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サステナビリティ経営の推進を要請:東証、「コーポレートガバナンス・コード」改定

kazuma seki

東京証券取引所は11日、上場企業の行動規範「コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)」の改定版を公表し、サステナビリティに関する取り組みとその適切な開示を促している。従業員の労働環境への配慮や人権の尊重についてはもとより、人材の多様性の確保に向けて女性や外国人らの管理職への登用の数値目標を設定し、開示することも明記。来年4月の東証の市場区分再編で最上位となる「プライム市場」に属する企業については特に、取締役会の3分の1以上にさまざまな経験を有する社外取締役の専任を求めるほか、気候変動問題に伴うリスクや事業への影響の情報開示を質・量ともに国際的な枠組みに準じたものへと充実させるよう要請する。改定版は全体に、これまで以上に非財務情報の開示を促し、サステナビリティ経営の一層の推進を求める内容となっている。(廣末智子)

「コーポレートガバナンス・コード」は、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会などの立場を踏まえた上で、透明・公正且つ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みである「コーポレートガバナンス」を、実効的に実現するための主要な原則を取りまとめたもの。現在の世界情勢において、企業が持続可能な成長を遂げ、中長期的な企業価値を向上するために不可欠な規範を示している。「株主の権利・平等性の確保」「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」「適切な情報開示と透明性の確保」「取締役会等の責務」「株主との対話」を5つの基本原則として定め、2015年6月から全上場企業への適用が開始された。遵守しない場合には、その理由を説明する手法「コンプライ・オア・エクスプレイン(遵守せよ、さもなければ説明せよ)」が義務付けられている。今回の改定が2度目となる。

SDGsやTCFDの文言追加 気候変動や人権配慮など強く求める

改定の主な内容としては、従来はなかったSDGsやTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)といった文言を配しつつ、気候変動をはじめとする地球環境問題への対応や、従業員はもとよりサプライチェーン上の人権への配慮などを企業に強く求めている点が第一に挙げられる。

例えば原則2の「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」についての考え方の中には、「持続可能な開発目標(SDGs)が国連サミットで採択され、TCFDへの賛同機関数が増加するなど、中長期的な企業価値の向上に向け、サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)が重要な経営課題であるとの意識が高まっている」という一文を追加。またこれを補充する原則の中にも、「取締役会は、気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など、サステナビリティを巡る課題への対応はリスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識し、中長期的な企業価値の向上の観点から、これらの課題に積極的・能動的に取り組むよう検討を深めるべきである」と明記するなど、これまで以上にサステナビリティを踏まえた経営を推進するための一歩踏み込んだ文言が目立つ。

多様な人材確保へ女性や外国人の管理職登用の目標を設定

また女性の活躍促進を含む社内の多要性の確保について記した原則には、「女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況を開示すべきである。また、中長期的な企業価値の向上に向けた人材育成方針と社内環境整備方針をその実施状況と併せて開示すべきである」という項目も加わり、女性の活躍を含めた多様な人材の確保に向けて、現状の開示とともに目標値を示すことも新たに求められた。

さらにサステナビリティに関しては「適切な情報開示と透明性の確保」の原則の中でも、「経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリティについての取り組みを適切に開示すべきである」とする項目も新たに付け加えられた。

取締役の知識や能力を示すスキル・マトリックス開示

「取締役会等の責務」においては、従来の取締役の選任に関する方針・手続きと併せ、「各取締役の知識・経験・能力等を一覧化したいわゆるスキル・マトリックスをはじめ、経営環境や事業特性等に応じた適切な形で取締役の有するスキル等の組み合わせ」が新たな開示項目として付け加えられ、「その際、独立社外取締役には、他社での経営経験を有する者を含めるべきである」とされた。

全体にわたってプライム市場上場会社についてはさらに強い要請が加えられた。「適正な情報開示と透明性の確保」の中では、「気候変動に係るリスクおよび収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである」と、また「取締役会等の責務」においては「独立社外取締役を少なくとも3分の1以上選任すべきである」と規定されている。

一方、金融庁はコーポレート・ガバナンスの改定に併せ、機関投資家と企業の対話において重点的に議論されることが期待される事項についてまとめた「投資家と企業の対話ガイドライン」についても同日付で改定。「経営環境の変化に対応した経営判断」の項目の中に、「ESGやSDGsに対する社会的要請・関心の高まりやデジタルトランスフォーメーションの進展、サイバーセキュリティ対応の必要性、サプライチェーン全体での公正・適正な取引や国際的な経済安全保障を巡る環境変化への対応の必要性等の事業を取り巻く環境の変化が、経営戦略・経営計画等において適切に反映されているか。また、例えば、取締役会の下または経営陣の側に、サステナビリティに関する委員会を設置するなど、サステナビリティに関する取り組みを全社的に検討・推進するための枠組みを整備しているか」などの論点を追加した。このほか、内部通報制度の運用の実効性確保や株主総会の在り方など、多岐にわたって内容が更新された。

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廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。