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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

ESG情報開示で、中長期の企業像描く

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右から、サンメッセ執行役員・田中信康氏、PRIグローバルネットワーク&アウトリーチジャパンヘッドの森澤充世氏、日興アセットマネジメント株式運用部長の中野次朗氏

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国連責任投資原則(PRI)に署名するなど、ESG(社会、環境、組織統治)投資が広がるなかで、企業には情報開示が求められている。博展(サステナブル・ブランド国際会議 東京 実行委員会)は12月6日、「IR×サステナビリティ」セミナーを開き、企業はどのように対応すべきか議論した。

■「協働エンゲージメント」で影響力を行使

PRIとは機関投資家が長期的に投資することを促進する枠組みで、投資の意思決定プロセスにESG課題を組み込む。PRIに署名した機関は世界で1600、運用額は62兆ドル(約7,077兆円)にも上る。

登壇者の一人、PRIグローバルネットワーク&アウトリーチジャパンヘッドの森澤充世氏は、「リーマンショックを経て、投資に責任を持ちたいという投資家が増えてきた。機関投資家は『受益者』の『長期的利益』を最大化する義務があり、その役割を果たすことで社会に貢献できると認識している」と説明する。

複数の機関投資家が集まり、投資対象の企業にESG課題について協働して働きかける「協働エンゲージメント」も広がってきた。

単独エンゲージメントよりも大きな影響力が行使されるが、企業にとって「類似した内容の対話の繰り返しが不要になり、パフォーマンス指標について投資家から広範なフィードバックが得られる」(森澤氏)という利点もある。

PRIの森澤氏。PRIでは、ESGトレーニングのためのPRIアカデミーも開いている

■「CSVファンド」で持続的な発展を

日興アセットマネジメント株式運用部長の中野次朗氏は、「東日本大震災が起こった2011年当時、業界ではインサイダーや不祥事が多い時期だった。行き過ぎた『資本市場主義』や『短期主義』によって、投資ではなく、投機的なマネーゲームになってしまっていた」と振り返る。

そこで考え方が変わり、同社に転職し、サステナブル投資に取り組むことになったという。その一つが、サステナブルな企業の成長にフォーカスして投資する「CSVファンド」だ。2013年に開始した。

CSVファンドの特徴は、1.新たな超長期の収益追求モデル、2.企業の本源的価値にフォーカス、3.将来の収益を生む無形価値を評価、4.内部のアナリストが評価――だ。

中野氏は、ESG投資が広がるなかで、「投資家はリターンが必要。企業はESG情報の開示を進めるとともに、企業価値向上との相関を説明する必要がある」と話す。

中野氏は「高いブランドは高い株価につながる」と力を込める

森澤氏によると、世界の投資家に対するアンケート調査で、投資家から「企業のESG情報が不足している」といった意見が出ているという。「長く続く企業がESG投資の対象。日本の投資家もグローバルな視点を持ち、変わってきている」とする。

今後のレポーティングのあり方について、サンメッセ執行役員・田中信康氏は、「『経営戦略と価値創造モデルを分かりやすく表現すること』『ESG情報を可視化する工夫』『長期視点とストーリーテリング』が必要だ」と話す。

中野氏も「アニュアルレポート+CSRではない『価値創造』レポートが増えてきている。ESG情報をからめながら、これから先の30年、どういう企業になっていくかを想像させるような、読み物として面白い報告をしてほしい」と続けた。

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吉田 広子 (よしだ・ひろこ)

株式会社オルタナ オルタナ編集部 副編集長。大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月株式会社オルタナ入社。2011年副編集長に就任。