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米大統領選に向け、従業員の投票促す企業の動き広がる

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米国サステナブル・ブランド編集局

11月の米大統領選に向けて、停滞する投票率を上げようと、米国企業では従業員の投票を促す動きが加速している。2018年夏、パタゴニアが立ち上げた企業連合「タイム・トゥ・ボート(TTV : Time to Vote)」には、ウォルマートやPayPal、JPモルガン・チェース、ラルフローレン、ノースフェイス、リーバイ・ストラウスなど380社以上が参加する。Business for Americaの創設者サラ・ボンク氏は「民主主義が正常に機能し、有権者に解決策を提供できないようでは、ESG目標を達成できないことに一部の企業は気付き始めている」と話す。(翻訳=梅原洋陽)

若く、影響力のある環境活動家グレタ・トゥーンベリ氏が昨年11月、ヨットで欧州へと戻って行った。1ヶ月にわたる米国でのさまざまな活動を締めくくる、私たちへのメッセージを一言でまとめると「投票」だろう。

「例え、求められているような政治が現在行われていなかったとしても、影響力を持つ人たちが正しい行いをするように、私たちの持っている力を行使すべきです。民主主義とはそういうものです。民主主義において、国を動かすのは人々です。そうは見えないかもしれませんが、十分な数の人たちが、すでに私たちは多くのものを手に入れてきたと認識すれば、全てを変えていくことができます。投票はとても大きな力だと言うことを忘れないでください」(グレタ・トゥーンベリ氏)

ここ数十年間、米国の投票率は低い。より多くの人々の関心を高める必要があると明らかになったのは、55%しか投票せず、二極化した2016年の選挙だ。欧州の選挙では、影響力があり、意図的なメディアのメッセージが投票率の増加に大きく貢献した。米国の有権者にはどのような対策が効果的なのだろうか。

米国では、仕事を休みにすることが有効な手段だろう。投票が義務付けられ、選挙が仕事に影響しない日曜日に行われるような他の多くの国とは異なり、米国での投票への不参加の理由としてよく挙げられるのが、仕事や生活で忙しいというものだ。

この問題に対処し投票者を増やすために、2018年夏には、パタゴニア主導のもと多様な企業が無党派の「タイム・トゥ・ボート(TTV : Time to Vote)」連合を結成した。「従業員が1日の稼ぎか投票のどちらをとるかを選ばなければならないのはおかしい」という考えのもと生まれた、投票を促進する企業主導のイニシアティブだ。具体的には、社内で期日前投票やメールでの投票に関する情報を発信し、注意を喚起するほか、投票日を有給休暇としたり、出勤しても会議をしないなどして投票に行きやすくする。今では、ウォルマートやPayPal、JPモルガン・チェース、ラルフローレン、ノースフェイス、リーバイ・ストラウスなど380社以上が参加している。

2018年の中間選挙では、実際に効果があったようで、投票資格を有する半数以上の人たちが投票したようだ。米シンクタンクのピュー研究所によると、ここ40年間で最も高い中間選挙の投票率だったという。TTVは今年、重要な2020年の選挙に向けて、過去の結果を踏まえながら、多くの企業を巻き込んでいく方針だ。より多くの企業の参加が欠かせない。

パタゴニアのローズ・マーカリオCEOはこう言う。

「民主主義は単純に投票によってより良くなります。自分の企業が投票へ積極的に関わる姿勢を見せることで、米国のビジネスは国の民主主義を守るものだということを伝えることができます。あらゆる分野のリーダーが健全な民主主義を重視する姿勢に勇気をもらっています。この流れがより大きくなることを願っています」

現在も増えている380社以上からなる企業連合は、投票する文化を社内につくり出し、投票を呼びかけられるCEOを増やすことで投票者数を増やそうとしている。投票に行けるスケジュールを実現することが重要だ。2020年の目標は、1000以上の企業を巻き込むことだ。

TTVのソーシャル・インパクト部門代表を務め、米配車サービス大手Lyftのマイク・マッサーマン氏は、「投票は健全な民主主義の基盤であり、市民が参加する重要な関わり方です。多くの企業が従業員の投票のために時間をつくることを許可していることは大変素晴らしいことです。Lyftが広がっている取り組みに参画できることはとても光栄です」と話す。

市民の社会参画のサポートも企業の役割

より多くの企業にこの同盟に参加することを呼びかけているBusiness for Americaの創設者サラ・ボンク氏は、サステナブル・ブランドの取材にこう回答した。

「民主主義が正常に機能し、有権者に解決策を提供できないようでは、ESG目標を達成できないということにパーパス・ドリブンの企業は気付き始めています。そのため、企業は右や左ということではなく、健全な民主主義を支えるための無党派の方法を模索しています。従業員やコミュニティにTTVに加入し選挙に関わることを促すことは、企業が国の民主主義を支える一つの方法です」

参加にあまり前向きではない企業がいる理由はなぜだろうか。ボンク氏はこう話す。

「企業によっては、一般の人々や議員たちに特定の党と結びついて見えることを恐れています。TTVはパタゴニアによって創設されました。企業の政治的関与に積極的な企業です。しかし、2018年にはウォルマートも参画しています。これは、投票への呼びかけは超党派の課題だと伝える意味でも重要です。多くの企業がTTVに加わることで、将来的にはTTVへの参画が当然のようになっていくでしょう。参画していないことや、従業員の社会への参画を積極的に支援していないことがリスクとなっていくでしょう」