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CSR/CSV 経営ポイント

寄付月間に寄せてーー寄付も立派なCSR/CSV 

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SB-J コラムニスト・森 摂
自分の意思を明確にし、寄付に反映されているか考えてみよう Image credit:Yukiko Matsuoka

日本では12月を「寄付月間-Giving December-」(実行委員長・小宮山宏・三菱総合研究所理事長)と定めて、個人や法人による寄付を奨励していることをご存じだろうか。

日本の寄付市場は約1.5兆円とされる。東日本大震災を機に、約1.5倍に増えた。だが、その原動力は、個人の寄付(7,409億円、2014年)で、法人からの寄付(6,986億円、2013年)はこの5年間、ほぼ横ばいである(いずれも「寄付白書2015」=日本ファンドレイジング協会編)。

近年、企業の間ではCSV(共通価値の創造)や本業を通じたCSR活動ばかりが強調され過ぎて、「企業の余剰利益に頼る寄付は限定的であり、本業に関係ない寄付に意義はない」とする意見が増えてきた。

本業を通じたCSR活動やCSVの重要性はその通りだが、一方で企業からの寄付に支えられているNGO/NPOも多数あり、寄付自体に意味がないとする訳にはいかない。むしろ、企業からの寄付は今後、より戦略的に、目的を明確にして発展させていく必要があるだろう。

では企業は何のために寄付をするのだろうか。それは、企業では一つ一つに対応できない社会的課題の解決においてその先陣となるNGO/NPOに意思を託す、ということにほかならない。それを明確にすることが戦略的な寄付につながる。

重要な点を記しておこう。

第一に、企業は本来的には寄付額を明らかにした方が良い。日本では一般的に「売り上げの一部を寄付しています」とアピールはするものの、その実額やパーセンテージは開示しないケースが多い。

もちろん法律で求められているわけではないが、その詳細を開示した方が、誠実な企業としての評価を受けやすい。今夏に終了した1L for 10L(キリン)も、その寄付額の総額や詳細、用途を詳しくホームページ上で公開している。

第二に、寄付先の選び方だ。よくあるような、赤十字など良く知られた機関に対して、あまり考慮もせず寄付をしてしまうのは、いかがなものか。

自社がNGO/NPOに何を求めるのか、どんな社会課題を解決してほしいのかを明確にし、自社独自の基準を定め、戦略的な寄付を心がけてほしい。そして、いったん始めたのであれば、中長期的な視点で寄付先と付き合っていくことだ。

第三に、寄付先には厳しく情報開示を求めた方が良い。寄付のしっぱなしは良くない。何に対して寄付したのか、寄付先に何を期待しているのかーーなどを明確にし、寄付先には成果の報告を求める。

その判断は中長期的にすべきだが、期待に沿えなかった寄付先に対しては、ゼロ回答を含め、寄付額を見直ししたり、活動内容に助言したりなどの措置を取る必要があるだろう。

法人の場合、寄付に充てる資金は、株式配当や給与増額に充てても良い余剰資金の一部である。株主や従業員から不平不満が出るようでは、戦略的な寄付とは言えない。あらゆるステークホルダーが納得するような形で、寄付先を選定し、そのパフォーマンスも逐次、チェックするのが良い。

個人の方も、できるだけ自分の意思を明確にし、寄付がそれに沿っているか、寄付先が答えてくれているかを改めて見つめ直すのが良いだろう。


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森 摂
森 摂 (もり・せつ)

株式会社オルタナ代表取締役社長・編集長。東京外国語大学スペイン語学科を卒業後、日本経済新聞社入社。1998年-2001年ロサンゼルス支局長。2006年9月、株式会社オルタナを設立、現在に至る。主な著書に『未来に選ばれる会社-CSRから始まるソーシャル・ブランディング』(学芸出版社、2015年)、『ブランドのDNA』(日経ビジネス、片平秀貴・元東京大学教授と共著、2005年)など。訳書に、パタゴニア創業者イヴォン・シュイナードの経営論「社員をサーフィンに行かせよう」(東洋経済新報社、2007年)がある。一般社団法人CSR経営者フォーラム代表理事。特定非営利活動法人在外ジャーナリスト協会理事長。

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