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映画『グレタ ひとりぼっちの挑戦』 ニュースでは決して知ることのできない素顔のグレタ・トゥーンベリ

© 2020 B-Reel Films AB, All rights reserved.

グレタ・トゥーンベリは2018年8月、スウェーデン政府に気候変動対策を求め、たったひとりで国会議事堂前に座り込み、学校ストライキを始めた。この活動は世界中の若者に広がり、グレタは国連気候行動サミットで演説するまでになる。『グレタ ひとりぼっちの挑戦』は、ほんの数カ月で環境保護活動家として世界的に知られるようになった少女の活動を追ったドキュメンタリー映画だ。彼女はただ「誰も何もしないので、自分でできることをしているだけ」とつぶやき、あるべき世界の未来を見つめている。(松島 香織)

何も進まずもどかしい状態なら、知らないふりをして何もしない方が楽だ。だが15歳のグレタは気候変動対策を取らない政府に抗議し、学校をストライキする「Fridays For Future (未来のための金曜日)」を始めた。集まった人に自分で作った気候変動に関するファクトシートを配って説明し注目を集めるが、人々の視線が注がれるにつれ、誹謗・中傷が絶えなくなる。

2019年9月のニューヨーク国連本部で演説したグレタの姿を見た人は多いだろう。多くのメディアは、国連気候行動サミットで彼女が発した「How dare you (よくもそんなことを)」という強い言葉ばかりをクローズアップしていた。

この演説の約1年前からグレタは、欧州のさまざまな会議で演説し、フランスのマクロン大統領などと会談していた。2018年12月には、ポーランドで開催された国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)にも招かれた。案内役の担当者がグレタに、アントニオ・グテーレス事務総長に会えることは光栄なことであり「気候変動でも起きなければ無理だ」と熱弁をふるう姿は失笑ものだ。

グレタが憤っているのは、気候変動に「対応するふり」をするために「広告塔」として自分を利用する大人たちに対してだ。気候変動に対応しなければならないと理解しつつ経済的価値を優先し、空虚な言葉で具体的に何もしようとしない大人たちに怒り、失望している。だが彼女は諦めない。なぜなら「気づいた人が周りの人に教えるべき」と覚悟を決めているからだ。

どんな場所でもどんな人と会っても落ち着いて話し、自分たちの活動が「このままでは燃え尽きてしまう」と冷静に分析するグレタ。だが、「将来は仕事をし、結婚したい」とはにかんだり、誰もいない場所で風に耳を澄ますように踊る姿は、やはり無垢な十代の少女なのだ。

2015年に開かれたCOP21で約200カ国が合意して採択されたパリ協定は、産業革命前と比較して世界の平均気温上昇を2度より充分低く抑え、1.5度に抑えることを目標とした。だが、その取り組みは各国の自主性に委ねられており、世界各国の温室効果ガス排出量削減目標を合わせても今だに2度未満達成のために必要とされる量には至っていない。

ひとりの少女にこのような重責を負わせたままでいいのか? 将来を若者だけに託したままでいいのか――? グレタの姿を通して、本作品は、むしろ大人が行動しなければならないのだと警鐘を鳴らしている。今年10月31日から開催されるCOP26(英国・グラスゴー)を注視したい。

『グレタ ひとりぼっちの挑戦』(配給アンプラグド)
10月22日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開

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松島 香織 (まつしま・かおり)

企業のCSRや広報・IR部署を経て、SDGs、働き方改革(ダイバーシティ)、地方創生などをテーマに取材中。