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分断が世界のリスクを高める:世界経済フォーラムが今後10年間のグローバルリスクを掲示

Timon Studler

世界は、将来世代を見据えた持続可能な「より良い再建(Build Back Better)」に向かっているのだろうか。世界経済フォーラムはこのほど、世界の企業や国、教育機関、NGOなどの約1000人の有識者が予測する今後10年間で起こりうる重大なリスクトップ10を発表した。上位には、気候変動対策の失敗、異常気象、生物多様性の損失、社会的結束の低下、生活の危機が並ぶ。報告書は、社会の分断や格差の拡大が気候変動などの地球規模のリスクに対する連携を遅らせる可能性があると指摘。広がる分断・格差を解消し、最も深刻なリスクに団結して取り組むことができるかが人類に迫られている。(小松遥香)

37のリスクから選ばれたグローバルリスクトップ10 (The Global Risks Report 2022) 

報告書によると、世界の有識者の中で、今後の世界の見通しを前向き・楽観的と捉えている割合は約16%、世界的な回復が加速すると回答したのは約11%に留まった。さらに、回答者の約80%は、今後3年間について「変動しやすく、複数の予測不可能なことが起きる(41.8%)」「相対的な勝者と敗者を分ける方向に向かう(37.4%)」、約10%は「ティッピング・ポイント(臨界点)に進み、壊滅的事態が増加する」と予測している。

コロナ禍で深まる分断

同フォーラムによると、執筆時の予測で、世界経済はパンデミックが起きなかった場合に比べて、2024年までに2.3%縮小する見込みだ。パンデミックにより起こっている労働市場の不均衡や保護主義、デジタル・教育・技能の格差の広がりは、世界の分断をさらに進行させる危険性をはらんでいる。

一部の国では、ワクチンの急速な普及やDX(デジタル・トランスフォーメーション)の成功、新たな成長機会が生まれることにより、短期的にはコロナ前の動向に戻り、長期的にはよりレジリエントな展望を抱ける可能性があるという。しかし、その他の多くの国は異なる。ワクチン接種率の低さや医療体制の逼迫、デジタル格差、労働市場の停滞により足踏み状態に陥る。

報告書は、こうした分断が、国際社会が直面する「気候変動」「移民流入の管理」「サイバーリスク」への対応に必要な国際連携を困難にすると指摘。

またコロナ以前の動向と比較して、2030年までに極度の貧困層は5100万人増えると予測している。フランスやドイツ、アルゼンチン、メキシコ、南アフリカなど31カ国でも、「社会的結束の低下」リスクが短期的リスクの上位に入っており、社会・経済の分断やそれに対する市民の憤りは国内でも深刻な課題になるとみられている。

ワクチンの接種人口の割合。高所得国では69.9%だが、低所得国では4.3%

コロナ禍によって深刻化したグローバルリスク

1位 社会的結束の低下
2位 生活の危機
3位 気候変動対策の失敗
4位 精神的健康の悪化
5位 異常気象

秩序なき移行は分断を深める

今後10年間における最大のグローバルリスク「気候変動対策(緩和・適応)の失敗」。回答者の77%は、気候変動の緩和に向けた国際的取り組みについて「始まっていない(9%)」「初期段階(68%)」との認識を示している。

報告書は、気候変動による深刻な異常気象が世界的に起きていることを指摘しながらも、脱炭素社会・経済への移行には社会的な影響を考慮することが必要だと強調する。秩序なき移行は、国内や国家間の分断を深刻化させ、さまざまなリスクを高めることになる。

例えば、炭素集約型産業からの脱却に伴う経済の変動や失業率の増加、早急な環境政策による予期せぬ自然への影響、未検証のバイオテクノロジー・地球工学技術の導入による未知のリスク、規制が不十分なグリーン市場の独占などの社会的影響を考慮しなければ、社会の分断はさらに深まる。

一方で、さまざまな利害から気候変動対策を引き延ばす、取り組みの優先順位を下げる、規模を縮小する、ロビー活動、グリーンウォッシュ、気候変動に関する誤情報の流布といった国や企業の消極的な姿勢が依然として存在し、移行を遅らせる要因になっていることに大きな懸念を示している。

報告書は、グローバルリスクのトップ10には入らなかった「デジタル格差」「サイバーセキュリティ対策の失敗」リスク、各国や民間企業が活発化させる宇宙空間の開発・活動にともなう政治や安全保障、経済、環境面でのリスクも注視すべきだと警鐘を鳴らす。

日本の経営者が考える、今後2年間のグローバルリスク

1位 経済の長期停滞
2位 異常気象
3位 国家間の紛争
4位 サイバーセキュリティ対策の失敗
5位 大都市経済圏でのバブル崩壊 (資産価格と実体経済の乖離)
5位 感染症

※調査は2021年5~9月に行われた

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小松 遥香 (Haruka Komatsu)

Sustainable Brands Japan 編集局デスク。アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。一般企業で働いた後、出版社に入社。2016年から「持続可能性とビジネス」をテーマに取材するなか、自らも実践しようと、2018年7月から1年間、出身地・高知の食材をつかった週末食堂「こうち食堂 日日是好日」を東京・西日暮里で開く。