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サステナブル・オフィサーズ 第19回

サステナビリティと利益は必ず両立する――ヨルグ-クリスチャン シュテック BASFジャパン 代表取締役社長

Interviewee
ヨルグ-クリスチャン シュテック BASFジャパン 代表取締役社長
Interviewer
森 摂 オルタナ編集長/サステナブル・ブランド国際会議総合プロデューサー

「サステナビリティと利益は間違いなく両立します。サステナビリティの価値を顧客に伝えられたら、競争優位になりますし、結果的には両立以上に利益になるはずです」。こう言い切るのは、世界最大の総合化学メーカーBASFの日本法人、BASFジャパンの代表取締役社長ヨルグ-クリスチャン シュテック氏だ。同社のサステナビリティ世界戦略を聞いた。


――BASFは1865年に創設され、150年以上の歴史があります。サステナビリティの概念はいつからお持ちですか。

シュテック:持続可能な形で、製品をどう作るかという発想は、創業の時からあります。サステナブル経営という観点では、BASFが特別なわけではなく、ドイツの風土、歴史と関係があると思います。日本にも似た土壌はあると感じています。事業が長く続く理由は、リサイクルの仕組みを活用し、ひとつの事業で排出された副産物を、別の事業で新しい製品を作る原料として使用しているからです。

――クレイドル・トゥ・クレイドル(ゆりかごからゆりかごまで:役割を終えたものを再び製造現場で活用する考え方)に通じますね。

シュテック:はい。しかし、それより徹底しています。この理念を「生産のフェアブント」と呼んでいます。フェアブントとは「統合・つなげる」を意味するドイツ語です。

フェアブントシステムは、基礎化学品から塗料などの高付加価値製品までつながる、効率の良いバリューチェーンを生み出します。このシステムで、原材料やエネルギーを節約し、排出物を最小限に抑え、物流コストを下げ、相乗効果を発揮しています。フェアブントのコンセプトは生産や技術のみならず、知識の共有、社員間、顧客、ビジネスパートナーとの関わりにおいても浸透しています。

まさにこれがBASFの成長のカギなのです。一つの会社としての付加価値を作り出しているのです。その根本には、事業全体に行き渡ったサステナビリティの概念があります。

――欧州には、ネスレやノボノルディスク、H&Mなどサステナブルなビジネスに取り組む企業が多くあります。

シュテック:そうですね。私たちのようなBtoB企業は、BtoC企業よりも社会的なプレッシャーが少ないですが、社会との距離感は違っても、社会的責任は同じです。

サプライヤーに対する責任ある調達、BASFで取り組む安全で効率的な生産、顧客に提供する持続可能なソリューションの推進、そして関わるすべての人を尊重し、公平に扱うこと。こういった私たちの理念に基づいてバリューチェーンが成立していれば、バリューチェーンは一貫してサステナブルになります。これこそ「持続可能な将来のために、化学でいい関係をつくります」という、BASFのパーパス(目的、存在意義)そのものです。

――素晴らしいと思います。未来に選ばれる企業だということですね。

シュテック:その通りです。私たちの戦略は、目指す未来に基づいて立てられます。2050年はどんな世界か。企業として何が求められるのか。誰であれ未来に何が起きるかは分かりません。しかしBASFは、サステナビリティに取り組むことが「正しい」と思っています。

「化学こそが社会の礎」という信念

――パーパスにもある「化学で」ということを、どのように捉えていますか。

シュテック:化学は私たちのコア・コンピタンスです。私たちは、化学メーカーとして、多くの人の生活レベルを上げるための手助けをしたいのです。化学は、社会に良い変化をもたらすことができると考えています。化学こそが現在、未来における、課題解決の推進力であるという信念があります。

私たちはみな、持続可能な方法で未来を築いていく準備をしています。短期的な利益よりも、長期的な視野でサステナブルな未来を築きたいのです。次の150年も事業を続けていきたいですから。

――パーパスに基づいた実際の戦略はありますか。

シュテック:私たちの戦略的な方針のひとつは、「持続可能なソリューションを促進」というものです。これは、仕入れをするサプライヤーとの関係においても重要です。自動車産業や建設業、農業、医薬品産業、食品や包装業といった、幅広い顧客に対して持続可能なソリューションを見つけ、さらに生み出していく。時には長い時間がかかる場合もあります。

「ベストチームを編成する」という方針もあります。この方針には、社員がノウハウを発揮できる環境をつくり出し、自分たちの仕事に満足できるような機会を与えるという意味があります。そのため、同じような関心や能力の人たちを組み合わせて仕事を進めています。これは企業として競争力を持つことや、顧客に最良のソリューションを提供することにもつながります。

BASFのグローバルの社員数は80カ国11万4000人です。日本では1949年から日本法人として事業を行っており、グループで約1200人が働いています。ダイバーシティに富んでいても、説得力のあるモットーやビジョンがあれば、人種や国、性別に関わらず、共通の目標を見つけることは難しくありません。

「私たちは社会の一員」

――実践するための体制はどのように整えていますか。

シュテック:最も大事なのは、経営へのサステナビリティの統合です。BASFは、BASF SE取締役会の直下にコーポレートサステナビリティ委員会があり、さらにサステナビリティコアチーム、サステナブルティコミュニティーという3つのサステナビリティに関する組織が社内にあります。これによって、通常業務の中でサステナビリティを当たり前に捉え、実践する仕組みになっています。

製品のサステナビリティに関しては、サステナブル・ソリューション・ステアリングという評価ツールを策定しました。サステナビリティの理念がどのように製品に反映されているかというアセスメントです。企業目標に沿って、適切な方向に進んでいるかどうかを示しています。

現在、「アクセラレーター」と呼んでいる持続可能な解決策に多大に貢献する製品が全体の27.2%。「パフォーマー」と呼んでいる、市場で求められている基準に適合している製品が68.3%。「トランジショナー」と呼ぶ、持続可能性に関して特定の問題がある製品が4.2%、「チャレンジ」と呼ぶ、持続可能性に関し懸念があり行動計画を要する製品が0.3%です。BASFの全取扱製品・用途は6万点以上に及びますが、2016年末時点で、その95.9%に対して評価を完了しています。2020年までにアクセラレーターを28%に引き上げるという目標を掲げており、現在、27.2%まで達成しています。

――サステナビリティと利益は両立すると考えますか。

シュテック:間違いなくするでしょう。サステナビリティの価値を顧客に伝えられたら、競争で優位になりますし、結果的には両立以上に利益になると考えています。

繰り返しになりますが、私たちのモットーは「化学でいい関係をつくる」です。化学とは新しい製品をつくることであり、化学や化学的な知識で顧客の課題を解決することです。

人の関係に化学反応を起こすことも含んでいます。私たちは社会の一員であることを望みますし、成長も経済的な成功も社会の中でしか達成できません。ですからサステナビリティへの取り組みは企業の営利のために行うのではなく、未来や社会に目を向けた長期的な目的のためにあるのです。

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ヨルグ-クリスチャン シュテック
ヨルグ-クリスチャン シュテック

ドイツ・カールスルーエ大学で化学を専攻。1992年、フランス・ストラスブールのEHICS (European Higher Institute of Chemistry and Chemical Engineering)で博士号を取得。1997 年ベルリン工科大学で MBA(経営学修士)を取得。1993年 独ローヌ・プーラン・シリコーンズ社 入社。1998年 独チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社 入社。2006年 チバ・スペシャルティ・ケミカルズ台湾 社長、2008年 チバ・スペシャルティ・ケミカルズ韓国 社長兼、大韓スイス・ケミカルズ社長(韓国に駐在)を経て、2009年 7月にBASF ジャパン株式会社 常務執行役員 特殊化学品本部 本部長として東京に駐在。2010年9 月 BASF ジャパン株式会社 副社長執行役員 高機能製品統括本部。2011年 7月 コグニスジャパン株式会社 代表取締役社長 兼任。2012年 4月 BASF ジャパン株式会社 代表取締役社長。現職。

森 摂
インタビュアー森 摂 (もり・せつ)

株式会社オルタナ代表取締役社長・編集長。東京外国語大学スペイン語学科を卒業後、日本経済新聞社入社。1998年-2001年ロサンゼルス支局長。2006年9月、株式会社オルタナを設立、現在に至る。主な著書に『未来に選ばれる会社-CSRから始まるソーシャル・ブランディング』(学芸出版社、2015年)、『ブランドのDNA』(日経ビジネス、片平秀貴・元東京大学教授と共著、2005年)など。訳書に、パタゴニア創業者イヴォン・シュイナードの経営論「社員をサーフィンに行かせよう」(東洋経済新報社、2007年)がある。一般社団法人グリーン経営者フォーラム代表理事。特定非営利活動法人在外ジャーナリスト協会理事長。