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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

グッド・ライフ実現のためのストーリーテリングとは 横浜でセミナー

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米・デトロイトで今年6月に開催されたサステナブル・ブランド(SB)のフラッグシップイベント「SB国際会議2019デトロイト(以下、本会議)」では、「Delivering the Good Life(グッド・ライフの実現)」をテーマに活発な議論が行われ、ブランドの新たな潮流が発表された。国内では次回のSB国際会議が2020年2月19-20日、SDGs未来都市の横浜市で開催される。それに先駆け同市の「みなとみらいInnovation & Future Center(株式会社 富士通エフサス)」で行われたセミナーでは、グローバルのサステナビリティの最新の潮流と、本会議でブランドの重要課題として取り上げられた「ストーリーテリング」の手法を、サステナブル・ブランド国際会議アカデミックプロデューサーの青木茂樹氏が解説した。

「ブランディングというと単に製品に対するブランディングやマーケティングをイメージしやすいが、サステナブル・ブランディングとは企業のあり方に対するブランディング」と青木茂樹氏はSBを解説する。製品の開発はその中で行い、マーケティングは手段として活用するものだという。

特に、社会的大義に突き動かされるパーパス(存在意義)を企業が示すことで、NPO/NGOをはじめ、ステークホルダーとの広範囲な連携が可能となる。パーパスは地球環境・社会環境に対する企業の姿勢そのものだ。パーパスに加え、最近はエンゲージメントという言葉もよく使われる。「一昔前は従業員ロイヤリティ、消費者ロイヤリティが重要だと言われた。ロイヤリティ(忠誠心)を基準に社会と接点を持つのではなく、現在はエンゲージメント(約束)を交わすことが求められる」と青木氏は分析する。

各国の社会的責任投資(SRI)比率を見ると、米英では全体の5割を超えている。日本はまだこの割合が低いが、投資家の動きが米英に追従することは間違いがないと言われているという。また、ある調査では7割の就活生が就職時に、企業が社会的な課題に積極的かどうかを意識する。国内の中学校、高校ではSDGs教育も浸透し始めている。青木氏は「投資家や雇用、消費者といった外堀は埋まっている。コンプライアンスや、国からの指導を動機としてサステナビリティに取り組むという時代ではない。競争のエンジンとして、社会的責任を果たすことが企業の源泉になっている」と指摘した。実際、バリューチェーンのさまざまな段階で、企業がコミュニケーションにサステナビリティを取り入れている事例には事欠かない。

価値観の変遷とストーリーテリングの重要性

モノに囲まれ、大量消費することが幸福につながるという価値観は、この数年で明確に変わりつつある。コト消費、イミ消費と言われるように、モノより時間の過ごし方や人とのつながりに価値や豊かさを見出す「グッド・ライフ2.0」への志向がグローバルでも大きな潮流となっている。

そのグッド・ライフ2.0をどうデザインし、物語として届け、実現するのか。個々の製品と生活をどう結び付けるのか。そこで重要視されるのが、本会議で取り上げられた、ブランドのストーリーテリングだ。青木氏はP&Gが公開した動画広告を例に挙げた。

「論理的に説明するよりも、いかに感情や共感性を刺激するか。どのように伝えればグッド・ライフ2.0の価値観に訴えかけることができるのか」(青木氏)がポイントだ。

組織を乗り越え新たな価値の創造を――「#BrandsforGood」

デトロイトの本会議で大きく発表されたアライアンスが「#BrandsforGood」だ。業種を横断した企業間の連携で持続可能な暮らしこそがグッド・ライフであるというストーリーを消費者や従業員に伝えようという、企業主導の潮流である。ペプシコ、ナショナルジオグラフィック、ネスレ・ウォーターズ、ターゲットなど、アライアンスには大企業が名を連ねる。

「日本企業はパートナーシップが弱いと言われるが、米国で発生した『#BrandsforGood』の流れを受け、日本にも企業主導で消費者の持続可能性への意識を促す動きが出る」と青木氏は解説した。NPO/NGOとも対峙せずに企業がそれらを受け入れ、NPO/NGOを通して情報を探索し連携することも必要になると話す。

「クロスバリューやコレクティブインパクトという言葉もあるように、まずは自分たちの組織を乗り越えた新しい価値を創造することが必要だ。企業が消費者に対し、どのようにソリューションや体験を積極的につくるかがこれからの課題となる」(青木氏)

SDGs未来都市・横浜市を具現化するワークショップ

セミナー後半にはワークショップが行われた。テーマは「SDGs未来都市として横浜市をどうブランディングするか」。「誇り高い( )を目指す横浜」の空欄を埋めることを目的に、参加者がどのような課題意識をもっているかを踏まえ、どのように「SDGs未来都市・横浜市」をより具体化するのかを参加者たちが議論した。

議論を経て「災害に強い横浜」「多世代共生」「ネイチャーシティ」などの目指す横浜の姿が各グループから発表された。人口が多い大都市圏ならではのごみ問題や治安の問題などが提起され、解決するための資本として本拠地とする企業の多さや、海洋資源などが挙げられた。また教育、子育てにも関心が高かったようだ。「子どもの笑顔を目指す、横浜」や「世代をつなげるSDGs教育の横浜」と発表したグループもあった。

ワークショップでは、SDGs未来都市として持続可能なまちをどうつくるかというテーマに加え、最初にポジティブなイメージを描き、そこに向かう上での課題を抽出し、解決のための資源を考察するという、まさにSB2019デトロイト本会議で語られた「ストーリーテリング」の手法を参加者たちが実践した。