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パナソニックグループ、2030年までにCO2排出量実質ゼロへ

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パナソニックは27日、グループとして地球環境問題の解決への貢献を最優先課題と捉え、2030年までに自社での生産や事業活動に伴うCO2(二酸化炭素)の排出量を実質ゼロ化すると発表した。達成に向けては国内外の全拠点でさらなる省エネと、太陽光や水素など再生可能エネルギーの利活用の推進や調達を加速する。これをマイルストーンに2050年には自社だけでなくサプライチェーン全体、さらには製品やサービスが消費者の手元に渡った後、暮らしや社会の中で生み出されるエネルギーをも含め、使用するエネルギーを上回るクリーンなエネルギーを創出、および活用する「カーボンネガティブ」の実現を目指す。 (廣末智子)

6月末に社長に就任予定の楠見雄規CEOがオンライン記者会見で明らかにした。脱炭素社会に向け、多くの企業が2040〜2050年の「カーボンニュートラル」を宣言する中、2030年に照準を合わせたのは、「製造業が今、必達すべき目標と考えた」からであり、「グローバル最大の社会課題である気候変動問題の解決に大きな貢献を果たすリーディングカンパニーとなることを目指す」という。

自社工場の再エネ化についてはすでに積極的に進めている。これまでも使用済み家電製品のリサイクル技術を開発する「パナソニック エコテクノロジーセンター」やグローバル拠点で実現しているが、新たに滋賀県草津市の工場を純水素型燃料電池と太陽電池を組み合わせた自家発電に切り替え、22年4月から本格稼働させるのを機に、国内でも同様の拠点を増やし、「(事業活動で使う電力を100%再エネで賄う)『RE100』のソリューションを事業として磨き上げる」方針だ。

会見で楠見CEOは「戦略とオペレーション力の両輪で競争力を強化していく」と繰り返し強調。具体的には、今年4月に100%子会社化したサプライチェーンソフトウェア大手のBlue Yonder社による、サプライチェーン全体の見える化と最適化を進めることによって、サプライチェーン全体が自律的に改善し続けていくソリューションを構築する。また来年4月に設立予定のパナソニックエナジー社を核に、急激に需要が拡大している車載電池事業や蓄電池システム事業なども拡大。家庭向けの蓄電システムをはじめとする「暮らしのインフラ」領域におけるチャレンジを加速するとともに、次世代電池の性能や信頼性、原価力を高めることで、「環境課題の解決を図るとともに社会インフラの発展についても貢献する」という。

さらに消費者の暮らしの領域においては、コロナ禍において空質や空調への関心が高まる中、ウイルスの抑制に重要な湿度制御技術をはじめ、空気の質を高めつつ環境負荷を最小限にする「空質技術」と「空調技術」を高度に融合した商材の開発などを通じて、「心も物も豊かな社会」の実現に向け、世の中に先んじた新たな価値の創出を図る。

会見を通して楠見CEOは「創業者が大事にしたのは、精神的な安定と物資の無尽蔵な供給が相まって初めて人生の幸福が安定するという『物心一如』の考え方であり、今のパナソニックが果たすべき使命は心も物も豊かな理想の社会の実現に向けて、社会課題に正面から向き合い、現在と未来に対する不安を払拭し、新たな道を切り開くことだと考える。2030年にカーボンゼロを実現することは決して簡単ではないが、挑戦してこそ大きな競争力を生み出すことができる。今後2年間は競争力の強化に集中し、あくなき改善に挑戦する」と話した。

同社は来年4月から持ち株会社制に移行し、事業を8つの会社に分割。新たなホールディングカンパニー体制の下、「専鋭化」をキーワードにグループの成長戦略を図る方針が決まっている。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。