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SDGsを経営戦略とIRに使いこなす―デロイトがセミナー開催

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博報堂DYホールディングスの川廷 昌弘CSRグループ推進担当部長(左)

「持続可能な開発目標(SDGs)」が今年1月、正式に発効した。国連に加盟するすべての国は、2030年までに、貧困や飢餓、エネルギー、気候変動など、持続可能な開発のための諸目標を達成する努力が求められている。

SDGsに法的な拘束力はないが、政府だけでなく、民間セクター、市民社会などすべてのステークホルダーが取り組むべき目標であり、特に企業には事業と一体になった能動的な取り組みが期待されている。

9月28日、デロイトトーマツコンサルティングは「持続可能な開発目標(SDGs)を経営戦略とIRに使いこなす―投資家との対話を通じた持続的成長へ―」を都内で開催した。ちょうど1年前のこの日に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国連責任投資原則(PRI)に署名している。

デロイトトーマツコンサルティングの田瀬和夫 執行役員CSR・SDGs推進室室長

田瀬和夫 執行役員CSR・SDGs推進室室長は、「SDGsを部署名にしたのは日本ではデロイトが初めて」と挨拶し、「持続可能な開発目標(SDGs)をビジネスに使いこなす」と題して講演した。

SDGsとはビジネスの「攻め」であり「守り」であると同時に「土台」である。ビジネスは経済や市場、資源が安定してこそ可能であるが、資源の枯渇や格差を背景にした政情不安によって喪失した場合、成り立たない。SDGsによってCO2排出量削減や人権への対応など圧力や義務が増すが、再エネルギーやBOP市場の拡大、社会課題起点の市場創出が見込まれる「ビジネス機会」である。

SDGsへの有効なアプローチとして「アウトサイドイン」を挙げた。アウトサイドインとは世界的・社会的ニーズから事業を考えることだが、対症療法だけではアウトサイドインとは言えない。「逆算(バックキャスティング)」「イノベーション」「(常識にするための)ルール形成」の組み合わせが必要だ。

社内でのSDGsの推進方法として、話ができる環境を作ることが有効だ。CSR部署とトップとの意思疎通やIR部門との定期的な意見交換、対話はすぐに始めるべき、と話した。

博報堂DYホールディングスの川廷 昌弘CSRグループ推進担当部長は「SDGsを使って企業と生活者を繋げる」と題し、SDGsは民間の声を反映したソーシャルアクションであり、企業にとってはリスクでなくオポチュニティーである、と話した。同社のCSRレポートは各取り組みにSDGsの17項目を当てはめ自分事化している。さらに対照表を作成し、対応をチェックしているという。

国連広報センターの日本語版SDGsの表は、博報堂がプロボノで制作したものだ。具体的な行動や対策方法は、子どもにも伝わる言葉で表現した。

目標12「つくる責任 つかう責任」は全てのステークホルダーが関わっている。企業は生活者と同じ方向を見ていなければならない。具体的なアクションを取ることがSDGsを達成することだ、と締めくくった。

りそな銀行の松原稔 信託財産運用部企画・モニタリング グループリーダー(左)とセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの大野容子氏(右)

りそな銀行の松原 稔 信託財産運用部企画・モニタリング グループリーダーは、「SDGsを使って投資家との関係を強化する」と企業への投資面からSDGsについて講演し、SDGsをESG投資のひとつの指標として歓迎していると話した。

組織の投資目的にかなうSDGs目標として、8「働きがいも経済成長も」や9「産業と技術革新の基礎をつくろう」などを挙げた。現在の投資トレンドはESG投資にステージが移っており、企業が投資家にESGの重要性を気づかせてほしい、と力を込めた。そのためには、効果的な企業の発信・情報伝達の方法が重要になると付け足した。

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの大野容子氏は、「SDGsを使ってNGOの期待を知り、協業を追求する」と題し、NGOの立場から講演した。NGOは「社会的に公正かどうか」が活動の基準だという。またSDGsは企業への期待が大きく、本業にSDGsを組み込んで経営トップにコミットメントを期待している、と話した。

NGOは企業に対するネガティブ・キャンペーンで注目されるが、企業と共に解決を図ろうとしている姿勢へ変わってきている。NGOは社会ニーズをよく理解しており、企業の実効性を高めるパートナーであると強調した。

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松島 香織 (まつしま・かおり)

企業のCSRや広報・IR部署を経て、SDGs、働き方改革(ダイバーシティ)、地方創生などをテーマに取材中。