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SB’19 Detroit 特集

ブロックチェーンで途上国の女性農家の自立を支援

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ブロックチェーンの応用技術を手がける米BanQu(バンキュー)は、1日1.9ドル(約200円)未満で暮らす「極度の貧困」状態にいる人たちを減らす事業を展開している。同技術でサプライチェーン上の取引を可視化し、途上国の女性農家らが取引記録を残すことで社会的信用力を獲得、銀行口座を開設できるようにする活動に乗り出している。同社の創業者アシーシュ・ガドニスCEOがサステナブル・ブランド国際会議 2019 本会議に登壇、事業の根幹を語った。

遡ること5年。2014年のある日、当時アメリカ合衆国国際開発庁(USAID)に所属しコンゴに赴任していたガドニス氏は女性農家が銀行で口座を開設するのに同席した。女性は国連が発行した身分証明書を持ち、コーヒーやカカオ、じゃがいもなどを大手企業や社会的企業、著名な財団に出荷していたが、銀行は「口座は開設できない」の一点張り。理由は、これまで取引を現金で行っていたため、賃金を証明する記録がなかったからだった。

ガドニス氏は「フェアートレードのコーヒーやカカオを誰が生産したものか分からないのはなぜだろうか」と会場に問いかけた。答えは、途上国の女性農家がサプライチェーン上で記録されておらず、存在しないことになっているからだ。銀行口座がつくれない女性農家は、取引記録を残すことさえできない。

そこで、ガドニス氏は「Bank(銀行)」での経験からBanQuを創業することにした。ブロックチェーン・アプリを使ってサプライチェーンの透明性を高めることで、女性農家の取引記録を残せるようにしたのだ。女性農家は社会的信用力を得られるだけでなく、アプリを介して量や値段を自ら決めて公正な取引ができるようになった。

企業と生産者がつながるメリットは他にもある。例えば、BanQuと提携しているビール世界大手アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABI)は、2025年までのサステナビリティ目標に、取引を行う全農家に技術指導をし、財政的支援も行っていくことを掲げている。企業がステークホルダーが直面している「極度の貧困」や「ジェンダー平等」という課題の解決のために動き始めたのだ。

企業にとっても生産者とつながることで収穫量の予測がしやすくなり、さらに自社製品の原料がどこの国の誰がつくった農産物かを答えられるということはブランド価値の向上にもつながる。

ガドニスCEOは「これはテクノロジーの力ではない。テクノロジーが問題を解決するわけではない。問題を生み出すのは人であり、解決するのも人なのだ」と語った。

小松 遥香 (Haruka Komatsu)

アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。一般企業で働いた後、出版社に入社。2016年から「持続可能性とビジネス」をテーマに取材するなか、自らも実践しようと、2018年7月から1年間、出身地・高知の食材をつかった週末食堂「こうち食堂 日日是好日」を東京・西日暮里で開く。前Sustainable Brands Japan 編集局デスク。