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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)
サステナブル・ブランドの作り方

第1回: アップルはどこがサステナブルなのか?

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SB-J コラムニスト・足立 直樹

はじめまして、レスポンスアビリティの足立直樹と申します。今回からこちらで「サステナブル・ブランドの作り方」と題して、世界のサステナブル・ブランドの秘密を解き明かしていきたいと思います。

話を始める前に、まずは簡単に自己紹介をさせてください。その方が、なぜ私がサステナブル・ブランドについてご紹介するのか、あなたもしっくり来ると思うからです。

私はこれまで10年以上にわたって、企業をサステナブル、つまり持続可能にするためのお手伝いをしてきました。「企業を持続可能にする?」と思われるかもしれませんが、実は残念ながら今あるほとんどの企業は持続不可能、つまり今までのやり方では事業を続けることはできません。だからそれを「持続可能にする」必要があるのです。

「いや、今まで十分続いて来たではないか。だから、これからもきっと続くはずだ」と思われるかもしれません。しかし、私たちはだんだんとその限界に近づいて来ています。

どういうことでしょうか? 

例えば気候変動のことはあなたも聞いたことがあるでしょう。大気中の二酸化炭素濃度が増加することにより、その温室効果で平均気温が上昇し、さらには気候パターンも変化する、という話です。

このことに懐疑的な方もいるようですが、世界中の多くの自然科学者が、おそらくそうだろうと認め、それをなるべく防止するべく、そしてその変化に対応して影響を緩和するべく、国際社会も動き始めています。

昨年12月にパリで行なわれた気候変動枠組条約のCOP21では、気温上昇を2度未満に抑えることを主旨とした「パリ協定」が合意されました。何がなんでもそうしないことには、私たちの生活が脅かされてしまうと世界は本気で心配しているからです。

実際、そうした危機が世界中で顕在化しています。気候変動が原因かどうか断定することはできませんが、この原稿を書いている今も欧州を豪雨が襲い、セーヌ川が氾濫する怖れがあるため、ルーブル美術館は一時的に閉鎖されています。

そしてCOP21の前後から、世界でいくつもの企業が二酸化炭素の排出量を実質ゼロにすることを目標に掲げ、そのための行動を始めました。マイクロソフトやアップルのように、いくつかの国で実質ゼロを達成した企業も出始めています。両社はいずれもデータセンターで大量の電力を消費していますが、その電気をすべて太陽光などの再生可能なエネルギー由来のものに切り替えたのです。

このように再生可能エネルギーに切り替えた会社はいいのですが、そうでない電力、例えば化石燃料由来の電力を使っている会社は、早晩そのやり方を改めなくてはいけないでしょう。なにせ気温上昇を2度未満にするためには、これから10年ぐらいの間に世界の二酸化炭素排出量をゼロにしなくてはいけないという試算がされているのです!

あるいは、サプライチェーンで児童労働や強制労働を無くすという課題もあります。経済活動がグローバルに拡大した現在、企業のサプライチェーンも長く、複雑になっています。日本のブランドの服を買ったと思ったら、縫製は中国、原糸はインドで作られていたなんていう話はよくあります。

そのお蔭で、私たちは安い価格で商品を手にすることができていますし、また海外、特に途上国の経済も潤っていると考えれば、これはこれでいいでしょう。けれども、そのために学齢期の子どもが働かされているとか、毎日何時間も残業を強いられている人たちがいるとしたら…。それはちょっと受け入れがたいのではないでしょうか。

実際、そういう事実が発覚したりすると、特に欧米諸国ではすぐに不買運動が起き、そうした商品はいくら安くても、美しいデザインでも、売れなくなってしまうのです。

少し前までなら「まぁそのぐらいは…」と考える人が多かったかもしれませんが、今では社会的に許容されなくなっています。またそもそも、子どもが学校に通わずに仕事をさせられる社会なんて…。発展するわけはありませんよね?

最初の気候変動の例は環境の面で、二番目の児童労働の例は社会性の面で、もはや続けることは出来ないことがハッキリしているのです。今まではそれで良かった、そうして来たといくら言っても、もはやそれを続けることは出来なくなってきているのです。

逆に、こうした環境や社会の課題を解決しているビジネスであれば、それは持続可能、つまりサステナブルと言えます。

そしてサステナブルであることが旧来型の多くのビジネスとの差異点となり、つまりは、それによってブランドになる、ブランディングが出来るというわけです。

もちろん実際にはそう簡単な話ではありません。そもそもどういう点がサステナブルと言えるのか、そしてそれがどうブランドに結びついているのか、ブランドを成立させているのか。そこには色々な場合があります。

ですので、この連載では、どういう点がサステナブルといえるのか、そしてそれがどうブランド形成に役立っているのかという2つの点について、具体的な事例をもとにご紹介していきたいと思います。

今回はイントロダクションで紙幅が尽きてしまいましたが、最後に具体的な事例をご紹介しましょう。今回の最初の例で名前を挙げたアップルの例です。この世界的なブランドがサステナブルであるための努力をどのようにしているか、以下の動画やウェブでご覧ください。

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足立 直樹
足立 直樹 (あだち・なおき)

サステナブル・ブランド国際会議 サステナビリティ・プロデューサー。株式会社レスポンスアビリティ代表取締役。一般社団法人企業と生物多様性イニシアティブ理事・事務局長。東京大学・同大学院で生態学を学び、博士(理学)。国立環境研究所とマレーシア国立森林研究所(FRIM)で熱帯林の研究に従事した後、独立。2006年にレスポンスアビリティを設立し現在に至る。2008年からは企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)事務局長も兼務。

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