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オリパラ準備に「持続可能性」を―有識者が提言

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提言を聞いてコメントする小池百合子東京都知事(12月4日、東京・六本木)

12月4日、都内で2020年オリンピック・パラリンピック東京大会の環境対策の課題について、大学教授ら5人が提言した。開催立候補時に策定した「環境ガイドライン」を放置し、大会準備に「持続可能性」が欠けている点など指摘した。説明会には小池百合子東京都知事が出席し、持続可能性は計画書を貫く重要事項と認識しているとし、「東京都としてやるべきことをやるだけ。それが、日本全体の取り組みの底上げになる」とコメントした。

元東京都環境局長の大野輝之・自然エネルギー財団常務理事は、「環境ガイドライン」は2013年に策定されたもので経年変化するのは当然だが、コアである「持続可能性」が揺らいでいる、と危機感を表した。人材を生かし、知事のイニシアティブで、情報の透明性、大会施設の省エネルギー、自然エネルギーの活用、違法伐採木材について取り組むべきとした。

三菱総合研究所の小宮山宏理事長は、不要になった建材や電化製品から出る資源を「都市鉱山」と名付け、都市鉱山からメダルを作ることを提案した。ほか、福島の再生エネルギーの活用、自然共生、クラウドファンディングなど、国民が自由に参加できるシステム作りを挙げた。最後にSDGsやパリ協定に応えるのが東京大会の使命だとした。

ブリーフィングを主催した自然エネルギー財団の大野輝之常務理事

東京都の環境審議会会長である早稲田大学の田辺新一教授は、オリパラの施設について、省エネ適合表示(BELS)やゼロ・エネルギービル(ZEB)の取得、「東京都環境基本計画2016」に明記している「2030年までに2000年比で30%温室効果ガスを削減、30%再生可能エネルギー使用」等をオリパラ関連施設で先取実現することを提案した。これらを実現することでスマートエネルギー都市が実現するとした。

元環境事務次官で慶應義塾大学の小林光特任教授は、発注方法について、組織委員会が契約主体となって行う取り組みの動きが鈍いこと、スポンサー企業との関係性が不透明であることを指摘した。入札やプロポーザル以外の契約方法を検討し、資金調達にグリーンボンド活用を提案した。最後に「資金が無いから出来なかったということは許されない」と厳しい言葉を残した。

慶應義塾大学大学院の蟹江憲史教授は、オリパラ競技大会影響調査(OGI)方法について提言した。OGIとは、大会を客観的かつ科学的分析を実施したいというIOCの要望による調査で、「独立性・中立性を保つこと」、「正確に測定すること」が重要だとした。そのためには調査組織を独立させ、資金面でも独立させること、サステナブル委員会がモニターチェックをすることを挙げた。またSDGsを活用し東京大会を測定することも重要だとした。

5人の提言を聞いた小池都知事は、開催時期の7、8月を想定し、ヒートアイランド現象について言及した。熱くなった道路を冷やすためコストがかかるが、結局ランニングコストは下がると考えている、と話した。

パリ協定に出遅れ、ハード面の整備はラストチャンスだと考えているという。福島の再生エネ活用はもちろん、水素燃料を使用したバスを運行させ、大会のシンボルにしたいと話した。

地震に対応した「セーフシティ」、多様な人が集まる「ダイバーシティ」、環境に配慮したアジアのハブとなる金融都市「スマートシティ」の3つのシティを都の取り組み目標として掲げた。世界銀行の基準に則った債権(グリーンボンド)発行も考えているという。最後に「環境大臣としてのキャリアを生かしたい」と力を込めた。

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松島 香織 (まつしま・かおり)

企業のCSRや広報・IR部署を経て、SDGs、働き方改革(ダイバーシティ)、地方創生などをテーマに取材中。