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環境経営学会が気候非常事態宣言、「危機的状況」に連携呼びかけ

認定NPO環境経営学会はこのほど、気候変動による甚大な影響への認識を宣言する「気候非常事態宣言」に関する声明を発表した。声明の中で同学会は「地球環境は、もはや持続可能とは言えず、危機的状況にあると認識する」とし、政府、自治体、諸団体に向け広く連携を呼びかける。気候非常事態を宣言する自治体や団体はオーストラリア、欧米、カナダを中心に急速に拡大し、その数は18カ国927自治体にのぼるが、国内では現在、宣言を表明した自治体や団体はない。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局=沖本啓一)

環境経営学会の「気候非常事態宣言」に関する声明全文

「気候非常事態宣言」に関する声明
2019 年 8 月 1 日
認定特定非営利活動法人 環境経営学会
会長 後藤敏彦

〔背景〕世界的に拡がる「気候非常事態宣言」

(1) 近年、世界各地で気候変動による甚大な影響が顕在化する中で、2016 年 12 月に世界で初めて「気候非常事態宣言(Climate Emergency Declaration =CED)を行ったのがオーストラリアのデアビン市である。その後、欧米加を中心に急増し、7 月末現在で、ロンドン、ニューヨーク、パリを含め 18 カ国・901 自治体(主に議会)が宣言した。

(2) これに対し日本では、メディア報道も少ないためか、これまでのところ地方自治体の宣言はない。なお、今年 5 月には京都市と東京都、6 月には横浜市が 1.5℃目標と整合的な「2050 年までに正味ゼロカーボン目標」を公表したが、宣言には至っていない。

(3) 今年になって国家としてのCEDも始まり、これまでスコットランド、イギリス(政府と議会)、アイルランド、マン島(政府、国会)、ポルトガル(国会)、カナダ、フランス、アルゼンチンなどの 10 カ国・地域が宣言している。

(4) 大学でも今年に入って欧米を中心にCEDの公表が増え、既に 13 校となったが、日本では皆無。ダイベストメントについても、ケンブリッジ大学、オックスフォード大学、スタンフォード大学などが行っているが、日本の大学で実施しているところはない。

(5) CEDを宣言する世界の国、自治体、大学、団体が次第に増える中(宗教家も動く)、日本の行政機関や諸団体による「気候非常事態」の宣言はなく、国民的ムーブメントがないままで、気候危機や環境危機を本当に乗り切れるのか強く懸念される。

(6) そこで、環境経営学会は趣旨に賛同する会員有志の名において、「気候非常事態宣言」に関する声明をここに公表する。

〔声明〕
1. 人類の活動を原因とする気候変動によって劣化する地球環境は、もはや持続可能とは言えず、危機的状況にあると認識する。
2. 環境経営学会は、気候変動の「緩和」と「適応」について積極的に研究・実践し、広く社会に向けて啓発を行う。
3. このことは、日本政府の「経済と環境の好循環政策」だけでなく、SDGsの目標達成やESG金融の促進にも資する。
4. 日本政府、地方自治体をはじめ科学者組織、NPO/NGOを含む諸団体に、「気候非常事態宣言」について広く連携を呼びかける。

2
〔署名有志氏名〕
青木修三 荒川昌夫 井上尚之 大河喜彦 大塚生美 岡本享二 越智信仁 片山郁夫 川村雅彦 衣川益弘 木村則昭 木俣信行 黒澤正一 黒田邦夫 後藤敏彦 齊藤好広 坂本大 白鳥和彦 鈴木幸毅 巣山廣美 田代邦幸 田中信康 鶴田佳史 中村晴永 野村佐智代 長谷川浩二 長谷川直哉 花田眞理子 前川統一郎 宮崎智子 宮崎正浩 村井秀樹 村上亘 八木俊輔 山吹善彦 山本勇 山本良一 吉岡康光 吉橋正浩

声明にも記載されているように気候非常事態宣言(以下、CED)は2016年、オーストラリアのデアビン市から始まり、欧米、カナダを中心に波及してきた。特にこの1年間で急速に拡大し、その数は現在、18カ国927自治体にのぼる。さらにNPO/NGOや大学機関などがCEDを宣言するケースも増えている。英国では4月、芸術と文化関連の193団体がCEDを行っている。

ヨーロッパ各国やカナダなど、宣言が拡大する地域では気候変動の危機を目の当たりにしている。例えばカナダのケベック州では、2018年夏の熱波で93人が死亡した。州議会選挙の直前だったこともあり、CEDは大きな運動として発展したという。また米国では6月、サンフランシスコやカリフォルニア、ホーボーケンなどに加え、ニューヨーク市がCEDを発した。

CED拡大の背景には「各国で政策の遅れがありパリ協定の2℃目標の達成もおぼつかないこと」や「極端気象の頻発や生物多様性の急速な減少が起こっていること」のほか、「科学的知見の蓄積による、気候変動の緊急事態性の認識の広まり」「青少年による気候ストライキの爆発的拡大」などがあると、環境経営学会の特別顧問で東京大学名誉教授の山本良一氏は説明する(『急速に拡大する世界の気候非常事態宣言についての考察』2019.8.2)。

一方、これまでの国内のCED関連の動きは鈍い。声明を発表した環境経営学会は「国内では気候変動に対するリスク感覚が弱い。経済成長の足かせになると捉えている節もある」と説明する。しかし、国内でも現状の危機の認識について前向きになりつつある動きがある。

今年5月には京都市と東京都、6月には横浜市が 1.5℃目標と整合的な「2050 年までに正味ゼロカーボン目標」を公表した。この動きについて同学会は「あと一押しがあれば宣言を発するまでにつながる」と話す。また「具体的に宣言の発表を検討している自治体もある」と明らかにした。

学会の声明には「日本政府の『経済と環境の好循環政策』だけでなく、SDGsの目標達成やESG金融の促進にも資する」とも記載されている。課題の存在がもはや無視できない状況になる中、国内の行政や団体の今後の動きに期待が持たれる。

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沖本 啓一(おきもと・けいいち)

Sustainable Brands Japan 編集局。フリーランスで活動後、持続可能性というテーマに出会い地に足を着ける。好きな食べ物は鯖の味噌煮。