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消費者のリサイクル行動を促す効果的な方法とは 世界の研究から考察する

Scott Breen, Gina Miklasz and Colleen Woodruff

リサイクルを促すには綿密な設計が必要だ。例えどれだけ効率的に資源回収をし、どんなに素晴らしいメッセージを巧みに投げかけても、消費者のリサイクル行動を阻害する要因は他にも存在する。米国の消費者の85%はリサイクルすることを強く支持しているものの、街では、リサイクルできるものが袋詰めされていたり、間違ったものが回収ボックスに入っていたりする光景をよく見かける。(翻訳=井上美羽)

リサイクルできないゴミが回収箱に紛れ込むことで、分別コストがかかったり、リサイクルできるものが廃棄されたり、リサイクル資源の価値が下がったりするため、米国のリサイクルシステムの足かせになっている。リサイクルシステムを構築するには、人々の行動と価値観を一致させることが重要だ。今回は、リサイクル行動に関する世界中の研究結果から、リサイクルを促す効果的な方法について紹介する。

消費者は、パッケージの文章や、自治体のウェブサイト、リサイクルボックスのラベルなどのさまざまな媒体を通してリサイクルの情報を知り、学ぶ。しかし残念ながら各地域では、予算が足りずにリサイクル教育が行き届かないということが往々にして起こっている。

サーキュラーエコノミーの実現に向けて政府などと連携してリサイクルを促進するリサイクリング・パートナーシップ(The Recycling Partnership、TRP)の「2020年米国街頭の現状」レポートによると、分析した地域のうち、リサイクルを働きかける活動予算を持っているのはわずか51%で、これらの地域においても、普及活動のための平均年間予算は1世帯あたりわずか1.16ドルだった。また、パッケージにはリサイクルに関する情報を記載するスペースがほとんどなく、消費者の注意を引くチャンスはほんの数秒しかない。このような現実を考えると、住民や消費者にリサイクルを促すメッセージは、行動を変えた成功例を参考にして、真似することが重要になってくる。

米国の金属缶メーカーとそのサプライヤーが集まるイニシアティブ「ザ・カン・マニュファクチャー・インスティチュート(The Can Manufacturers Institute、CMI)」は、2020年にリサイクル行動の変化に関する文献調査を依頼し、利用可能な研究を包括的にとりまとめている。

そのレポートでは、成功事例を集めたリサイクリング・パートナーシップによるレポート『スタート・アット・ザカート(Start at the Cart)』や最近の書籍を参考にし、リサイクル資源の回収、消費者へのコミュニケーションといった領域に関して、積極的なリサイクル行動を誘発する方法を紹介している。

■回収

リサイクル資源を回収する場所があるかないか、という二択だけではなく、回収にはもっと考慮すべきことがある。

回収箱のデザイン:ある大学のキャンパス内で、2種類の回収箱を3箱ずつ配置して検証を行った。一方には蓋がなく、もう一方にはゴミ用のフラップ式の蓋、リサイクル品用の6インチの穴の開いた蓋、紙用の細いスリットの入った蓋など、リサイクル専用の蓋を設置した。蓋を使用することで、適切なリサイクルの割合が34%増加し、リサイクルできないものがリサイクル箱に入る割合も95%減少した。

・家庭用リサイクル容器:CMIは、リサイクルする意思があるにもかかわらずリサイクルできない人を観察し、なぜ意思が行動に結びつかないかを探るため、世界的通信会社Hill + Knowlton(H+K)に家庭内でのリサイクル事情に関する調査を依頼した。その結果、家庭の分別箱の重要性が明らかになった。ゴミの収集サービスを利用していても、家庭に分別箱がなかったり、容器が小さくてすぐにいっぱいになってしまったりする場合、リサイクル資源をゴミ箱に捨ててしまう可能性が高いことがわかった。

・便利な回収:H+Kが米国人を対象に行った調査では、54%の人がリサイクルをしない理由として、怠惰であることを挙げている。

■メッセージ

リサイクル行動を促すメッセージは重要だ。研究からは、ポジティブであること、製品をパーソナライズすること、リサイクルの影響をより明確にすること、インセンティブを与えること、素材の変化を強調することなどが、リサイクルの促進につながる可能性があることがわかった。

ポジティブ:マーケティングの専門家、ケネス・ロード教授が執筆した初期(1994年)の研究によると、ポジティブな言葉を含むメッセージ(例えば、リサイクルをすることで得られる利益など)はより積極的なリサイクル行動を促すという。

飲料ボトルの回収などを行う米企業CLYNKは、ポジティブなメッセージを意識的に使用しているという。米国では、カリフォルニアなど一部の州にボトル法案があり、飲料容器の容器代を前払いし、リサイクルすればその金額が返金されるデポジット制を実施する。同社は飲料ボトルを返却・回収する独自のプラットフォームを構築。利用者はCLYNK指定の袋に容器をいれ、指定の場所に持っていくと、デポジットが返金される。同社は、清潔な飲料容器をメーカーに返却するところまでを担う。

CLYNKのデポジットシステム(アプリ)には、アカデミックなファクトや資料の裏付けをもとに、「よくできました」といったユーザーを鼓舞するメッセージを表示する機能がつけられている。同社は、デジタルバッジのようなゲーミフィケーションによって、これらのメッセージをより魅力的なものにし、ユーザーがシステム内の上位10パーセントのリサイクル利用者に入るとより注目されるような設計を行った。

一方でロード教授は、これでは不十分だと言う。教授は、リサイクル行動を最大限増加させるのは、友人や知人から送られてくるネガティブなメッセージだと結論づけている。さらに2021年の中国での調査でも、リサイクルを促す製品(ゴミ箱など)の購入を消費者に納得させるためには、リスクを提示するようなネガティブな言葉がより効果的であると判明している。

パーソナライゼーション:ある研究では、自分の名前がコップに書かれている場合、人々はリサイクルする可能性がより高いことが実証された。また、国旗の絵が描かれたコップもリサイクル促進の効果があった。

時間:カナダのある研究では、「より良いカルガリー市のために今日からリサイクルをしよう」と「より良いカルガリー市のために明日からリサイクルをしよう」というメッセージを表示したときの大学生のリサイクルの動向を調査した。興味深いことに、より近い「今日」という表現は、リサイクルをしないことで失われるものをテーマにしたメッセージと組み合わせた場合に最も効果があり、より遠い「明日」という表現は、リサイクルすることで得られるものをテーマにしたメッセージと組み合わせた場合に最も効果的だった。

インセンティブ/ペナルティ:リサイクルする人とリサイクルしない人を比較したある初期の研究では、リサイクルしない人にとって金銭的なインセンティブが特に重要であることがわかった。別の研究では、現金がリサイクル行動の最も良い動機付けであることが判明し、また固定的なインセンティブよりも変動的なインセンティブの方が効果的であると結論づけている。さらに別の研究では、インセンティブよりも情報提供の方が長期的な効果があることがわかった。インセンティブとは対照的に、罰則も効果的だ。ミネソタ州の郡を対象にした分析では、リサイクルを義務付ける条例を設けると、リサイクル率が4.16%上昇することがわかった。

トランスフォーメーションの可能性:ボストンカレッジ、ペンシルバニア州立大学、ニューヨーク州立大学ニューパルツ校の教授陣による現地調査では、素材の変化を強調することがリサイクル率の向上につながることが明らかになった。その一例が、アメフトの会場にある飲食スペース「テールゲート」で行った調査だ。ボランティアの半数が参加者にどうリサイクルできるかを紹介し、残りの半数は何がリサイクル可能かのみを説明した。リサイクル品が何に変わるかを知った人は、廃棄物の半分以上をリサイクルしたのに対し、リサイクルが可能かどうかだけを知った人は5分の1以下しかリサイクルしなかった。他には、金属缶のパッケージに世界的に使われている「金属は一生リサイクルできる(Metal Recycles Forever™)」というフレーズだ。このメッセージは金属缶のリサイクルの可能性を効果的にアピールするものだ。

■メッセンジャー

リサイクル行動を促すメッセージは、信頼できる人や仲間から発信されたものがより効果的だ。

社会的影響:29の研究のメタ分析によると、社会的影響(他の人々の行動や考え)は、資源の保全を促すのに効果的だ。米NPO団体「キープアメリカビューティフル(Keep America Beautiful)」の、リサイクルをしない人々をリスが観察し、軽いユーモアを交えて公然と批判する様子が描かれている動画は、この社会的影響力の重要性を表している良い事例だ。

家族:ギリシャの小学生を対象にした2021年の調査では、家族のリサイクル行動が自身のリサイクル行動に非常に影響力のある要因であることが明らかになった。

信頼性:ボーイスカウト(今回の検証においてボーイスカウトは親が信頼できる相手であると条件付けを行なっている)から、リサイクルを促す3種類のメッセージを受け取った家庭は、メッセージを受け取らなかった家庭と比較して、いずれも家庭でのリサイクル行動が増加した。

効果的な回収を行い、効果的なメッセージを信頼できる人や組織が発信した場合でも、消費者のリサイクル行動を阻害する要因は多く存在する。外出先や観光客の場合は、メッセージやアプローチ方法を変える必要があるかもしれない。例えば、ある研究では、自宅でリサイクルしている人であっても、旅行中にはリサイクルする可能性が低いことがわかった。

もう一つの問題は、消費後のモノの状態だ。例えば、へこんだ缶は破損していると認識され、ゴミ箱に入れられる可能性が高くなる。

リサイクル行動は、住んでいる地域やその環境にも影響される。調査によると、清潔な環境よりもすでにゴミが散乱している環境では、ゴミをより散乱させる可能性が高く、汚れた環境では最大で2~3倍のゴミが散乱していることが分かっている。また、地域のルールや社会規範文化もリサイクル行動に影響を与える。

消費者のリサイクル行動に影響を与える要因が多く存在し、メッセージング戦術の効果に差があることを考えると、単にメッセージの量を増やすだけではリサイクル量を増やすことはできないことがわかる。TRPのレポート『Start at the Cart』では、リサイクル行動を促すためには、①インフラ(便利で公平なアクセスを実現し、個人のリサイクルが成功する現実的なシナリオをつくる)、②知識(教育や情報によって参加者を継続的にサポートする)、③エンゲージメント(介入やツールによってリサイクル行動やその社会的価値を効果的に広めていく)という3つの段階があると述べている。しかし単に教育やエンゲージメントを行えば良いというわけではない。その難しさについては以下の事例が参考になるだろう。

北米固体廃棄物協会の応用研究財団の報告書によると、オハイオ州中部で、分別箱からカートへの切り替え時に大規模な支援キャンペーンを行ったところ、資源を分別せずに廃棄する「アンダーパフォーマー」(混合率25%以上の世帯)の割合が予想に反して5%増加したという。リサイクルに全く参加しない人だけでなく、リサイクルに消極的な人の習慣を変えることも難しく、そのためには、おそらく先に紹介した好事例を継続的に行う必要がある。しかし、最近の調査によると、リサイクル行動を変えるためにコストをかける価値はあるようだ。

消費財メーカー、地域のリサイクルコーディネーター、リサイクル運搬業者などは、リサイクル行動の変化に関する文献から得られた知見を活用することで、より良い環境づくりに貢献することができる。根拠に基づいた効果的なコミュニケーションを行うことで、誤ったリサイクル行動や社会から監視されるフラストレーションが解消され、より良いリサイクルシステムの実現が可能になるだろう。