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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)
欧州サステナビリティ最前線

サステナブル・コットン拡大へ 「Cotton2040」イニシアティブとは

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SB-J コラムニスト・下田屋 毅

世界ではコットンのバリューチェーンに関わる環境・社会課題を解決するためのイニシアティブとして、「Cotton2040(コットン2040)」が始動しており、気候変動や人権に関する課題を解決するために「サステナブル・コットン」を推進する動きが始まっている。

コットンに関わる環境・社会課題として「強制労働・児童労働」「農薬と化学肥料の不適切で過剰な使用」「土壌の劣化」「小規模の綿花農家の貧困」「水資源管理」「将来的な土地利用に関する圧力への適応」がある。コットンは、世界の繊維部門で使用される全繊維の約25%を占め、約2億5000万人の生活を支えている。そして、これらの環境・社会課題の解決を行っていくことがコットンに関わる人々の生活を向上させるとともに、われわれの生活にも密接に関わっている課題の解決にもつながるのである。この動きの中心には、「サステナブル・コットン」と呼ばれる持続可能な方針に基づき生産されるコットンを増加させようとする動きがある。そうした流れから、「Cotton2040」というイニシアティブが立ち上げられた。

Cotton2040には、「①気候変動を理解し、適応するためのセクター全体の協働の創出」「②ブランド・小売業者によるサステナブル・コットンの調達量の増加」「③コットン産業を持続可能にするビジネスモデルの拡大」の3つのワークストリームがある。

1. ワークストリーム1では、コットン農家での農薬・化学肥料の使用がどれだけ気候変動に影響を与えているのかが明確でなかったため、その因果関係を確認する研究が進められている。

2. ワークストリーム2では、欧米、インド、日本の3地域でブランド・企業がサステナブル・コットンの使用を増加する活動がはじまっており、日本から現在3社(ミキハウス、アダストリアなど)が参加し、活動を開始している。

3. ワークストリーム3では、サステナブル・コットンの使用に関する企業の模範事例を広く伝え、多くの企業に実施を促す活動を行う。

この「サステナブル・コットン」だが、「環境への影響を最小限に抑えながら、生産レベルを維持できる方法で栽培され、長期的な環境の制約と社会・経済的な問題に対応しながら生産者の生計とコミュニティを支えることができるもの」とCotton2040が推進する情報サイト「Cotton Up Guide」で定義している。サステナブル・コットンの使用を増加することで、農家レベルでの「土壌の健全性の向上」「生物多様性の向上」「水使用量の削減」「化学肥料の使用量の削減」「化学農薬の使用量の削減」を行い、「農家、労働者、コミュニティのディーセントワークを促進」「農家の収益性の向上を支援」、そして「消費者からの信頼と信用を高める」ものとなる。

Cotton2040では、次のスタンダードによって調達されるコットンをサステナブル・コットンと定義し推進している。「ベター・コットン・イニシアチブ (BCI)」「コットン・メイド・イン・アフリカ (CmiA)」「フェアトレード」「myBMP (Best Management Practices)」「オーガニック・コットン(OCS、GOTS)」「リサイクル・コットン:Global Recycled Standard (GRS)、 The Recycled Claim Standard (RCS)」「U.S.コットン・トラスト・プロトコル」。

サステナブル・コットンを推進するとコミットメントしている企業は、欧米ブランドを中心にあるが、日本市場ではまだまだ限定的である。これは企業がコットンの調達を行う上で、サステナブル・コットンを推進することへの理解が不足していることが挙げられる。特にブランド・企業、小売企業がサステナブル・コットンに取り組む意義、なぜ「サステナブル・コットンを推進しなければならないのか」といった重要性を理解しなければ推進することが難しい。最終製品を販売するブランド・企業、小売企業が理解をして行動を起こすことで初めてサステナブル・コットンを推進する土台ができ、その上でコットンに関わる最上流の農家を含むサプライヤーとともに体制構築をしていくことができるのである。

一般社団法人ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン(ASSC)では、日本のブランド・企業、小売企業、コットンに関係する企業・団体に対して「サステナブル・コットン」を推進するための活動をCotton2040とともに開始している。日本のコットン関係者へCotton Up Guide(コットン・アップ・ガイド)和訳版の提供とその活用を促しながら、これから日本におけるコットンのイニシアティブを立ち上げていく。この中では、コットンのバリューチェーンに関わる全ての関係団体・企業が、上述の環境・社会課題を理解し、日本特有の課題を含む課題解決を行うために、グローバルな動きとしてのCotton2040との連携の下、活動を進めていくことを考えている。ぜひ、日本のコットンの関係団体、企業の方々にはサステナブル・コットンを推進するための議論に参加し、行動を起こしていただければと切に願う。

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下田屋 毅
下田屋 毅 (しもたや・たけし)

サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。大手重工メーカー工場管理部にて人事・労務・総務・労働安全衛生などを担当。環境ビジネス新規事業立ち上げ後、渡英。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。

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