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CSRブランディング最前線

第21回:箱根駅伝に学ぶ!企業ブランディングの真髄

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SB-J コラムニスト・細田 悦弘

~ ビジネスと社会課題解決を両立させ、‘らしさ’で競争優位を創り出す!待望の戦略メソッド ~

正月の風物詩ともいえる箱根駅伝。駅伝は、「継走」とも称されます。選手が母校の「襷(たすき)」を次の走者に引き継いでいくことはもちろんですが、先人たちが築いてきた「伝統」を今の時代へつないでいくことも込められているのではないでしょうか。ここに、「企業ブランディング」の真髄を垣間見ることができます。

選手はじめ関係者に感謝し、時代にふさわしく期待に応える

94回目となる今大会の優勝校である青山学院大学は、史上6校目となる総合4連覇を成し遂げました。ゴール後の優勝インタビューで監督がこう熱く語りました(概要)---まずは、私を信じて、青山学院を信じて、入学・入部してくれた学生たちに感謝したいです。また学生たちを快く送り出してくれたご父母、高校の指導者、関係各位のお陰です。大学も150周年に向けてのビジョンを掲げました。そして部も100周年です。新しい青山学院のスタイルが、今後の大学スポーツの標準にしていきたいです。「ベンチャーグリーン」という名のもとに頑張らせていただきました。今後の青山学院にも、ぜひ期待してください。

このメッセージを今日の「企業ブランディング」の文脈から読み解くと、下記のようなキー概念が読み取れます。

◎ステークホルダーへの感謝、そして信頼関係へ
企業ブランディングは、消費者視点だけでなく、企業に関わる人たちすべてを広範囲に捉えたステークホルダーと企業とが、共に創り上げていくことに焦点が当てられます。企業は、ステークホルダーとともに、ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源をやりとりして生きていく存在です。そして、それぞれのステークホルダーが、企業との関わりにおいて、満足している限りにおいて企業の存続が許されることになります。したがって、ステークホルダーに対して「感謝」の心を持ち、誠実な対応をして、「信頼」を獲得していくことが、今日の企業ブランディングの礎です。

好走した選手たちは、一様に「沿道の声援のおかげ」と爽やかに言います。この「沿道の声援」こそが、企業にとっては、社会からの支持という「見えない資産」であり、ビジネスを営む上でのアドバンテージとなります。

監督に、若者が「受験生です!」とうれしそうに駆け寄る姿は、今年から「18歳人口」が減少に転じ、大学淘汰が本格化する「2018年問題」が取り沙汰されている中、大学ブランディングに寄与しています。企業からすれば、売り手市場において、高めておきたい「採用ブランド」そのものといえます。

◎建学の精神と時代への適応
青山学院の「150周年ビジョン」によれば、建学の精神に基づき「人と社会のために何ができるか」を実践し続けており、今回のビジョンにおいて「サーバント・リーダー」というコンセプトを打ち出しています。いま世界が必要としているのは、自分の使命を見出して進んで人と社会とに仕え、その生き方が導きとなる人、それがサーバント・リーダーということです。

自らの存在意義である建学(創立)の精神を、今の時代にふさわしく実現する。まさに、「CSRブランディング」メソッドが希求する、「時代に選ばれ、次代にも輝き続ける」ための戦略です。

◎「らしさ」で期待に応える
企業ブランディングは、企業が社会に向けて表明した「らしさ(ブランド・アイデンティティ)」に期待を寄せるステークホルダーとの「約束」を一貫して守り続けることです。よって、顧客や社会との間に長期的に揺るぎない絆を構築していくことを目指します。

いつまでもチャレンジ精神を失わないという意味を込めた「ベンチャーグリーン」というチームのスローガンとともに、「伝統とイノベーション」を高次に調和させる姿勢に、ますます期待が集まることでしょう。

「襷(たすき)」は、シンボルマーク

昨年末、JR東日本・山手線の中吊り広告が話題になりました。箱根駅伝出場校の21本のタスキが車両中央の通路部分に、色鮮やかに掲出されました。日本テレビによる、1編成まるごと「箱根駅伝」の番組PRをした「ADトレイン」という手法です。

素材は本物のタスキとは異なりますが、色・デザインは同一。大学名を揃えて掲出しているため、裏から見ると、異なる色の布が21本下がっているだけでしたが、表に回れば「これってタスキだ!」と感激でした。駅伝ファンにとっては、裏からでも「あそこだ!」と識別されたと思います。「色」や「デザイン」を見ただけではっきりと識別され、その「大学らしさ」が伝わってきたのではないでしょうか。ユニフォームやタスキの色は、実に多彩で個性あふれます。フレッシュグリーン、臙脂(えんじ)、紫紺、鉄紺、茄子紺、ファイアーレッド、プルシアンブルー、プラウドブルー等々。

これこそが、企業にとっては、シンボルとなる「コーポレート・カラー」と「ロゴマーク」です。らしさ(ブランド・アイデンティティ)は、それに期待を寄せるステークホルダーとの「約束」です。そして、その旗印となるのが、「ロゴマーク」です。ロゴマークの「色」や「形」、そのマネジメントは企業ブランディングの基本です。

企業においては、コーポレート・カラーとして、「ソニー・ブルー」、「キヤノン・レッド」などのこだわりがありますし、「赤」と「青」の飛行機会社は瞬時に識別され、信頼や愛着が醸し出されているのではないでしょうか。

一人ひとりが、ブランドの体現者

今回の優勝校は、選手の層も厚かったのかもしれませんが、母校ブランドに対する選手一人ひとりの姿勢や思いが際立ったようにも見受けられました。ブランドは、大学も企業も、一人ひとりが組織の代表として、あらゆるステークホルダーとの接点で体現します。「一人ひとりが、自社(自校)ブランド」という「誇りと自覚」をもつことが、インターナルブランディングの要諦です。


☆編集部から参考情報です。

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細田 悦弘
細田 悦弘  (ほそだ・えつひろ)

公益社団法人 日本マーケティング協会 「サステナブル・ブランディング講座」 講師
一般社団法人日本能率協会 主任講師

1982年 中央大学法学部卒業後、キヤノン販売(現キヤノンマーケティングジャパン) 入社。営業からマーケティング部門を経て、宣伝部及びブランドマネジメントを担当後、CSR推進部長を経験。現在は、企業や教育・研修機関等での講演・講義と共に、企業ブランディングやサステナビリティ分野のコンサルティングに携わる。ブランドやサステナビリティに関する社内啓発活動や社内外でのセミナー講師の実績豊富。 聴き手の心に響く、楽しく奥深い「細田語録」を持ち味とし、理論や実践手法のわかりやすい解説・指導法に定評がある。

Sustainable Brands Japan(SB-J) コラムニスト、経営品質協議会認定セルフアセッサー、一般社団法人日本能率協会「新しい経営のあり方研究会」メンバー、土木学会「土木広報大賞」 選定委員。社内外のブランディング・CSR・サステナビリティのセミナー講師の実績多数。

◎専門分野:サステナビリティ、ブランディング、コミュニケーション、メディア史

◎著書 等: 「選ばれ続ける会社とは―サステナビリティ時代の企業ブランディング」(産業編集センター刊)、「企業ブランディングを実現するCSR」(産業編集センター刊)共著、公益社団法人日本監査役協会「月刊監査役」(2023年8月号) / 東洋経済・臨時増刊「CSR特集」(2008.2.20号)、一般社団法人日本能率協会「JMAマネジメント」(2013.10月号) / (2021.4月号)、環境会議「CSRコミュニケーション」(2010年秋号)、東洋経済・就職情報誌「GOTO」(2010年度版)、日経ブランディング(2006年12月号) 、 一般社団法人企業研究会「Business Research」(2019年7/8月号)、ウェブサイト「Sustainable Brands Japan」:連載コラム(2016.6~)など。

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