サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイトです。ページの先頭です。

サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)
CSRブランディング最前線

第12回:「サステナビリティ」でブランドに磨きをかけよう!

  • Twitter
  • Facebook
SB-J コラムニスト・細田 悦弘

~ ビジネスと社会課題解決を両立させ、『らしさ』で競争優位を創り出す!待望の戦略メソッド ~


3月に東京で開催された「サステナブル・ブランド国際会議」の会場で、こんな質問・疑問を耳にしました。

―「サステナビリティ」と「CSR」は、どこが違うのだろう?
―「サステナビリティ」と「ブランド」は、どうつながるのだろう?

いかがでしょうか?このモヤモヤ感。
私が提唱する「CSRブランディング」のメソッドに基づいて、わかりやすく解説してみましょう。

「CSR」の先に、「サステナビリティ」はある

今日に至るまで、私たち人類が経済活動の規模と範囲を大きく拡大させた結果、「成長の限界」にぶち当たり、環境面及び社会面のさまざまな課題に直面しています。

とりわけ、20世紀後半は「膨張の時代」といわれ、経済規模が凄まじいペースで拡大し、過剰消費、過剰排出の時代を招きました。その後、これらの課題を解決するキーワードとして、「サステナビリティ(Sustainability:持続可能性)」に世界の注目が集まり、「持続可能な社会」へのシフトを求める動きが起こりました。

小さい頃、よくスポーツや楽器の練習が長続きしないと、先生から「君の練習は、持続性が無いね」と言われたりしますが、その「持続」に「可能性」がつくと、途端になじみが薄くなり、意味も曖昧に感じられる方も多いようですね。

Sustainabilityの日本語訳である「持続可能性」とは、「現状をそのまま放置しておくと望ましい状態が失われてしまうので、望ましい状態を続けていくための可能性や方法を探り、それを実行していく」という概念として押さえておくとよいでしょう。若者言葉でかみ砕いて言えば、「これから先も世の中がずーっと、『いい感じ』でやっていくことができるように、ひと工夫する」といったニュアンスでしょうか。

今日急速な広がりを見せている『先進のCSR』は、企業による時代にふさわしい価値創造と、より良い社会の実現をめざす取り組みです。本コラムの主題である「CSRブランディング」のフレームでいうと、「◎」のポジションが「事業による社会課題解決」となります。現代社会の期待に応え、かつビジネスとして成功も同時に実現できる『スイートスポット』です。

企業は、CSR経営を通じて、現代社会の共通の価値観である「サステナビリティ」を希求します。地球環境が保全され、健全な社会があればこそ、企業もまた持続的に成長できます。企業と社会の利益を、その時代の社会ニーズを踏まえて高い次元で調和させることで、企業と社会の持続的な相乗発展が実現できます。

「サステナビリティ」と「CSR」の違いとは?-その答えは、ズバリ!CSRの先に「サステナビリティ」はあります。

サステナビリティが目的とすれば、CSRはそれを実現するための目標となります。「目標」は「目的」に至るための過程であり、手段です。常に目的を見据えることを忘れずに、枝葉末節に拘泥することなく取り組むことが大切です。CSRは『アウトプット』、サステナビリティは『アウトカム』となります。

ブランド力の恩恵をもたらす「サステナビリティ」と「理念」

ビジネスの究極の目的(企業の存在意義)が、『理念』の実現とすれば、総じて優良企業はそこに、「社会を豊かにする」「社会を幸せにする」などの『社会のため』といった志を掲げています。その真意を推し量れば、企業は「社会の公器」という大前提のもと、企業は成長すればするほど、社会との関わりが拡大し、社会からの共感や支持がなければ存続できないからです。

その社会が時代とともに変化し、生活者意識が個人志向から社会志向へと推移し、共通の価値観が「サステナビリティ」に収れんされつつあります。サステナビリティ視点の企業行動に期待と関心が高まっています。

したがって、企業理念や経営計画の中に、「サステナビリティ」を組み込めば、社会から強い支持が得られ、「信頼」が獲得できます。現代の顧客や生活者は「信用できる何らかの理由(Reason to Believe)」を欲しています。

現代社会の価値観に合致した企業姿勢の標榜は、ステークホルダーの企業選択の判断基準となりつつあります。そして、その取り組みに際して、企業風土や企業文化によって培われた自社の強み、すなわち『らしさ(得意技と個性)』が発揮できれば、顧客・生活者が『なるほど!』と納得し、「愛着」につながります。

サステナビリティと企業理念・経営計画との一体化ができれば、現代の企業ブランド力の2つの恩恵である「信頼」と「愛着」が獲得できます。ブランドは、「信頼できるか」「(モノではなく)自分にとって付加価値はあるか」「自分の価値観に合うか」が、決め手、すなわち判断基準となります。

私が提唱する「CSRブランディング」は、『サステナビリティ/CSR』と『ブランド』を融合させて競争優位を獲得する戦略メソッドです。これを実践することにより、3つの輪のフレームの真ん中『★(レッドスター)』をつかむことができます。

ブランドに磨きをかける「サステナビリティ」

一般に、ブランドの条件として、「卓越性」「独自性」「伝説性」「公知性」の4つが挙げられます。ところが時代の変化への対応をおろそかすると、ブランドは錆びます。ブランドは老けます。

そのために、時代にふさわしく磨きあげ精緻化(リファイン)するのが、上図の右下にある「時代性・社会性」の緑のパーツ、すなわち「サステナビリティ」です。「時代性」とは、時代の変化を捉え、それに応じることであり、「社会性」とは、社会の一員であるにふさわしい資質を備え、存在意義を認められること、といえます。

信頼・信用は競争力と言われる今日。この『緑の輪』こそが、サステナビリティ時代に求められるブランドの『5つ目の条件』です。

  • Twitter
  • Facebook
細田 悦弘
細田 悦弘  (ほそだ・えつひろ)

公益社団法人 日本マーケティング協会 「サステナブル・ブランディング講座」 講師
一般社団法人日本能率協会 主任講師

1982年 中央大学法学部卒業後、キヤノン販売(現キヤノンマーケティングジャパン) 入社。営業からマーケティング部門を経て、宣伝部及びブランドマネジメントを担当後、CSR推進部長を経験。現在は、企業や教育・研修機関等での講演・講義と共に、企業ブランディングやサステナビリティ分野のコンサルティングに携わる。ブランドやサステナビリティに関する社内啓発活動や社内外でのセミナー講師の実績豊富。 聴き手の心に響く、楽しく奥深い「細田語録」を持ち味とし、理論や実践手法のわかりやすい解説・指導法に定評がある。

Sustainable Brands Japan(SB-J) コラムニスト、経営品質協議会認定セルフアセッサー、一般社団法人日本能率協会「新しい経営のあり方研究会」メンバー、土木学会「土木広報大賞」 選定委員。社内外のブランディング・CSR・サステナビリティのセミナー講師の実績多数。

◎専門分野:サステナビリティ、ブランディング、コミュニケーション、メディア史

◎著書 等: 「選ばれ続ける会社とは―サステナビリティ時代の企業ブランディング」(産業編集センター刊)、「企業ブランディングを実現するCSR」(産業編集センター刊)共著、公益社団法人日本監査役協会「月刊監査役」(2023年8月号) / 東洋経済・臨時増刊「CSR特集」(2008.2.20号)、一般社団法人日本能率協会「JMAマネジメント」(2013.10月号) / (2021.4月号)、環境会議「CSRコミュニケーション」(2010年秋号)、東洋経済・就職情報誌「GOTO」(2010年度版)、日経ブランディング(2006年12月号) 、 一般社団法人企業研究会「Business Research」(2019年7/8月号)、ウェブサイト「Sustainable Brands Japan」:連載コラム(2016.6~)など。

コラムニストの記事一覧へ