サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイトです。ページの先頭です。

サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

コンサルが相次ぎ「プロボノ」強化――「やる気」も向上

  • Twitter
  • Facebook
DTCの説明会の様子。参加者から活発な意見・質問が相次いだ。

デロイト トーマツ コンサルティング(DTC)や三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)など、日本のコンサルティング各社が、相次いで「プロボノ」事業を強化している。単なるボランティアではなく、社員の専門的なスキルを活かしてNGO/NPOやソーシャル・ビジネスを支援する。自社の社会的評価を高めるだけでなく、社員のモチベーションを上げることも狙いだ。(オルタナ編集部・吉田広子、松島香織)

デロイトが本格的プロボノ制度

デロイト トーマツ コンサルティング(DTC)が本格的な「プロボノ」制度を立ち上げる。6月に社会的課題の解決に取り組む団体に無償コンサルティングを提供するプログラムの説明会を開き、NPO/NGOや社会起業家など約20人が参加した。プログラムはDTC社員が、通常業務と同質のコンサルティング業務を行うなど、本格的な取り組みなのが特徴だ。

DTCが取り組む「ソーシャル・イノベーション・パイオニア」プログラムは、支援対象を国連「持続可能な開発目標(SDGs)」と関連する2つをテーマとしている。「サプライチェーン全体を視野に入れた持続可能でエシカルな生産・消費の実現」と「女性、若者、外国人を含む多様な人々の就業・経済的自立支援」だ。

日本が世界から立ち遅れていると思われるテーマをあえて選び、「NGO/NPOや社会企業家が取り組むことで、消費者や企業を巻き込んだ、大きな社会課題解決のムーブメントを起こしたい」とコーポレート・アフェアーズ担当の金山亮執行役員は話した。

プログラムの公募は6月末に締め切られ、第一次選考、第二次選考、最終選考を経て「パイオニア」と呼ばれる対象団体と契約する。一団体につき期間は3―4カ月で、専属チームが無償でコンサルティングやその他のサポートを行う。

特別講演にはサッカー元日本代表監督で、同社特任上級顧問、四国リーグFC今治オーナーを務める岡田武史氏が登場し、「利益だけを考えるのではなく、理念を掲げていると人が協力してくれるようになる。目に見えない資本こそが大事」「デロイトの支援で皆さんが社会を変える力になることを期待している」などと話した。

特別なスキルは必要ない

MURCは7月1日、「ソーシャルビジネス支援プログラム2016」の支援先を発表した。同プログラムは2013年に開始し、支援先に対し資金的支援のほか、プロボノを7月から6カ月間にわたり実施する。

今年は一般社団法人サステナビリティ・エンパワーメント(千葉県柏市)と特定非営利活動法人Chance For All(東京都墨田区)の共同プログラム、特定非営利活動法人スマイルスタイル (大阪市)、特定非営利活動法人人と動物の共生センター(岐阜市)の3件が選ばれた。

支援先は一般から応募を募り、書類選考を経てプレゼンテーション選考会を実施し決定。選考会では、MURCの役職員が「支援票」と「共感票」を投票した。

「支援票」とは、プロボノ支援を希望する役職員による投票で、5票以上を獲得した上位3団体が支援先として選ばれる。投票者による「プロボノチーム」が組成されるほか、資金的支援として1団体に50万円が授与される。すべての役職員による「共感票」は、プレゼン大会に参加した全6団体を対象とし、投票数に応じて総額100万円が分配される仕組みだ。

MURC藤井秀延社長は2013年の立ち上げ当初、「『当社らしい社会貢献』とは何かを考えた。当社の使命は、課題に対してソリューションを提供すること。そこで、金銭的な支援だけでなく、プロボノという形で支援することに決まった」と語った。

これまでプロボノに参加した役職員からは、「普段組むことのない他部署のメンバーと一緒に仕事をし、社内連携が進んだ」「社内のネットワークがあれば、何でもできるのではないか、という自社の可能性を感じた」といった声が出ている。

プロボノは、スキルを生かした支援だが、特別な技術は必ずしも必要ない。MURC人事部主任の中野静子さんは2015年、クリエイティブチーム巻組(宮城県石巻市)を支援した。

NPOらはどうしても目の前の仕事に追われ、事務処理が後回しになったり、非効率な作業をしてしまったりすることが多い。中野さんは「私はコンサルタントではなく、事務が専門。それでもNPOに役立つことが分かった」と話した。

1日からでも始められる

こうした企業のプロボノを推進しているのが特定非営利活動法人サービスグラント(東京・渋谷)だ。同団体は、プロジェクトマネジメント、調査、マーケティング、デザイン、ウェブ制作といったプロフェッショナルスキルを持つ社会人に対し、プロボノワーカーへの登録を呼びかけている。同時に、支援を必要とするNPO・地域活動団体などを募集し、マッチングしている。

現在登録者は約3000人、進行中のプログラムは23件ある。企業とNPOをマッチングするほか、「プロボノ1DAYチャレンジ」といった気軽に参加できるプログラムも各地で展開している。

  • Twitter
  • Facebook