8月1日は “アース オーバーシュート デー“ 地球がその年に再生できる生物資源を使い果たしてしまう日
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「史上最も暑い年」とされた2023年を上回り、観測史上最も暑い日が世界で続発している2024年。日本でも全国各地を「危険な暑さ」が襲うなか、7月が終わり、8月を迎えた。そんな今日、8月1日は地球にとって、そして私たち人類にとって、どんな日か知っているだろうか?
答えは、“アース オーバーシュート デー(Earth Overshoot Day)”。人類が、その1年で再生できる生物資源をすべて使い果たしてしまう日のことだ。日付は毎年変動するものの、この10年は計算の結果、8月になってすぐの日になることが多い。つまり人類は毎年、残りの5カ月を、地球の資源を過剰に使用することによって生活し、地球にダメージを与え続けていることになる。酷暑のなか、きょう1日、その意味するところを考えてみてはどうだろうか――。(廣末智子)
人間活動による環境負荷を可視化 国際環境シンクタンクが毎年発表
アース オーバーシュート デーは、人間活動による環境負荷を可視化する目的で、国際環境シンクタンクのグローバル・フットプリント・ネットワーク(Global Footprint Network)が毎年発表している。詳しく言うと、「ある年に人類が必要とする生態系資源やサービスが、その年に地球の生態系が再生できる量を超えた日」を指し、人類が必要とする生態系資源やサービスには、食料や繊維、木材、道路や構造物の建設などが、地球の生態系には、森林や放牧地や漁場などのカテゴリーが含まれる。
毎年の日付は、国連の統計に基づき、カナダ・トロントのヨーク大学と、フットプリントデータ財団が毎年独自に作成する、「国ごとの人間活動による地球環境への負荷とバイオキャパシティ(生物生産力)の比較」の最新版(今回は2023年版)に加え、国際エネルギー機関(IEA)などの追加情報に準拠して算出。地球のバイオキャパシティ(その年に地球が生み出すことのできる生態系資源の量)を、人類のエコロジカル・フットプリント(その年の人類の需要)で割り、1年の日数を掛けることで計算する仕組みで、閏年の2024年は366日を当てはめた。詳しい計算方式は「2024年アース オーバーシュート デーの日付の概算」に記されている。
上述の、2023年版の「国ごとの人間活動による地球環境への負荷とバイオキャパシティの比較」によると、2023年時点で人類が自然に求める財とサービスを賄うには、約208億ヘクタールの面積を必要とする。一方、生物学的に再生可能な面積は約122億ヘクタールにとどまる。つまり、人類は地球の生態系が再生できる速度の 1.7 倍の速さで自然を利用していることを意味し、よく言われる表現では、現在の消費レベルでは“地球1.7個分の資源が必要”ということになる。
1970年代にオーバーシュート この10年は8月第1週が続く
1971年から2024年までのアース オーバーシュート デイの日付の推移(グローバル・フットプリント・ネットワークのサイトより)
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地球は1970年代にオーバーシュートの時代に入ったとされるが、その日付は以下のように移り変わる。
1971年12 月25日…1974年11 月30日…1987年10 月30日…1999年9 月26日…2005年8 月27日…2015年8月7日…2020年8月16日、2021年8月3日、2022年8月1日、2023年8月2日、2024年8月1日(過去の日付も毎年、最新のデータと科学に整合性を持たせるため、計算し直される)
つまり、1986年までは11月のラインをキープしていたのが1987年には10月30日となり、1999年に9月26日に、2005年には8月27日となり、徐々に早くその日を迎えるように。この10年は、コロナ禍の2020年が8月16日だったのを除いて、8月第1週が続いている。
この状況に、グローバル・フットプリント・ネットワークは、「1年のうち7カ月が過ぎた直後であり、残りの期間、人類は資源の過剰使用によって生活し、生物圏をさらに枯渇させている。オーバーシュートによるダメージは時間の経過とともに蓄積されるため、地球への圧力は高まり続けている」と警鐘を鳴らす。
国別ではさらに早まる 日本は5月16日、地球.2.7個分消費
2024年の国別アース オーバーシュート デー(エコロジカル・フットプリント・ジャパンのサイトより)
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エコロジカル・フットプリント・ジャパンのサイトには、2024年の国別のアース オーバーシュート デーについてのデータが掲載されており、ほとんどの国でその日はさらに早まる。日本の2024年のアース オーバーシュート デーは、5月16日で、前年に比べると10日遅くなったが、地球約2.7個分の消費がなされているという。
化石燃料からの排出量を50%削減できれば3カ月遅らせる可能性も
ポール・ポールマン氏「今こそ企業は、再生と修復に力を」
8月1日のアース オーバーシュート デーに向けたリリースの中で、グローバル・フットプリント・ネットワークはその日を少しでも遅らせる可能性について、「例えば、化石燃料からのCO2排出量を50%削減すれば、3カ月ずらすことができる」と強調。それを実現するビジネスこそが、「気候変動と資源の制約の影響を受ける未来において、価値を得るのに最も適したビジネスかもしれない」と、リスクを機会に変えることの重要性を示唆している。
アース オーバーシュート デーについて危惧を深める人の中には、サステナビリティを核とするビジネスの先駆者として有名な、ユニリーバの前CEO、ポール・ポールマン氏が挙げられる(関連記事)。ポールマン氏は、最近、PwC Japanグループが行ったインタビューでも、「その日以降は、未来の世代から資源を奪って生活していると言える。過去50年間で哺乳類や爬虫類、鳥類の約70%が絶滅するなか、私たち人間の番が来るのも時間の問題だ」と危機感を募らせながらも、「今こそ、企業は、自社の存在は世界をより良くしているのか、という観点から、再生と修復に力を入れるべきだ」と語りかけ、その鋭い眼差しが印象的だった。
人類がこれ以上、アース オーバーシュート デーを早めることがあってはならない。