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自治体が率先しLGBTの理解促す―ラッシュが参加

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小金井市、国立市、狛江市の多摩3市男女共同参画推進共同研究会が2月12日、「LGBTシンポジウム―私だけの色・あなただけの色―」を開催した。挨拶に立った永見理夫・国立市長は「自分たちが抱える生きづらさ・息苦しさを話したい、という当事者の方からお話があったのが、きっかけ」と話した。パネルディスカッションにはLGBT当事者、支援団体、積極的に支援キャンペーン等を実施している企業など、様々な立場の人が登壇した。(オルタナ編集部=松島 香織)

挨拶する永見理夫・国立市長

シンポジウムは平成28年度 国立市人権・男女共同参画事業であり、開催について「暮らしやすい社会のために、市民にLGBTの正しい理解をしてもらうのが行政の役割」と、国立市の政策経営部 市長室 男女平等・人権・平和担当の吉田徳史係長は話した。

LGBT層に該当する人は7.6%と言われている(「LGBT調査2015」電通ダイバーシティ・ラボ)。100人中8人が該当する比率だ。だが、まだまだ社会の理解が足らず、当事者が思い悩んだり、家族がどう接したらよいか分からない、といった問題が起きている。

NPO法人共生社会をつくるセクシュアル・マイノリティ支援全国ネットワークの原ミナ汰・代表理事は、2012年から相談ホットラインを開設したが、1年間に約4万件の相談があるという。

自分が男性か女性かといった「性自認」や、男性が好きか、女性が好きかといった「性的指向」は周囲の人からは見えず、分からない。血液型を例に挙げ、「『不可視化』こそが生きづらさの最大要因です」と原代表理事は話した。

「LGBTはいない」という思い込みから悪口の対象にしやすいことを指摘し、「想像力は誰にもあるのだから、自分は気づいていないがそういう人がいるかもしれない、という思いやりが必要」と話した。

NPO法人共生社会をつくるセクシュアル・マイノリティ支援全国ネットワークの原ミナ汰・代表理事

当事者だけでなく、子供からLGBTであるとカミングアウトされた親のサポートも必要だ。受け入れるには平均3年から5年がかかり、心の葛藤は、認知症の親を介護する子供と同じプロセスをたどるという。

親から拒絶された子供は、ホームレスになったり、犯罪を犯したり、薬物やアルコール依存に陥りやすいという研究結果がでており、家族の対応がいかに大切か分かる。

シンポジウムには企業側からラッシュジャパンの安田雅彦人事総務部長が参加した。ラッシュジャパンはダイバーシティを企業理念に取り込んでおり、2015年のLGBT支援キャンペーンでは「GAY IS OK」と書かれた石けんを販売した。

社内でも、同性をパートナーと認めており、結婚祝い金や育児休暇、介護休暇など福利厚生の権利を異性間と同様に処遇している。採用時のエントリーシートに性別欄を設けていない。

ラッシュはダイバーシティの一環としてLGBT支援に積極的に取り組む

「ビジネス面から考えると、社会的な倫理は、時に企業倫理と相反することがあります。ですが、当社は社会倫理イコール企業倫理であり、ビジネスに不利であっても受け入れます」と安田部長は話した。

2016年12月1日に人事院が、人事院規則10−10(セクシュアル・ハラスメントの防止等)について一部改正を行い、国家公務員におけるセクシュアル・ハラスメントに「性的指向若しくは性自認に関する偏見に基づく言動」が含まれることを明らかにした。

来場者からは「制度があるほうが活動や支援しやすいが、実態にそぐわず、こぼれ落ちる人がいるのではないか」という意見があった。

「2016 TOKYO RAINBOW PRIDE」の司会を務めるなど、イベントで活躍するエスムラルダさんは、「当事者内でも賛否両論がありますが、社会を変えるには自分から身近な人へ伝える『心のアプローチ』が必要です。一度、形にしないと改良すべきことは見えないので、制度を良くするために、みんなが考えることが大切です」と話した。

ラッシュジャパンの安田部長は「当社のパートナー制度は2015年からありますが、今現在、利用した人はいません。ですが、制度があることが重要で、制度が使えることをオープンに示すことが大切なのです」と話した。

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松島 香織 (まつしま・かおり)

企業のCSRや広報・IR部署を経て、SDGs、働き方改革(ダイバーシティ)、地方創生などをテーマに取材中。