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自治体と企業が相次ぎ包括連携協定、課題解決目指す(下)

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JALでは高知県と包括連携協定を結び、機内誌で海外向けに高知県産品を紹介

企業と自治体の「包括連携協定」は、観光振興、地域産業振興といったビジネス寄りのテーマに取り組む事例も目立つ。一方で、企業と協定を結ぶ自治体も都道府県から市町村へと広がっている。包括連携協定のあり方は、企業では地域での社会貢献から事業を通じて地域の課題を解決していくCSVの形へと進展し、自治体もより具体的な成果を求める形へと変化しつつある。(箕輪 弥生)

自治体の総合戦略に基づき、観光客誘致や特産物拡販

包括連携協定では、各都道府県が設定した地方創生の総合戦略に基づき、企業の持つリソースをいかして、地域の特産物拡販や観光客誘致に結びつけようという施策が目立っている。

高知県は2016年8月に日本航空と、観光客誘致や移住促進、災害時の支援などの項目について相互協力を行う包括連携協定を結んだ。16年10月からはJAL機内誌や機内ビデオで高知県の観光地や見どころを紹介する特集を組んだ。さらに約20種類の県産食材を使った機内食を地元シェフプロデュースにより提供するなど高知の魅力を発信している。

浜田賀夫・高知県計画推進課チーフは「外国人観光客の誘致や中間山地の振興など、お互いに明確な目標をもって進めている」と意義を説明する。

同県は地方創生の推進に向けた施策「まち・ひと・しごと創生法」の施行に基づいて総合戦略を策定しており、企業との包括連携協定もこの総合戦略のもとで推進する。総合戦略の中でも中核になるのは、活力ある県外、海外にモノを売る「地産外商」を推し進めることだ。

この戦略に沿い、同県は16年11月にアマゾン・ジャパンとも包括連携協定を結んだ。地域産品を扱うアマゾン・ジャパンのオンライン店舗「Nipponストア」で高知県産品の販売強化や観光情報の発信を行う。

北海道も創生総合戦略で「食や観光をはじめとする力強い産業と雇用の場をつくる」方針を掲げる。この戦略に基づき、16年3月に吉本興行と包括連携協定を締結した。同社の芸人が道内の景勝地や特産物を紹介する番組を作成し、16年11月から国内外で配信し始めた。視聴中にアマゾンの通販サイトから番組で紹介している商品を購入できるなどの工夫を凝らす。自治体の総合戦略に沿った課題に対応する包括連携協定は、より具体的な形で目標も明確だ。

事業提案をめざす市町村の包括連携協定

包括連携協定は市町村にも広がりを見せる。市町村の場合、ゴールがより明確で具体的な項目による協定が多く、企業側も事業化を念頭においた提案が目立つ。

リクルートホールディングス(以下リクルート)は、事業化も見据えた積極的な連携を目指し、16年10月長野県塩尻市と包括連携協定を締結した。同社は、新規事業開発を行うプログラム「リクルートベンチャーズ」を開発し、16年4月からこのプログラムを活用した地域創生プロジェクトを立ち上げている。

一方、塩尻市は16年の2月から、地方創生をテーマに政策提案を行う研修プログラムを官民連携で実施してきた。そのプログラムで積極的な提案を行ったリクルートと出会い、包括連携協定に結びついた。今後は、リクルートからの事業提案について、塩尻市をフィールドとして実証実験を進めていくという。同社は「塩尻市で成功すれば他の地域でも展開していきたい」(高野梓・リクルート広報部)と意欲的だ。

包括連携協定の一環として、まず16年12月に塩尻市で「ローカルイノベーションプログラム」を開催した。これはリクルートが進める地域課題を解決する新規事業を短時間で実現する手法を用いたもので、市職員、学生、社会人など60名が参加した。初回は相互扶助型カーシェアリングなどいくつかのテーマ別に意見交換を行った。

塩尻市も「地方課題から事業化していくという企業のノウハウを学べるいい機会」(北野幸徳・塩尻市企画課主任)とオープンイノベーションの取り組みを歓迎する。外部のノウハウにより、市の職員や若手起業家の人材育成を図りたいという双方の思いも一致した。

自治体と企業との包括連携協定では多くの場合、企業側は「事業を通じて社会の課題を解決する」(リクルート高野広報担当)というCSVの形を具現化しつつある。

2016年に企業が地方自治体と結んだその他の主な「包括連携協定」(市町村)
企業名      自治体 締結時期 主な協定内容
ヤフー   福岡県福岡市 1月 創業支援やデジタル人材育成、防災対策など。
起業家向けの講演や相談会
ソフトバンク 静岡県藤枝市 5月 ICT・ロボットを中心にした教育の推進、
環境に貢献するまちづくりなど
佐川急便 岡山県岡山市 10月 災害時の物流等に係る連携の推進、
観光客の利便性向上等を通じた観光振興
イオン 埼玉県さいたま市 10月 健康増進、スポーツ振興、地域経済の振興、
地産地消の促進、ICT技術等を利用した地域活性化など
パナソニック、
静岡ガス
静岡県静岡市 11月 静岡型水素タウンの研究開発、実証実験
伊藤園 東京都渋谷区 11月 地区の活性化や、子どもや過程を取り巻く
社会問題の解決、環境・資源・エネルギー領域
楽天 岐阜県飛騨市 11月 電子マネー「楽天Edy」を活用した市のファン
クラブ制度の構築、ふるさと納税の推進
セブン-イレブン
・ジャパン
東京都西東京市 12月 地産地消、高齢者や子どもの見守り、
災害対策など10項目

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箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。JFEJ(日本環境ジャーナリストの会)会員。

http://gogreen.hippy.jp/