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世界で加速する人権への関心

シリア難民の児童労働、企業イニシアティブが必要

SB-J コラムニスト・下田屋 毅

英国放送協会(BBC)のドキュメンタリー「パノラマ」で昨年10月、トルコの衣料品工場の違法労働問題が報道された。シリア難民の児童労働や不法労働によって欧州の衣料品ブランド向けの衣服が製造されているという。

トルコは国際的な調達先として人気が高い。高品質の製品を迅速に生産できることから急成長しており、欧州への衣料品と皮革製品の輸出に関してはバングラデシュと中国に次ぐ三番目の輸出国だ。トルコは、昨今のシリア内戦の影響で、過去5年間で約300万人のシリア難民を受け入れている。しかし、シリア難民に対する対応が十分でない状況があることを、BBCパノラマは指摘している。

同番組では、トルコの工場を潜入調査し、児童労働によって英マークス&スペンサー、ASOS向けの衣服を製造していたことを報道。またZARAとMango向けのジーンズ製造工場では、シリア難民が1日12時間以上労働することを余儀なくされ、ジーンズを漂白する有害な化学物質の噴霧に従事し、労働者に保護具着用がなされていない状況を伝えている。

シリア難民の労働者は、トルコの最低賃金をはるかに下回る非常に低い賃金で過酷な労働環境で働かされ、労働搾取の状況下にある。彼ら自体ではどうすることもできない非常に弱い立場にいるとしている。またほとんどの難民は労働許可証を持たず、多くは衣服業界で不法に働いていて、路上の仲買人を通じて雇用されている状況がある。

この問題は、直接の1次サプライヤーということではなく、2次、3次サプライヤー、さらにその先の上流において問題が発生している可能性があり、対応することは簡単ではないとしている。それ故に、自社単独で実施できる内容と、イニシアティブなどの活用により、より長期的な視野で包括的に関連団体や同業他社との連携により問題へ対処する内容があり、それぞれ実施していくことが必要だということをASOS、そしてM&Sともに語っている。

これらトルコの衣料品工場に発注しているこれら欧州企業は、今回BBCパノラマが提起した問題に対して、関連団体との連携により既に状況を理解し、すでにこれまでにも対策を講じてきた。

その一つとして英国ETI(Ethical Trading Initiative)がある。ETIは2014年後半に、既にシリア難民の不法雇用に起因するトルコのサプライチェーン上の問題について懸念を表明していた。

今回報道されたマークス&スペンサー、ASOS、ZARAなどのETIのメンバー企業は、トルコでの調達を行っていたため関心を示し、ETIに協力を求めた。企業単独の対応では限界があるため、この動きはイニシアティブを立ち上げ、企業とNGO、そして労働組合をも巻き込んで対応しようとするものだ。

ETIは、この問題に関係するイニシアティブとして「トルコの衣料品分野で働くシリア難民プログラム」を立ち上げて支援している。また2015年3月にイスタンブールで会合を開き、行動のロードマップにも合意している。その対応策として、現在は地域のビジネスと人権のプラットフォームの確立や、ビジネスと人権のデューディリジェスのリソース開発、そしてより良い苦情処理メカニズムの開発の支援を行っている。

このように欧州企業は、サプライチェーン上での課題に対してETIのような中立的な立場の団体やNGOなどと協働しイニシアティブを立ち上げ、競合関係にある企業とも協力して課題解決に向けた行動を行っている。今回の事例は欧州に近いトルコでの課題対応だが、欧州企業もアジアにサプライチェーンがあり、日本企業と重なる部分がある。今後このようなイニシアティブを協働で行っていく可能性も予想される。日本企業は、欧米企業との協働作業を視野にいれることが必要となる。

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下田屋 毅
下田屋 毅 (しもたや・たけし)

サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン代表理事。欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。大手重工メーカー工場管理部にて人事・労務・総務・労働安全衛生などを担当。環境ビジネス新規事業立ち上げ後、渡英。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。ビジネス・ブレークスルー大学講師(担当CSR/サステナビリティ)。

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