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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)
G☆Local Eco!

マッチョとオタクのG☆Localな世界

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SB-J コラムニスト・青木 茂樹

[G☆Local Eco!第1回]いま、なぜサステナブル・ブランドが求められるのか。CSRやフィランソロピーだけではなく、それをブランドにつなげていくという考えが大きな転換であろう。企業がイノベーションやマーケティングで売り上げや利益を上げていく行為と、CSRとは必ずしも繋がってこなかった。

前者が利益部門であれば、後者はコスト部門として考えられていたと言っても過言ではあるまい。組織的にも前者が製品開発やマーケティング、営業という部門であるのに対し、後者は総務、広報、経営企画などが担当していることも多く、社内的な縦割りの中でなかなか繋がってはこなかった。

ではなぜそこでサステナビリティが重視されるのか。
大きく括ればポストモダンとしての新しい生産・流通のあり方、または社会と企業の関係のとらえ直しが迫られた、もしくは可能性が見えてきたということだ。

20世紀までのビジネスモデルは、いち早く大量生産の仕組みを構築し、量産された標準的な製品を販売することで市場を独占し、さらに得た収益をマスメディアの広告に投じることで、大衆にブランド認知をさせることだった。

マッチョな企業がローラー作戦で次々と市場獲得を進めたのだ。環境負荷が高かろうが社会弱者に不利益を出していようがある程度は目をつぶってもらい、一方の物質的な豊かさを社会は選択したのだと言えよう。

しかし、今日のSNSなどのパーソナル・メディアが世界を繋げる環境が整ってくると、途上国での劣悪な労働環境や生産方法が暴かれ、社会的な批判を浴びるようになってきた。経済も政治も「臭いモノには蓋をする」ことができなくなった時代なのだが、いまなお頻発する市場への裏切り行為が、未だ企業内では温存されていることには驚きを隠せない。マッチョな体質の企業ほど、センシティブさに欠けてしまうのだ。

また温暖化や海流の変化、資源の枯渇など、環境変化もビックデータとして視覚的にみることが可能にもなってきた。単なる警告レベルではなく、大企業であればあるほどこれに対応していくことで市場の維持・拡大を目指さなければ、そもそもの存立基盤を失う可能性が出てきたと分かっている。世界的企業にはマッチョでありながら、スマートな企業が現れてきており、新しい企業評価軸が生まれつつある。

モダニズムでは強かったマッチョは、ポストモダンでは権威を得にくい。その分、出てくるのが日陰の存在であった企業である。日本の経済成長を縁の下から支えたといわれる中小企業の数は99.7%を占める。従業員数では7割、製造業付加価値額では5割である。

ただ、この20年で製造業はコストの問題から海外生産拠点へと移していったのであり、よっていくら経済のマクロ指標が良くなっても、国内中小企業への派生需要としてのトリクルダウンや乗数効果が起きないのは必至なのだ。

しかし、中小企業の中には麦のように踏まれて強くなる企業もある。大手の下請け関係から抜け出し、直接、ブランドを立ち上げて評価されている中小企業はたくさん出てきている。アパレルでも大手カジュアル店が世界を席巻していくなかで、大手にはできない素材や織り機を使った丁寧なモノづくりへの支持が増えている。環境負荷への対応はもちろん、グローバル展開も始めた企業が多い。

この春に銀座や新宿に新しいテナントビルができたが、例えば銀座の東急プラザをのぞいてみるとよい。カジュアルでありながら質感の高いローカルな企業が、消費者の支持を得ている。その多くが世界の見本市に出ていって丁寧なモノづくりの評価を得ており、これらがSNSやウェブサイトを通じて常時、顧客と繋がっているという。

過日、男子中高生達と話す機会があった。男子校というとマッチョな世界と思っていたのだが、まったく一転。多くの生徒が「僕は○○オタクです」と堂々と口にし、「共学だと女子に後ろ指をさされるのだが、男子校なんでまったく気にしません」と風通しの良さを訴えていた。マッチョがヘゲモニーを握っていたのはもはや昔・・・。

ビジネス界も同様だ。繊細なコミュニケーションツールは、グローバル企業にはスマートさを求め、ローカル企業には新しい支持者を獲得できる機会となっているのだ。

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青木 茂樹
青木 茂樹 (あおき・しげき)

サステナブル・ブランド国際会議 アカデミック・プロデューサー
駒澤大学経営学部 市場戦略学科 教授

1997年 慶應義塾大学大学院博士課程単位取得。山梨学院大学商学部教授、
University of Southern California Marshall School 客員研究員を歴任。
多くの企業の新規事業の立ち上げやブランド構築に携わる。地方創生にも関わり、山梨県産業振興ビジョン策定委員、NPOやまなしサイクルプロジェクト理事長。人財育成として、私立大学情報教育協会FD/ICT活用研究会委員、経産省第1回社会人基礎力大賞を指導。やまなし大使。
2022年4月より、デンマークに渡り現在 Aalborg University Business School 客員研究員を務める。

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