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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

ネスレやP&Gが重視する「パーパスブランディング」とは

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左から、ファシリテーターの森オルタナ編集長、P&Gのクリント執行役員、ネスレ日本の嘉納部長、コーアン氏

サステナビリティと経営の統合を考えるサステナブル・ブランド国際会議2017東京で、8日、「『パーパスブランディング』は日本に上陸するか?」と題してセッションが行われた。パネリストとしてP&Gジャパン広報渉外本部のクリント・ナバレス執行役員、ネスレ日本の嘉納未來エクスターナルリレーションズ部長、SB創始者のコーアン・スカジニア氏が登壇。イベントテーマの「パーパス」について、その定義、機能、役割を掘り下げた。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

「パーパス(存在意義)」には、企業や組織、個人が「何のために存在するのか」を見つめなおし、持続可能な社会を目指して、今後のCSR/CSV活動を強固なものにしていかなければならない、という意味が込められている。

パーパスはビジョンやミッションを形成するための、根幹に位置する概念だ。セッションでは、このパーパスを軸にしたブランディングについて話し合った。

なぜ企業はパーパスを持つべきなのか。コーアン氏は、今後、70%のブランドが社会から必要とされなくなると前置きし、「長期的な事業をつくるにはパーパスを持たないといけない」と強調した。

コーアン氏がパーパスを持たないと生き残れないと言う理由の一つに、ミレニアル世代の存在がある。ミレニアル世代とは1980年代以降に生まれた若者たちのことを指し、コミュニティーへの帰属意識が高く、消費するよりも他人とシェアする傾向が強い。

世界全体で3人に1人がこの世代にあたり、今後さらに割合を占めていく彼らの層から支持されなくなることは、事業リスクが高くなる。

パーパスは社会的課題とも密接な関係を持つ。「パーパスを持つことで、企業は単に収益を上げるためでなく、どうしたら社会の中で役割を果たせるのか考えるようになる」(コーアン氏)。

■多様性がパーパスを推進

P&Gは世界で最も早くパーパスを定めた企業のひとつだ。1987年に、「自社製品に最高のクオリティーと価値を与え、世界中の顧客のニーズを満たすこと」を掲げた。

米国では数年前からパーパスブランディングが注目されてきた。日本で根付かせるために、嘉納部長とクリント執行役員は、高齢化社会や子どもの貧困など日本が抱える社会的課題を解決することによりパーパスを示していくべきと提案した。

重要なことは、「パートナーとの協働」だ。嘉納部長は、「企業やNPO、政府、学校などのさまざまなステークホルダーと組まないとパーパスは実現できない」と言い切る。

この意見に、クリント氏も同意し、グローバル企業が、規模の異なる中小企業と協働する意義について「私たちのアイデアをローカライズしているのが、地域の中小企業。中小企業が存在しないと、われわれは存在できない」という。また、パーパスを推進するためには、「異なる企業やコミュニティーを包摂した」多様性とインクルージョンを文化とし、理解しないといけないと話した。

池田 真隆 (いけだ・まさたか)

株式会社オルタナ オルタナ編集部 オルタナS編集長
1989年東京都生まれ。立教大学文学部文芸思想学科卒業。大学3年から「オルタナS」に特派員・インターンとして参画する。その後、編集長に就任し現在に至る。オルタナSの編集及び執筆、管理全般を担当。企業やNPOなどとの共同企画などを担当している。
「オルタナ」は2007年に創刊したソーシャル・イノベーション・マガジン。主な取材対象は、企業の環境・CSR/CSV活動、第一次産業、自然エネルギー、ESG(環境・社会・ガバナンス)領域、ダイバーシティ、障がい者雇用、LGBTなど。編集長は森 摂(元日本経済新聞ロサンゼルス支局長)。季刊誌を全国の書店で発売するほか、オルタナ・オンライン、オルタナS(若者とソーシャルを結ぶウェブサイト)、CSRtoday(CSR担当者向けCSRサイト)などのウェブサイトを運営。サステナブル・ブランドジャパンのコンテンツ制作を行う。このほかCSR部員塾、CSR検定を運営。