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社会課題解決に取り組む企業の法的認定、世界で拡大

世界で、社会課題の解決を実践する企業を認定する「ベネフィット・コーポレーション」制度が拡大中だ。米国ではすでに33州とワシントンDCが認定制度を始めた。さらに2015年イタリアが国として初めて導入し、コロンビアも追随した。国連や各国政府は、民間企業やビジネスの力を借りて社会課題の解決を進める動きが強まっており、アジアや日本にもこの流れは広がりそうだ。(寺町幸枝)

認証の広まりと並行して進む法人形態

世界に先駆けて、利益を追求しながら、より良い社会のために活動する企業「ベネフィット・コーポレーション」を、法的形態として採用したのは米国だ。

この法人形態が認められるきっかけとなったのは、米国ペンシルバニア州で、2006年に非営利団体として設立されたB Lab(Bラボ)によるところが大きい。

独自の指標である「Bインパクトアセスメント」を通じて、各企業が「社会や環境によりよい企業活動を行うことを表明し、行動する会社」であることを証明するための評価「Bコープ認証」を始めたBラボ。

私企業の認定活動を行うと同時に、創設者たちが「法律の保護が必要だ」という考えを持っていたため、積極的なロビー活動を行い、Bコープ認証とは別に「ベネフィット・コーポレーション」(またはPBC)という「法人形態」を自治体へ導入するように働きかけた。

その努力が功を奏し、2010年にメリーランド州で同法案が可決されて以降、ニューヨークやカリフォルニアなどすでに34州で同様の法案が可決されている(6州がペンディング)。株式を販売することで資金調達し、株主への利益配当を目的として存在する企業ではなく、企業の社会責任や、社会貢献を目的として存在する企業としての存在が、現在の社会に受け入れられつつある。

PBCとはPublic Benefit Corporation(パブリック・ベネフィット・コーポレーション)の略で、一般的には「B-Corp」として知られている。各州法に沿ってベネフィット・コーポレーションとして設立した企業のメリットは、Bラボ認証を取得しようとする際に、規定に沿った企業の定款の変更をする必要がない点だ。クラウド・ファンディングの「キックスターター」や、洗剤の「メソッド」、食料品の「キング・アーサー・フラワー」といった企業がPBCの代表的な企業だ。

こうしたBラボを中心とした一連の認証活動と企業のPBC化を「Bコープムーブメント」と呼ぶ。

2015年には、欧州初のベネフィット・コーポレーションがイタリアで導入され、2018年にはコロンビアが南米最初の国として、この法的形態を認めた。

ベネフィット・コーポレーションのメリット

ベネフィット・コーポレーションという法人格や考え方が広まるにつれ、「Bコープ認証企業」と混同されることが増えている。

カリフォルニア州を拠点とする「パタゴニア」は、Bコープ認証企業の例である。一方、先に挙げた「キックスターター」や「メソッド」は、法人格をベネフィット・コーポレーションに変えた企業である。

仏食品大手企業ダノンのダノン・ノース・アメリカとダノン・カナダは、今年4月、B-コープ認証を取得した。

2つの大きな違いについて、Bコープ認証企業はBラボの規定する内容に沿ってレポートが求められる。また費用面でも、Bコープ認証企業は、Bラボに対して500ドルから5万ドルの認証費用が求められるのに対し、ベネフィット・コーポレーションは書類提出費用として、各州に対して70-200ドルの登録料がかかるだけだ。

一方で、企業としての透明性を求められる点や、企業としてステークホルダーへの法的責任を負う点は、他の法人格でも求められることである。

これまで社会に良いことをする活動=非営利団体(NPO)という構図だったが、免税措置という大きなメリットがありつつ、NPOの欠点は活動を行うための資金を集めないことには動けないことにあった。一方ベネフィット・コーポレーションは企業として利益を追求しつつ、その活動の透明性を公示し、必要な経費を調達した売上からきちんと捻出していくことができる。

まだ国単位での導入は少ないものの、一方でBラボが進める「Bコープ認証」は急速に広まりつつある。現在50か国以上で導入され、140以上の業界に渡り、2100社を超えるBコープ認証企業が存在している。(2017年現在)

こうした法に守られた人格を持つ社会課題に取り組んだ企業が増えることで、社会貢献を目的とした企業が、ミッションを持ち続けたまま長期間ビジネス活動を行い続けることができるようになった。アジアは少し遅れをとっているが、台湾を中心に導入が進んでおり、現在16か国、84の企業がBコープ認証を取得している。

日本では現在、下記の5社がBコープ認証を取得している(企業名50音順 2018年9月26日現在)。
・石井造園(石井直樹社長・神奈川県横浜市)
・シルクウェーブ産業(小澤康男会長・群馬県桐生市)
・泪橋ラボ(鶴田浩史社長・東京都台東区)
・日産通信(福田博樹社長・東京都江東区)
・フリージア(五十嵐由佳社長・埼玉県児玉郡)

Bコープ認証企業の業績が好調なことで、さらに多くの人からその存在と考え方が認知されつつある。その認知が国単位での導入を加速させていくだろう。加えて国連が進めるSDGsや、企業価値の指標としてのESGが企業活動の一環として重視されつつある昨今、Bコープ認証だけでなく、ベネフィット・コーポレーションという法人形態を採用する国はますます増えるに違いない。

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寺町 幸枝(てらまち・ゆきえ)

Funtrapの名で、2005年よりロサンゼルスにて取材執筆やコーディネート活動をした後2013年に帰国。現在国内はもとより、米国、台湾についての情報を発信中。昨年より蔦屋書店のT-SITE LIFESTYLE MAGAZINEをはじめ、カルチャー媒体で定期出稿している。またオルタナ本誌では、創刊号以来主に「世界のソーシャルビジネス」の米国編の執筆を担当。得意分野は主にソーシャルビジネス、ファッション、食文化、カルチャー全般。慶應義塾大学卒。Global Press理事。