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サステナブル・ブランドの作り方

第12回:いつも女の子らしく

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SB-J コラムニスト・足立 直樹
Christopher Campbell

こんにちは。サステナブルビジネス・プロデューサーの足立です。前回のパンパースのCMを取り上げた記事は、お蔭様で大変好評をいただきました。ありがとうございます。

これは地域全体で赤ちゃんを優しく見守ろうというパンパースのメッセージへの賛同の声の結果だと思うのですが、日本にだって以前から「子どもは社会の宝」という考えがあり、昔は家族どころか、地域全体で子育てをしていたのではないでしょうか。それが核家族化が進むにつれ、子育てはお母さんだけの「仕事」になり、「育児ノイローゼ」という言葉まで生まれたのです。

それでも、専業主婦であればまだマシだったのかもしれません。共働きがあたり前になり、それにも関わらず保育園は満員で受け入れてもらえず… 挙げ句は「保育園落ちた日本死ね」という言葉が流行語になるほどですから、大きな社会課題であることは間違いありません。社会全体で子どもを育てましょうというメッセージは、今の日本でこそ出て来て欲しかったと思いますが、だからこそこのCMへの共感も多かったのでしょう。

ところで、パンパースのCMはいいけれど、そもそもプロクター・アンド・ギャンブル社(以下P&G)はサステナブルなのか? そういう疑問にお答えすべく、今回はこのCM以外のP&Gの活動についてご紹介したいと思います。

それでは、まずは以下の映像をご覧ください。
Whisper "Rewrite the Rules"

これはP&Gの本家アメリカで作られたものなのですが、日本だけでなくアメリカにおいても「女の子らしく(like a girl)」とジェンダーを強調する言葉がまだまだ使われていることに驚かされます。しかも単に「女の子らしく(like a girl)」と言う言葉が存在するだけではなく、その言葉が実際に女の子たちの行動を制限したり、変えてしまうことが起きているのです。そんな恐ろしい魔力をもった「呪文」が未だに効き目を発揮しているとは!

いえ、この呪文が変えているのは表面的な行動だけではありません。この言葉は、女の子たちに、自分は弱い存在であるということを信じ込ませ、自信を失わせる力すら持っているのです。

それはこの「女の子らしく(like a girl)」という言葉が、女性を馬鹿にするような文脈で使われることが多いからです。一方で、この動画の39秒目からの部分を見ると分かるように、小さな女の子たちにとっては、それはニュートラルな言葉でしかありません。

そこで、女性に対する偏見を覆し、「女の子らしく(like a girl)」という言葉がポジティブな意味を持つように、P&Gは”Rewrite the Rules”、つまり「ルールを変えよう」と訴えかけたのです。

結果は鮮やかでした。「女の子らしく(like a girl)」という言葉をポジティブに捉える人は、キャンペーン開始前には19%に過ぎなかったのが、今では76%に急上昇しているのだそうです。

日本ではウィスパーという名前で知られる商品が、本国ではAlways、つまり「いつも」という名前であったので、その名前にかけて”Always #Like A Girl”(いつも女の子らしく)という名前のこのキャンペーンは、大変にキャッチーであると同時に、大変な共感を呼びました。そして現在ではより積極的なメッセージである”Keep Playing #Like A Girl”(女の子らしく、スポーツを続けよう)というキャンペーンに発達しています。

女性が使う商品を扱う会社として、女性がより自由に活動・活躍することを応援したい。P&Gのそうした考えがストレートに感じられる活動だと思いませんか。

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足立 直樹
足立 直樹 (あだち・なおき)

サステナブル・ブランド国際会議 サステナビリティ・プロデューサー。株式会社レスポンスアビリティ代表取締役。一般社団法人企業と生物多様性イニシアティブ理事・事務局長。東京大学・同大学院で生態学を学び、博士(理学)。国立環境研究所とマレーシア国立森林研究所(FRIM)で熱帯林の研究に従事した後、独立。2006年にレスポンスアビリティを設立し現在に至る。2008年からは企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)事務局長も兼務。

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