン)は、越屋根から自然光と通風を呼び込み、昼間の照明電力や空調エネルギーを削減した。これに加え、日照条件の良い平屋建てという特性を活かして、屋根面に1.2MWのメガソーラーを設置し、延床面積1万平方メートル超の商業施設では、国内初のZEBを実現した。

「ロイヤルホームセンター長久手」(愛知県2015年2月建て替え)は、傾斜のある立地を活かし、店舗の西側を地面に接するように配置することで断熱性を高め、空調によるエネルギーを削減した。

同社広報室の佐野快担当は「土地の属性に合わせて省エネをしている」と説明する。同ホームセンター全店舗で2005年度比CO2排出量を44.1%削減した。これらの実績により、平成28年度「省エネ大賞(省エネ事例部門)」において、「省エネルギーセンター会長賞」を受賞している。

環境性能の統合で進む店舗のZEB化

IoTを活用しエネルギーの最適化を行う「ローソン小平天神町二丁目店」

コンビニ大手のローソンも早い時期から店舗における省エネの取り組みを行っている。1998年から、店舗に太陽光発電を設置した店舗は2000店を超え、LED照明は既存店全店に導入した。加えて、フロンを使わず大幅な省エネ効果のあるCO2冷媒冷凍冷蔵機は約1900店舗に導入している。

今年2月にオープンした「ローソン小平天神町二丁目店」は、自然循環換気や地中熱利用、換気トップライトなどの建築計画的な省エネ手法を取り入れた。またIoT化により遠隔制御が可能な蓄電池やLED照明を導入することで、標準的な店舗と比べて電力量を約6割削減する見込みだ。これらの取り組みにより、同店舗はZEB認証を取得している。

昨年2月にオープンした「ローソン夢前スマートインター前店」(兵庫県姫路市)は、コンビニで初めてバイオマス発電を導入し注目されている。店舗から排出された使用済み食用油の一部をバイオディーゼル燃料(BDF)にリサイクルして、発電した電気を店舗で利用している。これに加え、店舗の断熱性能の向上や太陽光発電の設置や空調の工夫などを組み合わせ、従来の店舗に比べて約7割の電力消費を削減している。

ローソンコミュニケーション本部広報室の持丸憲担当は、「既存の店舗での実証結果を基に、今後も環境配慮型店舗の可能性を広げていきたい」と話す。

イオンも2005年から環境配慮型の店舗づくりを始めた。2012年からはエネルギーを地域で効率的に融通しあい、緊急時には地域の防災拠点ともなる「スマートイオン」の展開を強化している。

2015年に開店した「イオンモール四条畷」(大阪府)はZEB実証事業として採択された。同モールは高断熱や壁面緑化などにより断熱化をはかり、施設内のエネルギー使用状況を可視化し、使用する機器の制御を行う「BEMS」(Building Energy Management System)を採用。約750kWの太陽光発電装置やLED照明なども導入し高いエネルギー性能を備えた。

店舗のZEB化は導入する設備や構造などによりコストはかかるが、光熱費を減らし、エネルギーセキュリティも高まる。経産省は2014年の「エネルギー基本計画」で、「2030 年までに新築建築物の平均でZEBを実現することを目指す」としている。今後、流通業界ではZEBを目指す店舗が拡大しそうだ。

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箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。

http://gogreen.hippy.jp/