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CSR/CSV 経営ポイント

企業のCSRリスク、次はプラスチック

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SB-J コラムニスト・森 摂

企業がCSRに取り組む大きな理由の一つは、通常では見えにくい社会的リスクが見えてくることです。通常のビジネスでは気づかないことが、NGO/NPOと対話の場を持つなど、社会との接点を持つことで見えてくることがあるのです。

その代表格はパーム油生産による児童労働や森林破壊の問題であり、ほかにもLGBTイシューによる企業リスク、バングラデシュなど発展途上国への縫製委託で起きる人権リスクなど枚挙に暇がありません。

いま、グローバル規模で関心が高まっているのが「プラスチック」です。ストロー、レジ袋、PETボトルなどリサイクルされないプラスチックゴミが海を漂っている間に砕けて細かくなった5mm以下の「マイクロプラスチック」を海鳥や魚が食べ、海洋生態系に多大な影響が出ています。

直径1mm以下の超微細「プラスチックマイクロビーズ」は下水処理施設のフィルターをくぐり抜けてしまい、海への流出を防ぐのが困難なのです。(「花王が脱マイクロビーズ!海がプラスチックでいっぱいになる前に」=グリーンピース・ジャパンサイト

その中で、英国マクドナルドは3月28日、国内に1300店舗でプラスチックのストローの提供を止め、試験的に紙のストローを使用すると発表しました。
McDonald's Is the Latest Restaurant to Ban Plastic Straws(英文記事)

一方、米ワシントン州シアトル市は2018年7月から、プラスチック製ストローやフォーク、スプーンの提供を禁止することになりました。レジ袋については小売業に対し、あらゆるプラスチックバッグ(日本でいうビニール袋)の提供を禁止。大型の紙袋についても5セントの課金を求めています。
(シアトル州政府ホームページ=英文)

プラスチックを巡る動きは、この10年、次第にうねりが高まっています。

ケニアで世界一厳しいポリ袋禁止法が施行、最大4年の禁錮刑(2017年7月)
台湾、2018年からレジ袋の提供禁止範囲拡大へ
1日5億本、「ストローいりません」が米国で拡大中
米カリフォルニア州でレジ袋禁止法が成立、製造業界は反発
大都市では初。サンフランシスコがペットボトル飲料水販売を禁止

■「アウトサイド・イン」のチャンスに

さて、日本では今後、どのような動きになるでしょうか。特にプラスチック製造・販売関連の企業にとっては、この流れは本業にとって大きな「逆風」に映るかもしれません。

しかし、企業にとっては、こうした社会的課題を新たな製品やサービスなどビジネスで解決できるチャンスでもあるのです。SDGsのビジネステキスト的な存在である「SDGsコンパス」では、こうした社会課題を起点にしたビジネス創出を「アウトサイド・イン」として奨励しています。

例えば、ストローの原料を石油由来以外の原料のものや、リサイクル可能なものに変える。ストローを完全回収の上、ペレットに加工してサーマルリサイクル(燃焼)する。あるいは、ストローを使わなくても心地よくドリンクが飲める新たなツールを開発するーーなどが考えられます。

■2020年の東京オリンピックで批判される可能性も

日本では急激な環境規制を国民は望んでいないと高を括っている方もおられるでしょう。しかし、2020年の東京オリンピックで来日した外国人が日本のプラスチック製品やペットボトルを見て、国際的な批判につながる可能性は否定できません。

また、日本企業がグローバル展開をしているのであれば、あるいはその下請け企業であるのであれば、海外ビジネスにおいてプラスチックをCSRリスクと認識できないことは、大きなビジネス上のリスクを抱えることになります。

企業がCSRに取り組むことで、こうした事前を早期に察知し、早めに対応し、自社ビジネスのリスクを低減できるチャンスが生まれるのです。こうしたCSRリスクを「知っていること」と「知らないこと」は雲泥の差になります。あなたの会社は大丈夫でしょうか。

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森 摂
森 摂 (もり・せつ)

株式会社オルタナ代表取締役社長・編集長。東京外国語大学スペイン語学科を卒業後、日本経済新聞社入社。1998年-2001年ロサンゼルス支局長。2006年9月、株式会社オルタナを設立、現在に至る。主な著書に『未来に選ばれる会社-CSRから始まるソーシャル・ブランディング』(学芸出版社、2015年)、『ブランドのDNA』(日経ビジネス、片平秀貴・元東京大学教授と共著、2005年)など。訳書に、パタゴニア創業者イヴォン・シュイナードの経営論「社員をサーフィンに行かせよう」(東洋経済新報社、2007年)がある。一般社団法人CSR経営者フォーラム代表理事。特定非営利活動法人在外ジャーナリスト協会理事長。

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