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日本のエコホテルの現状(下)  地方再生に取り組む環境型ホテル

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「セトレ マリーナ琵琶湖」は琵琶湖の再生を目標にしている

前回に続き、今回は地方で斬新な対策に取り組むエコホテルの現状をお伝えしよう。環境負荷の軽減をどの業界よりも問われる宿泊業界だが、ホテル利用者に、エネルギーの節制や環境活動を『強要』することはできない。(ホテルジャーナリスト=せきね きょうこ)

そこでホテルは「3R」(リデュース、リユース、リサイクル)や、地球温暖化防止、地域とのコミュニケーションによる共同事業などを積極的に活発化させるなど、智慧を用いた対策に励んでいる。

日本最大の面積と貯水量を持ち、ラムサール条約登録湿地でもある琵琶湖の畔に、環境型リゾート「セトレ マリーナ琵琶湖」が建っている。『エコトーン』(注)を礎とした、2013年9月1日に開業した意義深いリゾートホテルだ。

セトレ マリーナ琵琶湖の目標は、460本もの大小河川が流れ込む日本最古の湖「琵琶湖」の再生にある。つまり周辺の市町村、そこに生きる人々の環境劣化を懸念し、琵琶湖のエコトーンを再生し守る、地域の自然に負荷をかけない、そして最終的には、このリゾートホテルが地域のコミュニティの場となるよう地域再生を掲げている。

コンセプトには「建築から食まで地域との一体化が基本」を掲げ、極端な開発や干拓、護岸整備により多くの自然を失ってきた琵琶湖の原風景を取り戻そうと、ホテルを基地として様々に取り組んでいる。

36,000㎡の敷地の湖沿いには内湖のビオトープが2か所造られ、地域特有の生態を宿すための雨水池とした。広い庭には里山育成林を造成中だ。ホテル棟は県内の木材や土や石を再利用した。さらに緻密なデザインと専門的技法を駆使した屋上緑化は、財団法人都市緑化機構主催の第14回 屋上・壁面・特殊緑化技術コンクールで「環境大臣賞、最優秀賞」を受賞している。

冬に湖に面する西陽の当たる客室にこもった熱は、版築壁や土壁に貯め込まれ、夜に放熱されて温かい。夏の西陽は屋上緑化と、土壁の空間仕上げで温度湿度の調整機能が働く。空調だけに頼らない先人達の智慧と、最新技術がリゾートの快適さを増長している。

ほかにも食材には琵琶湖の魚や滋賀県産の野菜を使ったり、農薬を使わないエッセンシャルオイルを使用したバスアメニティを提供したりなど、こだわりがある。日本のホテルの現状は、こうして見ても決して欧米にも引けを取らないハイレベルな段階に入っている。

まさにエコロジーはエコノミー、これこそ日本の得意分野ではないだろうか。

現在、日本のホテルの環境ラベルとして、BIOホテルグリーンキーがある。グリーン購入ネットワークの「GPNエコチャレンジホテル」といったデータベースも、運営企業の意識改革には影響力があろう。

宿泊特化型のビジネスホテルでも環境活動は活溌であり、たとえば「スーパーホテル」はその先駆けでもある。また、信州安曇野「カミツレの宿 八寿莊」、松本「扉温泉 明神館」、「星のや 軽井沢」等の旅館も先進的な取り組みをしている。現状は未だホテルにより差はあるものの、エコロジーへの意識改革は確実に起きており、人々の意識は広がりつつある。

注)陸域と水域、森林と草原など、異なる環境が連続的に推移して接している場所。移行帯。一般に生物の多様性が高い。


せきね きょうこ
ホテルジャーナリスト。フランスでの学生生活、スイスでの職業キャリアとネットワークを活かし、1994年から現職。日本のホテル/旅館も含め世界を舞台に取材、執筆。スクープ記事、ホテル関連の国際会議招聘も多々。連載、著書多数。

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