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G☆Local Eco!

LifeScapeは生産財メーカーをどう変えるのか

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SB-J コラムニスト・青木 茂樹

外国人観光客が多く訪れる紅葉の新倉浅間神社(2016年11月筆者撮影)

[G☆Local Eco!第5回]LifeScape(ライフスケープ・生活情景)の創造は、B to Bのビジネスにとっても重要だ。素材を生産していれば、最終消費現場を知らなくてよいというものではない。例えば、いまやカーボン(炭素繊維)といえば、軽量・強度の素材として引っ張りだこであるが、20年前の市況は違った。

素材としては良いのだが価格が高く、供給できる市場はF1カーなどニッチ市場だけであり、多くのメーカーが撤退していった。だが、東レは粘り強くその汎用性を研究し、三島の研修センターでは自動車から傘に至るまで、さまざまな生活シーンでの利用を研究・提案していた。当時の赤字部門は、いまや東レの屋台骨の事業の一つとなっている。

高度な経験やサービスを生活者が求める時代には、一社での単品生産はいずれ価格競争となり、レッドオーシャンとなる。そうならないように高付加価値やブランド化が求められるが、機能性だけの差別化には限界があろう。

これからはソーシャルインやソーシャルアウトを絡めた社会的課題を他社とのパートナーシップによって解決していくことこそが市場創造とつながる。そこで提案型営業を展開するためにも、ライフスケープをどのように描き応用可能性を考えておくかが、生産財メーカーにこそ必要なことであろう。

遠隔医療について考えてみよう。今後ICTを使えば、家庭でも職場でも遠隔で医療診断ができたり、世界の名医の医療行為が身近の病院でも受けられるという。だが、ライフスケープの観点ではそれがポイントではない。多くの病気が生活習慣病からもたらされていることは知られている。だが、これまでの医療行為は治すだけのサービスであった。

これからは、個々人の日常生活をケアするという時間軸と空間軸でのサービスをどのように提供できるかという複合型の新規ビジネスとなるはずだ。そこで医療機関のみならず、ICT、農家、食品メーカー、フィットネスジム、健康管理機器メーカーなどの連携が必要となる。生活者の「インプット→オーガニズム(生体)→アウトプット」が『見える化』した時代の新しい健康サービスがICTを使ったヘルス事業となっていくのだ。

ビジネスは過去の延長線ではなく、「高齢化社会における医療費の削減」という大義(Cause)に対して、「健康寿命の延長」という存在意義(Purpose)に向けた差別化(Positioning)と連携(Partnering)によるまったく新しいライフスケープの創造が新たな競争軸となる。

結果としてこの事業は称賛(Praise)を呼び込み、社会的波動(Social Wave)を引き起こす。これが社会と企業の繁栄(Prosperity)を生むこととなり、揺るぎないサステナブル・ブランドへとつながるのである。

サステナブル・ブランドにおける4P

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青木 茂樹
青木 茂樹 (あおき・しげき)

サステナブル・ブランド国際会議 アカデミック・プロデューサー
駒澤大学経営学部 市場戦略学科 教授

1997年 慶應義塾大学大学院博士課程単位取得。山梨学院大学商学部教授、
University of Southern California Marshall School 客員研究員を歴任。
多くの企業の新規事業の立ち上げやブランド構築に携わる。地方創生にも関わり、山梨県産業振興ビジョン策定委員、NPOやまなしサイクルプロジェクト理事長。人財育成として、私立大学情報教育協会FD/ICT活用研究会委員、経産省第1回社会人基礎力大賞を指導。やまなし大使。
2022年4月より、デンマークに渡り現在 Aalborg University Business School 客員研究員を務める。

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