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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)
CSRブランディング最前線

第17回:経営戦略としてのCSR/CSV/ESG

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SB-J コラムニスト・細田 悦弘

~ ビジネスと社会課題解決を両立させ、「らしさ」で競争優位を創り出す!待望の戦略メソッド ~


企業の経営企画・CSR・IR部門の方から、こんな声をよく聞きます。中期経営計画に、「CSR/CSV/ESG」を取り入れたい…。でも、経営戦略とのつながりがピンとこない。自分が腹落ちしていないので、経営層にうまく説明できない。

持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために

このフレーズは、金融庁と東証による「コーポレートガバナンス・コード」のサブタイトルです。この実現のために、東証一部上場企業2024社(2017年9月1日現在)をはじめ、全上場企業3560社が時代にふさわしい「新しい経営のあり方」を模索しています。持続的・中長期の視点は、まさしく「中期経営計画」策定に必須です。そのプレミアムな切り口が、「CSR/CSV/ESG」なのです。この3種のアルファベット3文字は、上場・非上場、規模の大小・業態に関わらず、持続的な成長・中長期の企業価値向上のためには、きわめて重要な役割を果たします。

「CSR/CSV」の取り組み姿勢が、「ESG」で評価される

国内外の環境がこれだけ変化した今、企業経営において、目まぐるしく変化する社会のニーズや価値観を捉える感性の鋭さを持ち、「社会対応力」を備えることが不可欠です。そこで近年、「CSR/CSV」を経営戦略に組入れ、磐石な経営基盤を確保しつつ、時代にふさわしい新しい価値を創造し、企業と社会の相乗発展に結びつけていく経営に関心が高まっています。そして投資家・金融機関は、こうした経営姿勢に対し、「ESG(Environment/Social/Governance)」という新しいモノサシで企業の評価を始めています。

従来は、企業の発展ありきで突っ走り、地球や社会に害を与えたり、迷惑をかけてきた傾向がありました。企業は、「社会」や「地球環境」を前提に存在しています。健全な社会や地球なくして、健全な企業活動を実現することができないのは自明です。

企業がこの世に存在する限り、必ず社会や地球に影響を与えます。影響には、ネガティブもあれば、ポジティブもあります。社会や地球への「ネガティブな影響」は抑制することが、現代社会の要請です。それが結果的に企業のためにもなります。さらには、「ポジティブな影響」を醸し出せれば、社会性と経済性が両立できます。「企業の健全性」と「地球や社会の健全性」との相互依存性を認識することが、企業と社会の相乗発展、すなわちサステナビリティへの道です。

中長期のリターンを求める投資家は、「危ない会社」に投資するわけがありません。「危なくない会社」とは、「CSR/CSV/ESG」の本旨を深く理解し、それを経営戦略(中期経営計画等)の中核に位置付けている会社、という見方が定着しつつあります。

企業を評価する、投資家の目線

投資家は企業を選別するに際し、「これからこの企業に投資をして、望む結果は得られるのか」を吟味します。この関心事に対して、企業側に求められる情報開示のポイントは主に3つが挙げられます。①これまで、ちゃんとやってきたか(過去の実績)②きちんとやるような仕組みを持っているのか(企業の仕組み、ビジネスモデル等)③これから何をしようとしているのか(将来の仮説・ストーリー)。この中で、③が一番大切といわれています。ここに、「CSR/CSV」を戦略的に経営に組込む意義があります。

そして機関投資家は、「ESG投資」をするにあたっては、株主としての意見を企業側に伝え、同時に企業の考え方を把握するために、「建設的な目的を持った対話(エンゲージメント)」を求めてきています。それは、中長期的な運用リターンの改善につなげようとする意図からです。

これを受けて企業側は、まずは「コーポレートガバナンス」、すなわち、経営に対して牽制と監督を利かせていく仕組みを担保した上で、「基本的なCSR」でリスクを回避し、「CSV(Creating Shared Value)」で経済価値と同時に社会価値を創出する。これにより、社会(ステークホルダー)から信用・信頼を獲得し、社会的評価(Corporate Reputation)を高め、無形資産(Intangibles)を増大させる。よって、「自然資本・社会関係資本」(※第16回コラムを参照)を保全・強化しながら好スパイラルを築き、企業価値向上に結びつける。

このように新しい経営の視座により紡ぎ出された「非財務情報」を「ESG」の枠組みで投資家にきちんと伝え、評価を受ける。これこそが「投資家に語りたい!サステナビリティ時代における持続的成長・中長期の企業価値向上のゴールデン・ストーリー」です。CSR部門は経営層・IR部門や投資家に、CSR語をESG語に翻訳して非財務情報を伝えてあげましょう。

「リスクを避け、事業機会を生かす企業」に投資することは、金銭的収益最大化を目指す際の定石です。環境、社会、ガバナンス(E・S・G)の3つの要素に十分な配慮を行うことで、企業はより優れた業績をあげることができ、投資家はより優れた運用成績をあげることができるという認識が着実に拡がりつつあります。

企業価値を高める「CSR/CSV/ESG」

今や、「CSR/CSV/ESG」は、時代が求める企業競争力の原動力であり、結果としてステークホルダーからの共感を得られ、「企業の評判」を高めます。それが「見えざる資産」として、持続的成長・中長期の企業価値向上に直結する時代の到来です。

先進の「CSR/CSV」のもと、さらに無形資産の中核であるブランド力に寄与する『らしさ』を発揮し、競争優位を創り出す戦略メソッドが「CSRブランディング」です。

編集部からのお知らせ

細田さんのビジネススクールでの講座が開催されます。ご関心のある方は、以下より詳細をご覧下さい。
https://academy.cbs.chuo-u.ac.jp/event_detail_info/?eov_id=10bf30ecde66adf62e851aa891aab8a2

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細田 悦弘
細田 悦弘  (ほそだ・えつひろ)

公益社団法人 日本マーケティング協会 「サステナブル・ブランディング講座」 講師
一般社団法人日本能率協会 主任講師

1982年 中央大学法学部卒業後、キヤノン販売(現キヤノンマーケティングジャパン) 入社。営業からマーケティング部門を経て、宣伝部及びブランドマネジメントを担当後、CSR推進部長を経験。現在は、企業や教育・研修機関等での講演・講義と共に、企業ブランディングやサステナビリティ分野のコンサルティングに携わる。ブランドやサステナビリティに関する社内啓発活動や社内外でのセミナー講師の実績豊富。 聴き手の心に響く、楽しく奥深い「細田語録」を持ち味とし、理論や実践手法のわかりやすい解説・指導法に定評がある。

Sustainable Brands Japan(SB-J) コラムニスト、経営品質協議会認定セルフアセッサー、一般社団法人日本能率協会「新しい経営のあり方研究会」メンバー、土木学会「土木広報大賞」 選定委員。社内外のブランディング・CSR・サステナビリティのセミナー講師の実績多数。

◎専門分野:サステナビリティ、ブランディング、コミュニケーション、メディア史

◎著書 等: 「選ばれ続ける会社とは―サステナビリティ時代の企業ブランディング」(産業編集センター刊)、「企業ブランディングを実現するCSR」(産業編集センター刊)共著、公益社団法人日本監査役協会「月刊監査役」(2023年8月号) / 東洋経済・臨時増刊「CSR特集」(2008.2.20号)、一般社団法人日本能率協会「JMAマネジメント」(2013.10月号) / (2021.4月号)、環境会議「CSRコミュニケーション」(2010年秋号)、東洋経済・就職情報誌「GOTO」(2010年度版)、日経ブランディング(2006年12月号) 、 一般社団法人企業研究会「Business Research」(2019年7/8月号)、ウェブサイト「Sustainable Brands Japan」:連載コラム(2016.6~)など。

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