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CSRブランディング最前線

第18回:社員の心に灯をともす!インターナルブランディング

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SB-J コラムニスト・細田 悦弘

~ ビジネスと社会課題解決を両立させ、‘らしさ’で競争優位を創り出す!待望の戦略メソッド ~

CSRやブランド推進担当にとってのお悩みテーマは、圧倒的に「社内浸透」のようです。今回は、これまで私がブランド・CSR担当として、10年以上にわたり、社員向けに数百回の生講義をしてきた実体験を踏まえ、社内浸透の黄金律ともいえる「インターナルブランディング」の世界へいざないます。

「インターナルブランディング(Internal Branding)」とは

「インターナルブランディング」とは、社員に対して「CSRマインド」や「ブランド意識」を理解・浸透させ、誇りと自覚のもと自発的・主体的な行動に反映させていく「戦略的な社内浸透術」です。ブランディングといえば、通常、いかに顧客など社外(エクスターナル)に対してブランドを構築するかに重点が置かれます。しかし近年、意識の高い企業は社内(インターナル)に対するブランディングに取り組みはじめています。企業内のすべて部署の社員が自社ブランドを意識して業務にあたれば、結果として社外に対するブランド価値が向上するという考え方です。

社員は、社会(ステークホルダー)との「接点」を担う企業の窓であり、CSRの担い手・ブランドの体現者です。その社内スタッフに対して、「ブランド・アイデンティティ(自社らしさ)」や「CSRマインド」を理解してもらい、共感を獲得する。よって、社員が自覚と誇りのもとに、自発的・主体的に「自社ブランドが目指す姿」を日々のビヘイビアに反映させていく活動が「インターナルブランディング」です。この活動は、社員に対する意識変革を促すとともに、全社的な組織風土の強化につながります。

本コラムの主題であり、私が提唱する「CSRブランディング」においては、まずは社内スタッフに、「ブランド」が大切であるメカニズムを理解してもらい、その上で、ブランドイメージと「CSR」が密接に関係することを認識してもらいます。それが結果的に、社外(エクスターナル)へのブランディングに結びつき、社員の求心力やモチベーションを高めます。

「CSRマインド」は、CSR経営の『OS』

社内スタッフのブランド意識を醸成するにあたっては、これまでの事業競争力の側面だけでなく、今日のようなCSRが重視される時代の価値観を織り込むことが必須となります。昨今、ステークホルダーが企業を選択する基準となる「ブランド連想」の代表的なものは、製品・サービス等の卓越性はもちろんですが、「安心と安全」「信頼性」「選ぶ人・使う人へのやさしさ」「環境へのやさしさ」「購入後も永く使える面倒見の良さ」などが挙げられます。

このことは、企業への「期待」の中に、時代の価値観である「サステナビリティ要素」が色濃く反映していることを物語っており、これをキャッチアップし、どれだけ事業活動に取り込めるかが、時代が求める付加価値として、競争優位の決め手になってきています。さらには、それは製品・サービスや提供プロセスだけでなく、事業領域全般における社員一人ひとりのCSR活動をも包含します。したがって、CSR重視時代における社内のブランド意識のプラットフォームとなるのが、「CSRマインド」です。

「CSRマインド」とは、CSR的モノの見方・考え方です。従業員一人ひとりが、企業理念やミッション・ビジョン、自社らしさをしっかりと認識した上で、CSRを本質的・体系的に理解し、誇りと自覚をもって、その担い手として主体的・自発的に取り組む姿勢であり、組織風土の要となります。

法律を学ぶ際に、「リーガルマインド」を養うことは大変意義深いことです。これにより、数多ある法律や条文に翻弄されることなく、物事の正義や公平の感覚を身につけ、その法律が実現しようとしている価値に基づいて筋道を立てて考え、妥当な結論を導くことができるようになります。

同様に、ともするとCSRを個々のテーマ毎に無味乾燥に機械的に取り組み、やらされ感や横並び感が生じてしまいがちですが、社員一人ひとりが「CSRマインド」を備えることによって、その背景にある本質的な意味や意義を理解し、自主的・主体的に取り組む原動力となります。

CSR経営において、環境や人権、情報セキュリティ、社会貢献などの各分野での個別テーマを、パソコンの『アプリケーション」としますと、「CSRマインド」は、『OS(Operating System)』にあたります。具体的には、コンプライアンスや情報セキュリティ等において、ルールを遵守するだけではなく、「何か変だな」とか、「これで大丈夫だろうか」「これは、やめておいた方がいい」といった意識や、社会貢献分野では、「こうしたら、どうだろう」「これは、やった方がいいよね」といった自主性・主体性を醸成します。

社員の心に灯をともしましょう!

企業価値やコーポレートブランド向上には、着眼大局・着手小局、つまり、しっかりとしたグランドデザインのもと、地道で本気の取り組みが必要です。そのためには、中期経営計画等におけるトップの意志入れが不可欠です。そのもとに、インターナルブランディングを粛々と展開します。

「CSR」に関する知識・意識・気づきが社員の価値判断に組み込まれることにより、時代にふさわしいブランド意識の質を高めます。「ブランド」が大切であるというメカニズムを理解してもらい、その上で、ブランドイメージとCSRが密接に関係することへの気づきを促します。「CSRマインド」が備わったブランド意識を全社の組織風土にインストールしていきます。それにより、社員のロイヤルティやモチベーションに働きかけます。
CSR発想のインターナルブランディングで、社員の心に灯をともしましょう!

☆編集部から参考情報です。細田さんのビジネススクールでの講座が開催されます。「インターナルブランディング」の講義もあります。ご関心のある方は、以下より詳細をご覧下さい。

https://academy.cbs.chuo-u.ac.jp/event_detail_info/?eov_id=10bf30ecde66adf62e851aa891aab8a2

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細田 悦弘
細田 悦弘  (ほそだ・えつひろ)

公益社団法人 日本マーケティング協会 「サステナブル・ブランディング講座」 講師
一般社団法人日本能率協会 主任講師

1982年 中央大学法学部卒業後、キヤノン販売(現キヤノンマーケティングジャパン) 入社。営業からマーケティング部門を経て、宣伝部及びブランドマネジメントを担当後、CSR推進部長を経験。現在は、企業や教育・研修機関等での講演・講義と共に、企業ブランディングやサステナビリティ分野のコンサルティングに携わる。ブランドやサステナビリティに関する社内啓発活動や社内外でのセミナー講師の実績豊富。 聴き手の心に響く、楽しく奥深い「細田語録」を持ち味とし、理論や実践手法のわかりやすい解説・指導法に定評がある。

Sustainable Brands Japan(SB-J) コラムニスト、経営品質協議会認定セルフアセッサー、一般社団法人日本能率協会「新しい経営のあり方研究会」メンバー、土木学会「土木広報大賞」 選定委員。社内外のブランディング・CSR・サステナビリティのセミナー講師の実績多数。

◎専門分野:サステナビリティ、ブランディング、コミュニケーション、メディア史

◎著書 等: 「選ばれ続ける会社とは―サステナビリティ時代の企業ブランディング」(産業編集センター刊)、「企業ブランディングを実現するCSR」(産業編集センター刊)共著、公益社団法人日本監査役協会「月刊監査役」(2023年8月号) / 東洋経済・臨時増刊「CSR特集」(2008.2.20号)、一般社団法人日本能率協会「JMAマネジメント」(2013.10月号) / (2021.4月号)、環境会議「CSRコミュニケーション」(2010年秋号)、東洋経済・就職情報誌「GOTO」(2010年度版)、日経ブランディング(2006年12月号) 、 一般社団法人企業研究会「Business Research」(2019年7/8月号)、ウェブサイト「Sustainable Brands Japan」:連載コラム(2016.6~)など。

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