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「熊本の企業」と認められるために-サントリーのCSR

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基調講演した嶋田純熊本大学名誉教授(4月16日、ホテル熊本テルサにて)

熊本県は4月16日、熊本市内で「復興祈念シンポジウム」を開催した。関連企画の「『水の国くまもと』リレーセミナー―熊本地震後も地下水は大丈夫?-」に、熊本大学名誉教授、くまもと地下水財団担当者、大菊土地改良区事務局長、サントリーホールディングスCSR担当者が登壇。熊本地震による地下水の変化や今後の取り組みについて討議した。熊本地域11市町村(注1)は、地下水から約100万人の生活用水や農業・工業用水を賄っている。(オルタナ編集部=松島 香織)

熊本大学の嶋田純名誉教授は、「熊本地震による地下水・湧水の変動とその解明に向けた今後の取り組みについて」と題して講演した。熊本地震により、湧水が枯渇したり新たに出現したりしたこと、一時的に水位や水質が変化したことを報告し、今後も研究組織でデータ収集・分析することが重要であると話した。

熊本市は、水田を活用した地下水かん養等、「自然のシステムを利用した地下水保全」に積極的に取り組み、2013年国連『生命の水(Water for Life)』最優秀賞(水管理部門)を、日本で初めて受賞している。

地域の実情に合わせた「持続的な地下水管理システム」を確立した熊本の事例は、先進的であり、地震に伴う地下水の科学的究明と共に、「全国に発信することが期待される」と嶋田名誉教授は結んだ。

サントリーの復旧・復興の取り組み

熊本地域は地下水を水道水源としている。参加者は熱心に耳を傾けていた(4月16日、ホテル熊本テルサにて)

企業の取り組みとして、サントリーホールディングスのコーポレートコミュニケーション本部CSR推進部天然水の森グループ三枝直樹担当が登壇した。サントリーにとって良質な天然水は企業の「生命線」であり、「生命線」の「持続可能性」を守るために、「天然水の森」と「冬水田んぼ」の水源かん養活動を行っていると話した。

「天然水の森 阿蘇」の取り組みとして、益城町や西原村、熊本県林業公社と森林整備協定を締結し、城山国有林と合わせて388haを管理している。2017年2月に、西原村有林の間伐を行い、間伐したヒノキでテーブルを作り、工場見学のゲストルームに設置した。

サントリー九州熊本工場は、上益城郡嘉島町にあり、熊本地震で場内の道路が隆起・陥没したり、原料処理設備等が倒壊したりする等、大きな被害が出た。2017年4月12日から、工場見学を再開している。

「冬水田んぼ」は、肥沃土の生成や雑草の減少を目的とした、冬に水田に水を張る伝統の農法だ。2010年11月から益城町と協定し、取り組んでいる。11月から翌年3月末までの5か月間、11haの田んぼに水を張ると、約140万トンの地下水をかん養できるという(東海大学調査)。

冬に水田に水を張ることで、アオサギやコガモなどの鳥が飛来するようになった。水辺の生き物が豊かになってきており、九州大学や益城町の小学校と生き物調査としている。さらに、生物多様性や水質の向上を期待できる「有機農法」を実験的に開始した。

地震により、地盤が縦と横にずれ、田んぼは変形した。傾斜の補正や、用水路の補修等の災害復旧工事を進め、併せて「創造的復興」(注2)として「ビオトープ」の設置を考えているという。

「地元企業」として復旧の先にある「創造的復興」へ

「創造的復興」のひとつとして、サントリーのブランド力や販路の強みを生かし、農家と熊本県と連携した、益城復興のブランド米の開発を計画している。

これまでは、緊急支援や商品やイベントを通じた支援、文化・芸術・スポーツなどを通じた子どもや地域コミュニティ活動の支援をする「サントリー水の国くまもと応援プロジェクト」に取り組んできた。さらに地下水の持続可能性に貢献する「サントリー熊本地下水みらいプロジェクト」に取り組んでいくという。

「2003年から熊本工場はスタートしました。今までのプロジェクトにプラスして『サントリー熊本地下水みらいプロジェクト』を推進し、熊本のみなさんから『サントリーは地元の企業だ』と言ってもらえるよう、持続的に支援・取り組みをしていきます」と三枝担当はコメントした。


注1:熊本市、菊池市、宇土市、合志市、大津町、菊陽町、西原村、御船町、嘉島町、益城町、甲佐町。
注2: 熊本県は復旧・復興プランを2016年8月3日に策定した。「被災された方々の痛みを最小化する」「単に元あった姿に戻すだけでなく、創造的な復興を目指す」「復旧・復興を熊本の更なる発展につなげる」の3原則がある。

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松島 香織 (まつしま・かおり)

企業のCSRや広報・IR部署を経て、SDGs、働き方改革(ダイバーシティ)、地方創生などをテーマに取材中。