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真のダイバーシティを考える

第14回:「働き方改革」に対する誤解

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SB-J コラムニスト・山岡 仁美

企業が今、「働き方改革」に躍起になっている理由は、大きく分けると二つあります。

一つは、日本の経済全体がそれほど大きく成長していないことです。人口が減っていく中で、日本経済が大きなプレゼンスを維持するためには、一人ひとりがより良いかたちで働き、生産性を上げていくことが大きな課題になります。

もう一つは、所得格差、あるいは貧困の問題です。格差や貧困があるために、経済活動から活力が削がれるという面もあります。また、大きな所得格差があり、貧困にあえぐような人が出てくることは、そもそも社会的に問題です。こうした課題を解決し、それぞれの人がより良いかたちで働いて、より多くの所得を得て、より充実した働き方ができるようにしなければいけません。

「働き方改革」への反対意見も根強いものです。「働き方改革」は、私たち日本人の長所である「働き者で勤勉」という特性を削ぎ、日本経済のプレゼンスどころか、国力も国民もダメになるという考えを持つ人は少なくありません。

しかし、時短やプレミアムフライデー、週休3日などを含めて「働き方改革」というのは、決して緩くなるとか怠けるということではないのです。そもそも、ダイバーシティ推進の戦略施策のひとつが「働き方改革」です。であれば、さまざまな違いを認知し、受容し、生かし、社会の力も質も高めていくのです。

そのためには、人口減少が著しく深刻な少子高齢化の日本社会の中では、育児・介護などの生活環境も、正規・非正規などの雇用形態も、それぞれのキャリアも、年齢も、国籍も、障がいの有無も、すべて含めて埋もれている人財を生かすことが必然です。つまり、さまざまな制限のある人たちが力を発揮していく仕掛けと文化が必要なのです。

その中での「働き方改革」。それは、決して従業員優位の厚遇とは限らないのです。仕事そのものにやりがいを感じ、それがその人の最大のモチベーションの源であり、なおかつ心身ともに健康であるならば、ふんだんに働いていいのです。一方で、制限のある人は、時短やテレワーク他社内施策など、ふんだんに活用してほしいものです。

残念ながら、今の日本社会には、後者に適応できる組織も管理職も、マネジメントそのものもまだまだ少ないのが実状です。しかし逆に、前者に軸足を置きながらも、志も力も高めている企業は見受けられます。

今年3月、毎年恒例となった経産省主催「新・ダイバーシティ経営起用100選」の授賞式に立ち会いました。大手企業が経営戦略としての大きな変革や華々しいプロジェクトにて成果を上げる一方で、中小や地方企業でありながら、仕事そのものにやりがいを感じ、それがその人の最大のモチベーションの源となり、一人ひとりが力を発揮している。

つまり、さまざまな違いを認知し、受容し、生かし、組織の力も質も高めている事例に多く触れることができました。それらは、「働き方改革」に走る以前に、志と力を高める経過が欠かせないと、まるで警笛を鳴らしているかのようです。

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山岡 仁美
山岡 仁美(やまおか・ひとみ)

グロウス・カンパニー+ 代表取締役
航空会社勤務を経て、人材派遣会社の研修企画担当に。その後、人材育成への意欲から、大手メーカー系列のコンサルティング会社に移り、人材育成に関する開発・販促・広報などのマネジャー職から企業研修部門の統括部長までを務める。1000社ほどのコンサルに携わった後、独立。ビジネスフィールドの豊富なキャリアで様々な人材や組織づくりと関わり続け、自身の出産・育児との両立での管理職・起業などの経験から、多様性を活かす着眼点が持ち味である。 コンサルタント、研修講師、講演と多方面で活躍中。そのテーマは「課題解決」「リーダーシップ」「アサーション」「ネゴシエーション」「キャリアデザイン」「ダイバーシティ」「リスクマネジメント」など幅広い。

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