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CSRブランディング最前線

第15回:目からウロコの「ESG」超入門

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SB-J コラムニスト・細田 悦弘

~ ビジネスと社会課題解決を両立させ、「らしさ」で競争優位を創り出す!待望の戦略メソッド ~

「CSR」と「ESG」って、どこが違うんですか?最近、私の講座には、企業のIR担当やIRコンサルの方の参加が増え、この質問をよくいただきます。ただ、このシンプルながらも奥深いモヤモヤ感は、CSR部門のマネージャークラスにもあるようです。

「信用・信頼」は企業競争力

現代経営で一番大切なこと...それは、「会社を持続的に成長させ、社会的評価を高めること」だといわれます。また、社会的評価が高まれば、会社が持続的に成長させてもらえます。目まぐるしく変化する社会、すなわち、ステークホルダーに「対応」してこそ、信用・信頼が獲得できます。「対応」とは、英語で、response 。つまり、「CS」のResponsibilityの「R」の本質がここにあります。先進のCSRの要諦は「社会対応力」であり、現代社会(図の左の矢印)からの要請や期待に応えることにあります。

一方、日本版スチュワードシップコードに署名している多くの機関投資家は、短期主義(ショート・ターミズム)から中長期への時間軸のシフトによる投資リターンを志向するスタンスに立ちます。したがって、中長期に持続的成長ができる企業を選別します。なので、「危ない会社」に投資するわけがありません。「危なくない会社」は、ステークホルダーから反発を買っていない会社、さらには、誠実な対応をして信頼されている会社という見方になります。

現代の優れた企業は、「CSR」を経営に組み込むことにより、ステークホルダーから信用・信頼を獲得し、社会的評価を高め、持続的成長・中長期の企業価値向上を目指します。それを投資家側は、非財務情報として「ESG(Environment/Social/Governance)」で評価するということです。

この文脈では、CSRによってもたらされる非財務情報が、投資家に「ESG」で評価され、時価総額(株価×発行済株式数)という観点からの企業価値向上に直結するわけです。そして、リスク・プレミアムの低下を通じて資本コストを引き下げることに結びつきます。

現代経営においては、「見えるものより、見えないもの」「短期よりも中長期」「過去より将来」に、より遥かな可能性が見出せます。今日良き財務が出たのは、これまでの「非財務」のおかげ。これからも、良き財務を出し続けたいのであれば、「非財務」を重視しなければならないという認識が重要です。

現代経営において、ステークホルダーからの「信用・信頼」は競争力であり、きわめて重要な無形資産(見えざる資産)なのです。社会(ステークホルダー)との関係性の良し悪しは、中長期的にキャッシュフローを創出させる無形資産として企業価値向上の原動力となります。

投資家に刺さる戦略ストーリーを語る

ですから、これからのCSR・IR部門は、投資家に対して、資金を投じることが将来どのようなキャッシュフローへの影響を生むのかについて、財務・非財務、有形・無形の資産の観点から、立体的にストーリーが描けることが求められます。そしてそれを企業側の視点ではなく、株主をはじめとするステークホルダーの視点から語る能力を磨くことが重要です。

「財務・非財務の統合思考」により編み出された、経済価値と社会価値を同時に実現する珠玉の戦略ストーリーは、必ずや機関投資家に刺さります。一般に投資家は、ROEが資本コストを上回るタイミングを「投資のチャンス」と捉えるといわれています。ESGは資本コストを下げ、無形資産はROEを上げる効果が期待されています。

今年7月3日に、世界最大の年金基金、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、ESG指数に連動した日本株のパッシブ運用を1兆円規模で始めたことが、大きく取り沙汰されました。これにより、「ESG投資」が加速され、企業の持続的成長・中長期の企業価値向上が促されることが期待されています。また、ESGを重視する海外投資家の注目が高まれば、去っていったお金持ちの海外の投資家たちに、「日本企業もちゃんとモノがわかった立場になったので、戻ってきてください」というラブコールとなり、日本株の投資収益が改善する可能性に関心が高まっています。

市場における「シード権」

中長期の業績予想にあたっては、「ESG」は株主価値と別個ではありません。むしろ、幅広いステークホルダーヘの目配りや社会価値の創造は、収益力や財務的競争力を高め、結果的に持続的に経済価値(株主価値)を高めます。

中長期的なスパンで志を高く持ち、時代にふさわしい価値を社会のために持続的に創造する企業は、社会(ステークホルダー)から尊敬され、一目置かれます。進化するCSRの本質を見極め、戦略的に取り組めば、市場における「シード権」を手中にすることができます。

こうしたCSR/ESGの先進の考え方をもとに、さらに『らしさ』を発揮し、競争優位を創り出す戦略メソッドが「CSRブランディング」です。

編集部からのお知らせ

8月に、細田さんの「新しい経営のあり方」研修が開催されます。ご関心のある方は以下より詳細をご覧下さい。ESGに関心がある投資家の皆さまもどうぞ。

https://school.jma.or.jp/products/detail.php?product_id=100558

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細田 悦弘
細田 悦弘  (ほそだ・えつひろ)

公益社団法人 日本マーケティング協会 「サステナブル・ブランディング講座」 講師
一般社団法人日本能率協会 主任講師

1982年 中央大学法学部卒業後、キヤノン販売(現キヤノンマーケティングジャパン) 入社。営業からマーケティング部門を経て、宣伝部及びブランドマネジメントを担当後、CSR推進部長を経験。現在は、企業や教育・研修機関等での講演・講義と共に、企業ブランディングやサステナビリティ分野のコンサルティングに携わる。ブランドやサステナビリティに関する社内啓発活動や社内外でのセミナー講師の実績豊富。 聴き手の心に響く、楽しく奥深い「細田語録」を持ち味とし、理論や実践手法のわかりやすい解説・指導法に定評がある。

Sustainable Brands Japan(SB-J) コラムニスト、経営品質協議会認定セルフアセッサー、一般社団法人日本能率協会「新しい経営のあり方研究会」メンバー、土木学会「土木広報大賞」 選定委員。社内外のブランディング・CSR・サステナビリティのセミナー講師の実績多数。

◎専門分野:サステナビリティ、ブランディング、コミュニケーション、メディア史

◎著書 等: 「選ばれ続ける会社とは―サステナビリティ時代の企業ブランディング」(産業編集センター刊)、「企業ブランディングを実現するCSR」(産業編集センター刊)共著、公益社団法人日本監査役協会「月刊監査役」(2023年8月号) / 東洋経済・臨時増刊「CSR特集」(2008.2.20号)、一般社団法人日本能率協会「JMAマネジメント」(2013.10月号) / (2021.4月号)、環境会議「CSRコミュニケーション」(2010年秋号)、東洋経済・就職情報誌「GOTO」(2010年度版)、日経ブランディング(2006年12月号) 、 一般社団法人企業研究会「Business Research」(2019年7/8月号)、ウェブサイト「Sustainable Brands Japan」:連載コラム(2016.6~)など。

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