トヨタ自動車、2035年までに世界の自社工場のCO2排出量ゼロへ 「グリーンファクトリー」目指す
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トヨタ自動車は11日、同社の今後のものづくりに関する方針を発表し、2035年までに世界の自社工場のCO2排出量を実質ゼロにすることを明らかにした。同社は2015年に国内でもいち早く長期目標「トヨタ環境チャレンジ2050」を掲げ、2050年にはグローバル工場のCO2排出量を実質ゼロにすることを発表していたが、今回その目標を引き上げた。新たな自動車の開発による脱炭素化に加え、工場においてまずはCO2排出量の多い塗装と鋳造の工程の脱炭素化に重点的に取り組んでいくという。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局=小松遥香)
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トヨタ自動車執行役員、チーフ・プロダクション・オフィサーの岡田政道氏は会見の冒頭で、「この国のものづくリの存在や強さは決して当たり前のものではない。コツコツと長い年月をかけて築きあげられたものであり、ひとたび失えば、もう元には戻らない」と切り出した。そして、「日本はもうものづくりでやっていける国ではなくなったのではないか」「相次ぐ火災は、ほころびではないのか」といった昨今囁かれる疑問を否定し、震災や新型コロナウイルスなど有事においても、試練を糧として乗り越え、強くなってきた日本のものづくりとそれを通して行われてきた人づくりは世界のどこにも負けることはないと語った。
トヨタが今回、新たな時代に向けた先進的なものづくりの方針の一つとして掲げたのが「グリーンファクトリー」化。2035年までに、全世界の自社工場のCO2排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルを目指す。カーボンニュートラルへの取り組みについては、「ものづくりを根底から革新するチャンス」と位置付ける。
達成に向けては、工場での日常的な「カイゼン」のほか、技術革新によってまず塗装や鋳造工程のCO2排出量削減を実行していく。例えば、最少の塗装で最大の塗布効果を発揮できる飛散しない塗装技術、プレス成形と塗装を金型の中で行い塗装工程をなくす技術、塗装をシールで代替する技術で脱炭素と同時に顧客をワクワクさせる工夫を実行していくなどの技術開発事例を挙げた。
世界的な脱炭素化の流れの中で、自動車産業においても、CO2を排出しない自動車の開発だけでなく、原材料の調達から部品の製造、自動車の生産、使用、廃棄に至るまでライフサイクル全体のCO2排出量を評価するライフ・サイクル・アセスメントに基づいた脱炭素化が進んでいる。日本の自動車産業がこれを実施する際の障壁については、豊田章男社長が3月の日本自動車工業会の定例会見で、国内の再生可能エネルギーの普及拡大が必要と訴えた。
岡田氏もこの日、「ライフ・サイクルで達成していくのは当然」と語り、EUや中国が法制化に向けて動く中で「日本でものづくりができなくなる、欧州に車が出せなくなる、そういうことになってはいけない。部品をつくっていただいているサプライヤー企業の工程に至るまでエビデンス化していく取り組みを進めている。取り組みを加速し、日本としてのものづくりを守り、それが世界に貢献できるようにしていきたい」と語った。今回のトヨタ自動車の目標引き上げによって、取引企業の脱炭素化も加速するとみられる。実際、同社は今月初め、世界の主要部品メーカーに2021年のCO2排出量を前年から3%削減するよう求めたことが分かっている。
最後に、岡田氏は「ものづくりは私の人生そのもの。DXやカーボンニュートラルなど新しいチャレンジの波が押し寄せてきているが、仲間と共にチャレンジできる環境にワクワクしている」とし、資源がなく地震の多い日本の難しい環境から新しい時代のものづくりに挑戦することで、世界各地で事業を通して幸せを量産する「町いちばんの自動車会社になっていきたい」と力を込めた。